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「24時間テレビ」は障害者の「感動ポルノ」 裏番組のNHK生「バリバラ」に大反響

   「Eテレが本気出してる」「バリバラ攻めすぎでしょ」――視聴者からそんなツイートが相次いだのは、日本テレビの「24時間テレビ」の裏番組として、NHK Eテレが2016年8月28日に放送した「バリバラ」(19時00分~30分)だ。

   24時間テレビをパロディー化して笑いのめしながら、障害者を「感動」の具とする「感動ポルノ」に、障害者自身も含む出演者たちが異を唱える。そんな野心的な内容は、ツイッターで番組名が「トレンド」に入るなど、大きな反響を呼んでいる。

  • 番組公式ページより
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「検証!『障害者×感動』の方程式」

   障害や難病を持つ人が、さまざまな難題に挑戦する――そうした「感動的」な企画は、24時間テレビのまさに十八番だ。2016年も、下半身不随の少年の富士登山や、目や耳の不自由な生徒たちのよさこいなど、こうした企画が多数放送された。

   しかし、障害者情報バラエティーをうたう「バリバラ」では、同じ28日のオンエアに、「検証!『障害者×感動』の方程式」と題して、こうしたメディアの障害者像に疑問を唱える内容をぶつける生放送と予告し、以前から注目を集めていた。

   NHK広報局は「他局の放送とは関係ない」と事前のJ-CASTニュースの取材に応えていたものの、番組が始まるや、スタジオで大写しになったのはどこかで見たような「24」マーク。出演者はおそろいの黄色いシャツ姿で、その一人、多発性硬化症などを患う大橋グレース愛喜恵さんにいたっては「本家」の「24時間」のシャツをそのまま着ている。そもそも、キャッチフレーズからして「笑いは地球を救う」だ。

   特に徹底していたのは、世間の「感動的な障害者像」を再現したコーナーである。上記の大橋さんが出演するこのドキュメンタリー風映像では、「それらしい」音楽やキーワードで、いかにも「健気な」障害者として大橋さんが描かれているのだが、それをぶち壊すように「病院の先生がイケメンでテンション上がった」「(立ち直ったきっかけを聞かれて)まあ時間が解決したみたいな」と、「使えない」発言を連発し、そのたびにスタッフが「その話いらないっす」「いやそこ大変な感じで行きましょ」などと軌道修正する。要するに、24時間テレビを完全にパロディー化したコントなのである。

   ちなみにチャンネルを日本テレビに変えると、まさにちょうど、そっくりな「感動的」な映像が流れており、BGMも笑ってしまうほどよく似ている。狙って時間を合わせたのかは不明だが、痛烈な皮肉だ。なお、大橋さんは今年の24時間テレビにも出演している。

障害者の90%が「感動ドキュメンタリー」嫌い

   こうした「笑い」の要素を織り交ぜながらも、番組全体を貫いていたのは「感動ポルノ」というキーワードだ。自身も骨形成不全症を患いながら、オーストラリアでコメディアンとジャーナリストとして活躍したステラ・ヤングさん(1982~2014年)が唱えたもので、障害者を、非障害者などが感動するための「モノ」として扱うような行為を指す言葉だ。

   番組によれば、これら「感動ポルノ」的な障害者の番組について、当の障害者の90%が「嫌い」と答えたという。番組では「24時間テレビ」という単語は避けられていたものの、たびたび言及され、司会の山本シュウさんは最後に、こう注文した。

「現場のスタッフはものすごいがんばってるし、ただもう上の人がね、『(障害者は)こうなんや、感動なんや』って(決めつけて)やるからね。この辺、みんなのがんばりが空回りせんようにしてほしい」

「30分じゃ物足りなかった」「日テレのトップに見せたい」

   単なるパロディーに留まらず、メディア全体に対して「感動ポルノ」を問題提起するという、野心的な内容に、ツイッターなどでは大きな反響が起こった。

「これはすごい番組だった......ただ喧嘩を売ってるだけじゃなくて、こうした真摯な検証番組の存在は、24時間テレビにとってもプラスになるのではないかと思いました」
「30分じゃ物足りなかったー。もっと議論すべき。すごく面白い番組やった」
「たぶんNHKにしかできない番組だし、24時間テレビにぶつけていった勇気を讃えたいし、この番組の考え方が24時間テレビに生かされていくことを願う。もちろん現行の24時間テレビにも放送するメリットはあるだろうから、日テレのトップに是非この番組を観てもらいたい」

   ツイッターで多くつぶやかれた言葉を集計するYahoo!リアルタイム検索では20時台、「バリバラ」が3位、「感動ポルノ」が4位など、24時間テレビを上回る順位をキープしていた。