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原因不明の突発性難聴を告白する歌手相次ぐ 静かな環境でも発病、完治しないケースも3割

   人気ロックバンド「サカナクション」のボーカル、山口一郎さんがテレビ番組の中で突発性難聴のため右耳が聞こえないと明かした。

   山口さんだけでなく、過去に突発性難聴にかかった芸能人は少なくない。専門医に聞くと、年齢や性別を問わず誰にでもかかる恐れがあるうえ、場合によっては完治しないケースもあり得るという。

  • 「耳が聞こえない」と感じたら早めに診察を(写真はイメージ)
    「耳が聞こえない」と感じたら早めに診察を(写真はイメージ)
  • 「耳が聞こえない」と感じたら早めに診察を(写真はイメージ)

スガシカオさん「ずっとずっと耳鳴りがやまない」

   山口さんは、2015年11月1日放送の「情熱大陸」(TBS系)で、2010年に突発性難聴にかかったと話した。急なめまいと耳鳴りで、医師の診察を受けた際に病名を告げられたという。しかし当時ツアー中だったため入院せず、放置してしまった。現在は右耳が聞こえないそうだ。

   2008年に「左耳が完全に聞こえなくなった」と告白したのは、歌手の浜崎あゆみさん。治療する方法もないと医師に告げられたこともブログで明かしていた。ほかにも、演歌歌手の藤あや子さんが2010年に、またロックバンド「エレファントカシマシ」のボーカル、宮本浩次さんも2012年に、いずれも突発性難聴の疑いがあると診断されて一時活動休止を余儀なくされた。

   ミュージシャンのスガシカオさんは2012年10月29、30日に自身のブログで「告白・突発性難聴との戦い」と題した投稿を4回続けた。その様子を「なんとなく右耳に蓋をされているような、脱脂綿をたくさん詰め込まれているような、ボワワンとしたそんな感じだ」と説明。「とにかくずっとずっと耳鳴りがやまない、頭がおかしくなりそうだった」と、そのつらさを振り返っていた。

   耳鼻咽喉科の開業医に取材した。外来で「突然耳が聞こえなくなった」と訴える患者は、週に1、2人は来ると話す。発症時の状況も人それぞれで、難聴を実感したタイミングは「朝起きてすぐ」だったり「テレビを見ていたら突然」と異なる。患者の年齢や性別もバラバラ。「強いて言えば子どもは少なく、30~50代が比較的多い」という。

   厄介なのは、原因が不明な点だ。歌手のように普段から大きい音に接しているから突発性難聴になりやすいとは言い切れず、逆に静かな環境下で仕事をしている人が無縁な病気というわけでもない。分かっていないことが多い病気なのだ。

「予兆」起きてから2週間以内には診察を

   取材した耳鼻咽喉科医によると、治療方法としてはステロイド薬をメーンに血流を改善する薬やビタミン剤の処方となる。スガシカオさんもブログで、「聴力が落ちた時は、すぐに病院でステロイド治療をして、何とか持ち直し」などと書いていた。

   また「大ざっぱではありますが」と前置きしたうえで、完治するのが3割、逆に治らないケースも3割あると話した。残りは「耳鳴りのような『後遺症』が一定の割合で残る人」だという。手術という選択肢はないため、投薬治療が頼りだ。一方で突発性難聴になるのは1度だけで、完治すれば「再発」はない。完治後にまた耳の具合が悪くなった場合は、別の病気を疑った方がよさそうだ。

   正体がつかみにくい病気だが、ともかくも異変を感じながら放置するのが最悪で、治るものも治らなくなる危険性が高まる。突如聞こえなくなったときはもちろん、「耳に水が入った時のような、ボワーッとした状態を感じたら迷わず医師の診察を受けて欲しい」と訴える。治療開始は早いに越したことはなく、遅くとも「予兆」が起きてから2週間以内には診てもらうのが重要だ。

   残念ながら、現時点で効果的な予防法は見つかっていない。ただし、傾向として、糖尿病などの生活習慣病を抱える人は注意が必要だと耳鼻咽喉科医は話す。また、「疲労やストレスが引き金になるとは言われています」とも指摘する。なるべくストレスをためない生活を送ることは耳のためにもいいようだ。