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WHO、子宮頸がんワクチンで日本を「名指し非難」 接種勧奨中止は「乏しい証拠に基づいた政策決定」

   接種後に原因不明の痛みを訴える人が相次いでいるとして、日本で接種の推奨が中止されている子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)について、世界保健機関(WHO)の諮問委員会が日本側の対応を強く非難する声明を出した。

   WHOの声明は、こういった副反応とHPVワクチン接種の因果関係は確認されていないなどと指摘。日本のみを名指しして「乏しい証拠に基づいた政策決定」と批判する異例の内容だ。

  • 声明では「乏しい証拠に基づく政策決定」だと日本の対応を非難している
    声明では「乏しい証拠に基づく政策決定」だと日本の対応を非難している
  • 声明では「乏しい証拠に基づく政策決定」だと日本の対応を非難している

接種後に「原因不明の痛み」30例以上で中止に

   HPVワクチンは06年に米国で販売が始まり、日本でも09年に販売が始まった。13年4月には予防接種法に基づく定期接種にも組み込まれた。しかし、13年6月の厚労省の専門家会議は、接種後に原因不明の痛みを訴えるケースが30例以上報告されているとして、公費による定期接種は継続するものの、積極的な接種の推奨を中止するように求めた。当時、メディアでは痛みに苦しむ女性の姿が大々的に報じられた。

   今回の声明は、WHOの「ワクチンの安全性に関する専門委員会」(GACVS)が2015年12月17日付で出した。

   「現時点まで、ワクチン接種推奨に変更があるような安全上の問題は確認されていない」 とする内容で、200万人以上を対象にフランスで行った調査の事例などを紹介。接種後に起こる自己免疫疾患について、接種した人としていない人とでは有意な差がなかったとした。

   そのうえで、

「リスクは仮に存在したとしても小さく、長期間続くがん予防の利益との文脈で考慮すべき」

として、「リスクの小ささ」を主張した。ワクチン接種の副反応だとの指摘もある複合性局所疼痛症候群(CRPS)、体位性頻脈症群(POTS)については、

「これらの症状を診断したり完全に特徴づけるのは難しいが、データを検証しても、これらの症候群がHPVワクチン接種と関連しているという証拠は得られなかった」

とした。慢性疲労症候群(CFS)についても、同様に関連を否定した。

「日本は子宮頸がんを予防する機会が奪われている」

   声明はA4用紙で3枚にわたり、その中で国名が2つ登場する。ひとつが前出の調査で登場したフランスで、もう一つが日本だ。「日本の状況については、さらにコメントが必要だ」という形で登場する。接種推奨を中止したことで、子宮頸がんを予防する機会が奪われているとする内容だ。

「専門家の委員会が臨床データを検討した結果、これらの症状はワクチンとは関係ないという結論が出たが、ワクチン接種の再開に向けた合意には至っていない。結果として、若い女性は、予防しうるHPV関連がんにかかりやすい状況に置かれたままだ」

   政策決定のあり方についても「乏しい証拠に基づいている」と言及。接種推奨の中止が合理的な理由ではなく世論や国民感情の影響で決まったことを非難した形で、

「以前にも指摘したように、乏しい証拠に基づいた政策決定で、安全で効果的なワクチンが使用されなくなり、それは実害につながり得る」

と、警告している。