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「勉強するなら早朝」は正しかった 体内時計の影響で記憶力がアップ

   「早起きして頭が冴えている時に勉強すると、はかどるよ~」とよくいわれるが、その仕組みを東京大学の研究チームがマウスを使った実験で突き止めた。学習する時間帯によって記憶力に差があり、体内時計の影響で人間の場合は朝が一番いいという。

   研究成果は英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」(電子版)の2016年9月30日号に発表された。

  • 早起きして勉強しよう
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夜10時に寝て朝4時に起きると、頭のいい子に

   これまで多くの脳科学の研究で、午前4時から10時の間に勉強すると学習効果があがるといわれてきた。また、睡眠の研究でも、午後10時から午前2時の睡眠時間帯に成長ホルモンが最も多く分泌され、記憶が定着する率が高まるといわれる。いずれにしろ、午後10時までに就寝し、午前4時頃に起きて勉強する「早寝早起き型」が最も理にかなっているわけだ。このように、1日の時間帯によって記憶のしやすさに違いがあり、体内時計が関係しているらしいことはわかっているが、その仕組みは解明できていなかった。

   東京大学が2016年9月30日に発表した資料によると、深田吉孝教授(生物科学)のチームは、マウスに積み木の形を覚えさせる実験を繰り返し、どの時間帯に記憶定着の効果があがるかを調べた。記憶には24時間以上覚えている「長期記憶」と、数分で忘れる「短期記憶」の2種類がある。マウスは、初めて見る形の積み木に興味を示す性質がある。それを利用し、様々な時間帯に新しい形の積み木を見せると、夜行性のマウスの場合、活動を始める夜の時間帯に覚えた積み木は24時間たっても記憶している割合が最も高かった。

体内時計が壊れると「長期記憶」ができなくなる

   ところが、記憶をつかさどる海馬で、体内時計の役割を果たしている遺伝子を壊すと、どの時間帯でも長期記憶ができなくなった。この実験で、長期記憶には体内時計が関係していることが確認できた。また、研究チームは海馬の神経細胞の中で記憶に関わるタンパク質を調べたところ、「SCOP」というタンパク質が夜に増える一方、昼には減り、体内時計のサイクルに応じて増減を繰り返していることを発見した。「SCOP」が多い時に学習すると記憶が定着する率が高まることが判明した。

   マウスは夜行性だが、人間は昼行性だ。研究チームは、発表資料の中で、「人間にもマウスと同じ体内時計があり、同じ仕組みが働いていると考えられます。活動を開始する時間帯(朝)に学習すれば、より効率よく効果をあげることが期待できます」とコメントしている。