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社長射殺「餃子の王将」、取引先に「組員」同姓同名が複数いた それでも第三者委が「関係確認できない」としたワケ

   「餃子(ギョーザ)の王将」を展開する王将フードサービスが2016年3月29日に発表した第三者委員会の報告書は、1990年代半ばから約260億円の不適切な不動産売買があり、そのうち170億円が回収できなかったという衝撃的な内容だった。そして、その多くが、特定のA氏が経営に関与する企業Bグループとの取引だとみられる、としている(編集部注=A氏、Bグループは原文のまま)。

   報告書では「OFS(王将フードサービス) と反社会的勢力との関係の存在は確認されなかった」と結論づけているが、「奥歯に物がはさまったような」表現が目立つ。

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射殺事件に「九州の暴力団関与」の報道

   王将では、13年12月に大東隆行・前社長(当時72)が何者かに射殺されたが、犯行の背景は解明されないままだった。たが、第三者委員会の報告書によると、15年12月に、射殺事件について「九州の暴力団が関与か?」などと報道各社が報じたため、

「事件と暴力団との関連をより疑わせるものとなり、この報道を契機として、OFS が他社と進めていたビジネス案件の進行が一時停止する事態となった」

として、経営実態を解明することになった。

   報告書によると、A氏は創業社長の加藤朝雄氏(1993年死去)と1977年頃知り合い、1985年に開店した阪奈生駒店の出店をめぐり、A氏の口利きで建築関係の許認可が早く下りたとされる。

   A氏とBグループに対する取引をめぐっては、すでに社内調査が行われていた。13年11月には「調査報告書」がまとまっていたが、取締役会と調査委員会メンバー以外には非公開にされた。今回の第三者委員会の報告書で、13年の報告書の内容も明らかにされた。13年の報告書では、少なくとも14件を不適切な取引だと認定した。

   例えば1989年に戎橋店で起きた失火事故をめぐっては、王将側はA氏に店が入居していた土地建物の買い取りをめぐる折衝を依頼。買い取り額は9億円で合意したが、それとは別に「買収工作資金」としてA氏に1億円が支払われた、としている。

特定グループなどとの取引で260億円が流出

   1995年には祇園(京都市東山区)の5階建てビルをBグループから5億3000万円で購入し、06年に第三者に対して8000万円で売却。2000年には福岡市内の9階建てビルをBグループの会社から12億3700万円で購入し、02年にはBグループの別の会社に5億2000万円で売却している。いずれの物件購入についても、報告書では「その経緯や経済合理性は明らかではない」と評価。13年の社内報告書では、

「本件の多額の資金流出等は、取締役会議事録での報告者、経理処理の指示のメモ等により、加藤欣吾代表取締役専務取締役経理部長が主導して行っていることが伺える」

とまとめている。

   ここで出てくる加藤欣吾氏は、創業者の加藤朝雄氏の次男だ。創業者の死去後も、親族の手によって不適切な取引が漫然と続いてきたことになる。

   第三者委員会のメンバーは、記者会見で

「トップダウンで言われた時に、それ以上のことをあまり考えないようなカルチャーがあったのかなと...」

ともらした。第三者委員会の報告書では、殺害された大東前社長がA氏との関わりを絶とう努力したとして、一定の評価をしている。ただ、A氏と反社会的勢力との関係については

「我々のスコープ(調査範囲)の範囲外なので、調査していない」

と繰り返した。

「当社は反社会的勢力との関係がない」

   報告書では、王将の現在の取引先が反社会的勢力との関係があるかどうかについても触れている。具体的には、新聞記事やネット上の風評、リスク管理が社のデータベースなどと使って、取引先に反社会的勢力にあたるものがないかを調査。そのうち、反社会的勢力だという可能性が否定しきれない取引先が48件あった。だが、この48件を個別に検証し、最終的には「反社会的勢力に該当すると認定した対象は0件」だと結論付けている。ただ、この48件の中には、

「(取引会社の調査)対象者が平取締役や監査役である場合において、同姓同名の人物が『暴力団員』『組員』といった肩書付きで逮捕された旨の報道が確認されるものの、対象者の住所・年齢に関する情報が得られないため両者の同一性を確認することができず、対象者の属する法人の所在地・代表者住所地・業種等の情報を総合しても、逮捕者と同一であると認定するに足りないもの(複数)」

といった、「きわどい」ものも散見される。

   しかし、王将は第三者委員会の報告書を受け、

「当社が反社会的勢力との関係がないということは十分ご理解いただけたものと存じます」

などとするコメントを出した。