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「千羽鶴・古着・生鮮食品は要りません」 被災地が困る「ありがた迷惑」な物とは

   被災地に集まった過剰な支援物資が、現場の混乱を招く「第二の災害」になる――。大地震に襲われた熊本県内の被災地へ「救援物資」を送ろうとする動きが盛んになる中、ネット上では「たとえ善意だとしても、『ありがた迷惑』になってしまう可能性がある」との指摘が出ている。

   千羽鶴や応援メッセージ、汚れた古着や使用済みの毛布など、被災地に届いても「処分」するしかない品々もある。95年の阪神淡路大震災の際には、こうした「使用できない救援物資」の処分で、被災した自治体が2800万円の費用を投じたケースもある。

  • 善意の支援物資が被災地の負担になる場合も…(画像は記事とは無関係です)
    善意の支援物資が被災地の負担になる場合も…(画像は記事とは無関係です)
  • 善意の支援物資が被災地の負担になる場合も…(画像は記事とは無関係です)

阪神や東日本大震災でも大問題に

   ピーク時には熊本、大分両県で20万人近い避難者が発生した今回の地震。2016年4月17日から翌18日にかけ、各メディアの報道では、熊本市内にある避難所での「救援物資不足」が伝えられている。こうした状況を受け、救援物資を被災地へ送ろうと呼びかける動きがネット上でも加速している。

   こうした状況の中、ツイッターには「#被災地いらなかった物リスト」とのハッシュタグが登場。東日本大震災を経験したという複数のユーザーが、「千羽鶴・寄せ書き」や「古着」、「生鮮食品」といった品々を挙げ、「送らない方がいい」と呼びかけている。

   実際、今回の地震を受けて福岡市が呼び掛けた支援物資提供の協力依頼でも、受け入れ品をペットボトルの水や未使用のタオル・毛布の6種類に限定。福岡市コミュニティ推進課は16年4月18日のJ-CASTニュースの取材に対し、「指定した以外の物品をお持ちになられる方もいるのですが、お断りしているのが現状です」としている。

   それだけでなく、個人が被災地に救援物資を送ること自体が「被災地にとっては『ありがた迷惑』となる可能性がある」と指摘する声も出ている。ツイッターやネット掲示板などを見ると、

「お願いだから、むやみやたらに救援物資を送らないで...」
「一時的な感情で小口の物資を送っても被災地の負担とゴミを増やすだけ」
「救援物資を個人で送っても現状は届けられない、被災地の負担にしかならない」

との声が複数見られる。こうした意見の背景には、過剰に集まった支援物資が被災地の「負担」になってしまった過去の事例があるようだ。

「個人の救援物資は被災地を襲う第2の災害」

   消防防災科学センターの公式サイトに掲載された「救援物資は被災地を襲う第二の災害である」と題された資料では、「救援物資は被災地にはありがたいもの」としつつも、救援物資が被災地に与える「悪影響」について具体例を用いて紹介している。

   95年の阪神淡路大震災では、約43万個に及ぶ「個別包装」の救援物資が神戸市に届いた。震災に伴う交通網の乱れから、市は24時間体制での対応を余儀なくされたほか、膨大な物資の仕分けや配布に多くの人手を割く必要が出てしまった。また、西宮市では使用できない支援物資の処分に2800万円の費用を投じている。

   04年の新潟県中越地震では、被害の大きかった小千谷の市役所に地震発生の当日夜から物資が届き始めた。余震の可能性が高い状況の中、「市役所周辺の道路は荷降ろしを待つトラックで大渋滞」となったほか、積み重なった荷物が「職員の通行にも支障をきたすまで」溜まった。市役所職員は、その対応で一睡もできなかったという。

   こうした過去の事例を踏まえ、現在では過剰な支援物資による「第二の災害」を防ぐための呼びかけを行う動きも出ている。被災地支援を行うNPO法人「レスキューストックヤード」は、救援物資を送る際のマニュアルをネット上で配布。それによると、

「個人の物資支援は、被災地の自治体職員に一層の負担を強いる」
「報道を通じての支援呼びかけはタイムラグがあるため、時期を逸した救援物資が届くことも多く、不良在庫を生み出してしまう」
「物資よりはお金を送るべき」

などといった情報がまとめられている。同団体の公式サイトでは、どうしても被災地へ支援物資を送りたい場合、個人で被災地へ送ることは避け、ボランティア団体などが呼び掛ける支援物資募集を利用することを薦めている。