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【男と女の相談室】赤ちゃんの「抗生物質」気をつけて 生後6か月までの投与は肥満児の元

   子どもが風邪の熱や咳で苦しんでいるのに、近所の医者は薬もくれなかった。そこで別のクリニックに行くと、「お薬を出しておきましょう」と親切に抗生物質を出してくれた。やっぱり、お医者さんは選ぶもの......と、喜んだお母さん。すぐに薬をくれる医者にはご用心。

   抗生物質を何度も使用していると、子どもは肥満になると警鐘を鳴らす研究が最近相次いでいる。

  • 我が子のためにご注意を
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抗生物質は子どもの風邪には効かない

   小児科医のウェブサイトをみると、抗生物質とは、たとえばペニシリンのように細菌による感染症を防ぐ薬だ。「抗菌薬」とも呼ばれる。だから、細菌を殺す働きをするが、ウイルスには効かない。このため、ほとんどウイルスが原因で起こる子どもの「風邪」には効果はないが、風邪をこじらせて中耳炎や肺炎などの細菌性の合併症を引き起こすケースがたまにある。

   また、マイコプラズマや溶連菌など風邪とまぎらわしい細菌の感染症もあるため、すぐに抗生物質を処方する医師が少なくない。ウイルスと細菌の違いがあまりわからず、抗生物質を与えると安心する母親が多いこともあるようだ。

   2016年7月、米コロラド大学のチームが、2歳になるまでに抗生物質を3回以上使用した子どもは4歳の時点で肥満になりやすいという研究を消化器系医学誌「Gastroenterology」に発表した。

   研究チームは健康調査の記録が残る2万1714人の子どもを対象に、2歳以前の抗生物質の使用と4歳時点の肥満度の関連を調べた。その結果、1306人が4歳時に肥満だった。抗生物質の処方回数が多いほど肥満になりやすく、3~5回の処方では肥満になるリスクは41%増、6回以上では47%増だった。

   また、2012年に米ニューヨーク大学が1万1532人の子どもを対象に行なった研究では、生後5か月までの間で1回でも抗生物質を処方された子どもは、3歳2か月の時点で肥満になるリスクは22%増という結果が出た。2015年にフィンランドのクオピオ大学が1万2062人の子どもを対象に行なった研究でも、生後6か月以内に1度でも抗生物質を使ったり、それ以降の幼児期に何度か使ったりすると、肥満になるリスクが高まる結果が出ている。いずれにしろ、生後早い時期に抗生物質を1度でも使うのが特によくないようだ。

抗生物質が腸内の善玉菌を殺し、悪玉菌を増やす

   なぜ、赤ちゃんの段階で抗生物質を使用すると肥満になりやすいのか。

   ニューヨーク大学の研究リーダーのレオナルド・トラサンデ教授は「抗生物質の投与が赤ちゃんの腸内細菌に重大な影響を与えているのでしょう。栄養素を体に取り込み、コレステロールを調整する善玉菌を抗生物質が殺してしまい、結果的に肥満の元となる悪玉菌を増やしていると考えられます」と論文の中でコメントしている。

   また、同大学のジャン・ブルーステイン教授も論文の中でこう述べている。

「北米の畜産農家は、何年も前から経験的に、肉牛の体重を増やすには抗生物質を与えることが有効であることを知っており、牛の飼料に混ぜていました。今回の研究は、子どもの肥満にも抗生物質が影響を与えていることを示しています。乳児期からの過剰な抗生物質投与は控えるべきです」

   抗生物質は、感染症の元になる細菌を殺すが、体の役に立つ細菌まで殺す両刃の剣なのである。赤ちゃんの薬をもらう時は、お医者さんとじっくり相談しよう。