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「フリーライター失踪」架空記事だった ゲームサイトが2時間後に「削除」「謝罪」

   「フリーライター内川たまき氏と連絡可能な方を探しています」――。ゲーム情報サイト「インサイド」が深夜に、こんなタイトルのお知らせ文を掲載した。

   1か月半前に届いた原稿送付メールを最後に音信不通になっているといい、「何かご存知の方がいらっしゃいましたら、編集部までご連絡ください」と呼びかけた。しかし実際は、このフリーライターは実在せず、文書は異色の企画記事だった。

  • 6月23日発売予定のプレイステーション Vita用ソフト「Caligula -カリギュラ-」(C)FURYU Corporation.
    6月23日発売予定のプレイステーション Vita用ソフト「Caligula -カリギュラ-」(C)FURYU Corporation.
  • 6月23日発売予定のプレイステーション Vita用ソフト「Caligula -カリギュラ-」(C)FURYU Corporation.

「無事に見つかると良いですね」「知ってる人は連絡してあげて」

「弊誌で記事を寄稿しているフリーライターの内川たまき氏との連絡が取れない状況が続いており、お知らせとして本稿を掲載しています。連絡可能な方がいらっしゃいましたら、担当編集者が探している旨をお伝え頂きますと幸いです」

   こんな説明から始まる文書が掲載されたのは、2016年6月1日0時のこと。

   曰く、内川氏とは4月下旬の原稿送付メールを最後に連絡がつかなくなってしまったという。この原稿は6月にフリュー社から発売される新作ゲーム「Caligula -カリギュラ-」の特典CDを解説した特集記事で、実際に5月25日にはインサイド上で公開されている。

   編集部は、さらに続けて、内田氏の原稿には「意味深な記述」があったと指摘。編集前の原稿には同ゲームの世界観や楽曲に対する「過剰な記述」が散見されたともいい、同作に関連した場所も調査しているとしていた。

   読者からは「なんか妙に説明的」「PRなのか本物なのか分かりづらい」と宣伝の可能性を指摘する声も出ていたが、「無事に見つかると良いですね」「知ってる人は連絡してあげて」「警察に通報した方がいいんじゃね?」などと、純粋に心配する声もあがっていた。

   すると公開から約2時間後、インサイド編集部は突然記事を取り下げ、お詫び文を掲載した。

   記事は「カリギュラの企画記事として、弊誌が独自に作成したものであり、内川たまきというライターは実在しません」と打ち明け、「お客様に誤解を与え、ご不快に思われる表現がありましたことをお詫び申し上げます」と謝罪したのだ。

編集長「ゲームを盛り上げていきたい、という思いから...」

   これを受け、ネット上には批判が殺到することとなった。

「『本当に何かあったとき』に信用されず協力もされなくなるよ」
「何でこんな頭の悪い宣伝の仕方を思いついたんだろう」
「これは悪質すぎる。人の良心を利用して嘘で広告しようとか」

   事態を重くみたのか、インサイド編集部は1日昼すぎ「お詫びとご報告」とする文書を掲載。内田氏失踪のお知らせ文は、ゲームの内容と連動した連載企画の第2弾にあたるものだったと説明した。

   そもそも「内川たまき」はゲームに登場するキャラクターだという。第1弾(5月25日公開)でゲームの解説をしていた内川が、第2弾ではゲームに取り込まれる形で失踪。第3弾以降にゲームプレイをしながら「内川たまき」を探していく――という流れを予定していたそうだ。

   しかし第2弾の記事では、架空の人物であることや、フィクション・企画であることの説明が「抜けて」おり、結果的に誤解を招いてしまったという。

   編集長の土本学氏は1日、J-CASTニュースの取材に対し

「編集部でも注目しているカリギュラというゲームを盛り上げていきたい、という思いから企画しました。ゲームのストーリー展開にかけて『失踪』という設定を考えました」

と話した。編集部としては本物だと誤解されないよう「ゲームを連想させるような言葉をいくつか散りばめる」などの工夫を施したつもりだったが、「配慮が足りなかった」とのこと。編集部あてにも苦情が寄せられたという。

   ネット上では「タイアップ記事なのに『PR』表記がないのは問題では」という指摘も少なくなかったが、土本編集長は「第1弾も含め、今回の記事はタイアップではなく、お金は一切もらっていません」という。サイト上では、フリューに対してもお詫びしている。