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「アメ車」が日本から消える日 フォード「撤退」でGMとクライスラーはどうする?

   米自動車大手フォード・モーターが2016年に入り、日本市場から撤退すると正式に発表したが、米自動車大手3社「ビッグ3」の残るゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラー(フィアット・クライスラー・オートモービルズ=FCA)の行方が注目されている。

   もともと日本市場は米国車(アメ車)の人気が低く、メルセデス・ベンツやBMWなど欧州車指向が強い。米ビッグ3の中では日本で最も人気があったフォードが撤退することで、GMやFCAも販売戦略の見直しを迫られるのは必至だ。

  • 日本でも人気があったフォードが撤退する衝撃は大きい(画像はフォード・ジャパン公式ホームページのスクリーンショット)
    日本でも人気があったフォードが撤退する衝撃は大きい(画像はフォード・ジャパン公式ホームページのスクリーンショット)
  • 日本でも人気があったフォードが撤退する衝撃は大きい(画像はフォード・ジャパン公式ホームページのスクリーンショット)

輸入車市場を席巻するドイツ車

   日本自動車輸入組合によると、2015年に日本国内で売れた外国車(ブランド別、乗用車)は、(1)メルセデス・ベンツ(ドイツ)6万5159台(2)フォルクスワーゲン(同)5万4765台(3)BMW(同)4万6229台(4)アウディ(同)2万9414台(5)BMWミニ(同)2万1083台(6)ボルボ(スウェーデン)1万3510台(7)ジープ(米国)7129台(8)ポルシェ(ドイツ)6690台(9)フィアット(イタリア)6032台(10)プジョー(フランス)5906台(11)ルノー(フランス)5082台―‐となっており、フォードは12位の4856台にとどまっている。

   この数字を見る限り、日本の輸入車市場はドイツをはじめとする欧州車が席巻しており、アメ車はFCA傘下のジープがトップ10入りしているだけ。フォードの輸入車に占めるシェアは1.5%に過ぎず、「日本事業は収益性確保に向けた合理的な道筋が立たず、投資に対して十分なリターンは見込めないと判断した」という撤退理由は納得がいく。

フォードより深刻なGMとクライスラー

   しかし、それ以上に深刻なのは、GMとクライスラーだ。GMはキャデラックが710台で22位、シボレーが653台で23位、クライスラーは464台で24位と、フォード以上に低迷している。クライスラーはジープと合わせると7500台余になるものの、この程度の台数を輸入・販売するために、国内にディーラー網を維持するのは容易ではないだろう。

   GMは日本国内の正規ディーラーとしてGMジャパンがあり、キャデラックやシボレーを輸入・販売している。このほか輸入車ディーラーのヤナセもキャデラックとシボレーを扱っているが、ヤナセの販売はドイツ車が主流となっている。

   一方、フィアットがクライスラーと経営統合して誕生したFCAは、日本では「FCAジャパン」として、「アルファロメオ、フィアット」「クライスラー、ジープ」「アバルト」の3チャンネルで、クライスラーを含む5ブランドを輸入・販売している。FCAジャパンは「イタリアとアメリカの個性を両輪に、独創的なカーライフをお届けする」としているが、クライスラーの長期低迷が続けば、FCAが正規ディーラー網の見直しに動く可能性は否定できない。

   撤退を決めたフォードは、「リンカーン」「マスタング」のような大型のアメ車だけでなく、「フィエスタ」や「フォーカス」など欧州市場をメインとするコンパクトカーもラインナップに取り揃え、日本でも人気があった。そのフォードでさえ日本から出ていく衝撃は大きく、GMとクライスラーのユーザーには気になるところだ。