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主要3候補 ここがアキレス腱(3)
「推薦政党なし」パフォーマンスで戦う小池百合子氏【都知事選2016】

   東京都知事選(7月31日投票)に向け、主要3候補である鳥越俊太郎(76)、増田寛也(64)、小池百合子(64)の3氏について、それぞれの弱み=アキレス腱は何かを分析する連載の最終回は、小池氏を取り上げる。

   所属していた自民党を含めて政党からの推薦を得られず、組織的な支援のない状況での選挙戦を強いられている小池氏。無党派層の関心を集めるため、パフォーマンス的な要素の強い「空中戦」を展開しているが、そうした「攻めの姿勢」が一部で反発を呼んでいることも確かだ。

  • 「百合子パフォーマンス」はどこまで通用するか
    「百合子パフォーマンス」はどこまで通用するか
  • 「百合子パフォーマンス」はどこまで通用するか

自民党から「どう締め付けられるか分からない」

   自民党の了承を受けずに突然、一方的に立候補を表明し、都知事選としては17年ぶりの「保守分裂選挙」を引き起こした小池氏。自民党都連を「ブラックボックスのようだ」と表現するなど対決姿勢を鮮明にし、どの党の推薦もない状況での選挙戦に突入した。

   自民都連は7月11日、党が推薦する増田氏以外の応援を禁ずる文書を所属議員に配布。議員本人だけでなく、親族にも増田氏応援を強いる「異例」の通達として波紋を呼んだ。こうした強い「締め付け」が同情票を呼ぶという見立てもあるが、小池氏本人が16日の演説で

「今後(自民党に)どう締め付けられるか分からない」

と口にしていたように、組織力に乏しい小池氏陣営にとっては大きな懸念材料であることは確かだ。

   強固な支持基盤を持たないだけに、小池氏は派手なパフォーマンスや踏み込んだ発言など、無党派層の関心を集めるための「空中戦」を展開している。だが、こうした「攻めの姿勢」が各方面からの反発を招くのではないか、と危惧する声も目立つ。

   小池氏が7月6日の出馬会見で公約として打ち出した「都議会の冒頭解散」に対しても、政策としての「実現可能性」を疑問視する声が止まない。仮に小池氏が都知事に当選したとしても、議会による不信任案が可決されるという「非現実的なプロセス」を踏まなくては、議会を解散することができないためだ。

   これには、前大阪市長の橋下徹氏も同日のツイッターで「冒頭解散の実行性・可能性は0ですね。そういう意味ではいきなり公約違反」と指摘している。

「主張が一貫していない」との批判も

   識者からも実現性を疑問視する声が相次いだことを受けてか、その後小池氏の「冒頭解散」方針は明らかにトーンダウンしている。

   出馬会見から2日後に開いた会見では一転、議会の解散について一切言及することはなかった。さらに、告示日14日に公式サイト上で公開した「政策・理念」欄には、「都政の透明化」という一文を掲載しただけで、具体的な説明は全くみられない。

   また、小池氏が17日にツイッターに寄せた「コミケを応援します」という趣旨の投稿も反発を呼んでいる。小池氏が「児童買春・ポルノ禁止法の早期改正を国会に求める請願」の紹介議員になっているため、「漫画などの表現を規制する考えがある」「選挙の時だけのリップサービスでは?」と疑う声が出ているのだ。

   小池氏陣営は18日のJ-CASTニュースの取材に「表現規制推進派というのはデマです」と明言しているが、ネット上では「規制派にしか見えない」「主張が一貫していない」との批判が飛ぶ。

   さらに、小池氏が17日の演説で口にした、鳥越氏に対する「病み上がりの人」発言も物議を醸している。これは主要3候補が出演した19日放送の情報番組「バイキング」(フジテレビ系)内で、鳥越氏が「差別」と強い語調で抗議したことで注目を集めた。

   鳥越氏の追及に対し、小池氏は「もし言っていたならば、失礼なことを申し上げて恐縮です」と番組中に謝罪した。番組の放送後には、「差別というよりは選挙中に行き過ぎた発言になった」と釈明していた。この小池氏の表現を「正論」と受けとる向きもあるが、一方で「許せない発言」と批判する声も根強い。

   反発する動きも目立ち始めた小池氏の「パフォーマンス選挙」。浮動票の獲得に向けては、自らが口にした発言の「責任」をどこまで負えるのか、が重要になってきそうだ。

   また、小池氏は主要3候補の中で唯一の現役議員だった(立候補に伴い衆院議員を自動失職)ため、政治資金をめぐる問題が掘り返される可能性がある。実際、立候補表明後に政治資金収支報告書の記載に関する「公私混同疑惑」が相次いで指摘され、報告書の一部を訂正している。

   小池氏本人は「公私混同は一切ありません」としているが、今後も厳しい「身体検査」が続く可能性は高い。カネの問題で辞職した舛添要一前都知事の後任を決める都知事選だけに、1つの不祥事が大きな命取りになりかねない。