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日本でも人気、皮膚をきれいにするドクターフィッシュ 海外ではアトピー治療の一方、感染症恐れ禁止する国も

   小さな魚が泳ぐ水の中に足を入れる。すると魚たちがどんどん寄ってきて、つま先や足の甲をつつき始める。痛さはなく、少しくすぐったいがリラックスした気分に浸れる。

   日本各地の水族館や温泉施設では、「ドクターフィッシュ」と呼ばれるこのような魚を飼育し、顧客サービスとしているところが少なくない。観光客に人気だが、米国など海外の一部では少々事情が異なるようだ。

  • この感触がくすぐったい、でも気持ちいい
    この感触がくすぐったい、でも気持ちいい
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人間の角質を食べる習性、温泉施設や水族館で飼育

   一般に「ドクターフィッシュ」と呼ばれる魚の正式名称は、「ガラ・ルファ」。コイ科の淡水魚で、トルコなど中東の川に生息している。比較的水温が高くても活動でき、トルコにある温泉でもその姿を見られるそうだ。石に付いた藻やコケ、川に住む小さな虫が主な餌だが、生態の特徴として広く知られているのは、人間の角質を食べるという習性だ。そのため日本国内では、足湯にガラ・ルファを放って客の足を「きれい」にするサービスを提供しているところもある。

   箱根小涌園ユネッサン(神奈川県箱根町)も、そのひとつだ。ウェブサイトにある体験映像を見ると、女性たちの足に小魚が群がり、絶叫する人も。感想は「くすぐったい」「気持ちいい。だんだん快感になってくる」と、それぞれ楽しんでいるようだ。大洗水族館(茨城県大洗町)では期間限定で、ガラ・ルファを泳がせた大きな水槽の中に客が手を入れて、古い角質を食べてもらう感触を体験できる。

   単なる面白アトラクションというわけでもない。「ドイツではアトピーなど皮膚病の医療行為としても認められている」(朝日新聞2007年10月23日)そうだ。

   日本では今でも人気は高く、ツイッターには、ドクターフィッシュの体験談が頻繁に寄せられている。「人の角質を食べるなんて面白い」「キャーキャー言いながら手を入れた」といったツイートとともに、手や足にガラ・ルファが群がる写真が何枚も公開されている。

手足の洗浄やアルコール消毒の徹底重要

   日本やドイツとは逆に、ドクターフィッシュを禁じる地域もある。ロイター通信は2015年4月21日、米アリゾナ州最高裁判所が、ドクターフィッシュを利用したスパ施設でのフットセラピーを禁じる判決を下した、と報じた。州当局は、フットセラピーとしてドクターフィッシュを使用する施設は適切な方法で殺菌消毒しなければならないが、このスパ施設はきちんと消毒できておらず、2009年に安全基準違反を指摘した。その後、施設運営者がこれを不服として提訴したが、今回の判断では主張が認められなかった。

   米国では複数の州で、ドクターフィッシュの利用を禁じているという。

   2011年には英健康保護局(HPA)が、ドクターフィッシュによる感染リスクは非常に低いもののゼロではないとの見解を示した。2011年10月21日付「日経メディカルオンライン」の記事によると、こうだ。水温25~30度が維持される水槽には多種類の微生物がおり、ドクターフィッシュ自体も細菌を持つ。生きた魚を水の中に入れるので、水の滅菌と汚染の除去方法は限られる。魚から人へ、水槽の水から人へ、裸足で踏んだ床などを介して人から人へ、などの経路で感染症が発生する可能性があるという。

   もっとも記事では、事前に利用者の足に傷や感染がないことを確認し、水中で出血した場合はすぐに魚を別の水槽に移すなどすれば、潜在的な感染リスクは最小限に抑えられるとも書かれている。

   箱根小涌園ユネッサンでも、ドクターフィッシュの足湯施設を利用する前に足の洗浄を、また利用が終わったら手足のアルコール消毒を、それぞれ徹底している。また皮膚疾患がある場合は施設の利用を断っている。