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激安そば、実は「茶色いうどん」? 外食店「そば」に明確な定義なかった

   仕事で忙しいときなどに、ワンコインで簡単に食べられる「立ち食いそば」。そんな激安の立ち食いそばチェーン店で提供されているそばが、小麦粉が主の「茶色いうどん」なのではないか、とインターネットで話題になっている。

   じつは、外食店の場合、「そば」には明確な定義がないようで、驚くことに、日本蕎麦協会が「そば粉がきちんと混ざっていて、お店が『そば』というのであれば、割合に関係なくそばになります」と「説明」するのだ。

  • これは「そば」なのか、「そば風のうどん」なのか(画像はイメージ)
    これは「そば」なのか、「そば風のうどん」なのか(画像はイメージ)
  • これは「そば」なのか、「そば風のうどん」なのか(画像はイメージ)

安価な小麦粉の「つなぎ」を多くして原価を抑える

   「激安食品が30年後の日本を滅ぼす!」(辰巳出版)の著者で、食品安全教育研究所の河岸宏和氏は「週刊 プレイボーイ」電子版(2016年2月9日付)で、激安の立ち食いそばチェーン店が「安いのにはワケがある」と、そのカラクリを明かした。

   そのワケというのが――。そばには、そば粉10割の「十割そば」や、小麦粉が2割、そば粉が8割の「二八そば」のように、そば粉の割合を明示して製麺する店が少なくない。しかし、実際には日本蕎麦協会も指摘するように、とくに明示しなくてもそば粉がきちんと混じっていれば、そば屋の看板を掲げ、「そば」として提供できる。「激安そばの正体は、そば風の茶色いうどんです」と、河岸氏は指摘する。

   通常、そばを打つには「つなぎ」を入れる必要がある。そば粉だけではうまくつながりにくいからだが、このつなぎの役割を果たすのが小麦粉。小麦粉はそば粉より安価なので、高いそば粉の割合を減らして、小麦粉の分量を多くすることで、原材料費を抑えることができる、というわけだ。

   河岸氏によると、立ち食いそば店の中には、本来「そば」とはいえないような「まがい物」が少なくなく、そば粉の割合が1~2割で、残りの8~9割は輸入小麦粉でできた「逆二八そば」を提供するチェーン店もめずらしくないらしい。

   そば通がよく、「そばの香りが...」などと語るが、立ち食いそばチェーン店では、そのようなことは少ないと思ったほうがいいのだろうか。

   インターネットでは、

「立ち食いそばに何を求めてるんだろ??」
「いやそんなこと皆知っていて、安くて手軽だから食べてるんじゃないのwww」
「なかにはちゃんとした立ち食いそばだってあるだろ!!! 全部がそうとは限らない」
「そばもうどんも好きだから別にいい」
「立ち食いそばには立ち食いそばのうまさがある!」

といった具合に、そば粉の割合などは気にしないという「容認派」と、

「はっきり『うどん』って書かないのはズルい」
「蕎麦って高いよね。スーパーで売ってる安い茹で蕎麦も小麦の割合が多めだった」
「うどんなの? これって詐欺???」

などと問題視する声とで、二分している。

乾麺なら「そば粉40%以上」、外食も不正表示は法律違反

   農林水産省と消費者庁によると、「そば」については、乾麺(干しそば)の場合は日本農林規格(JAS規格)で、そば粉の割合は上級で50%以上、標準で40%以上と定められている。つまり、スーパーなどで売られている乾麺であれば、「そば粉10%」では「そば」とはいえないことになる。

   ちなみに、JAS規格で「乾麺類」は、そば粉を使っているものを「そば」。また、「うどん」や「きしめん」「ひやむぎ」「そうめん」は麺の太さの違いによって分類されている。

   一方、立ち食いそばチェーン店などの外食業の場合は「そば粉10%」でも、「問題視することはできない」ものの、「メニューに『十割そば』と表示されているのに、実際にはそば粉100%でなかったり、『二八そば』の表示で、そば粉の割合が50%しかなかったり、事実と異なる場合には、景品表示法に抵触する可能性があります」(消費者庁)と話す。

   実際の商品やサービスよりも著しく優良にみせかける不正表示である「優良誤認表示」にあたるというわけだ。

   そば粉はここ数年、中国産などの急激な価格高騰と、国内でも北海道産などが天候不順による大幅な減産のため品薄が発生している。「より価格の高い他の作物への転作が進み、作付面積が減っている」(農林水産省)こともあるという。こうした品薄状態が、そば粉価格の高騰を招き、製粉メーカーの一部も値上げに踏み切っている。

   香りも味わいもある「おいしい」そばは、決して安くないようだ。