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「修羅の国」福岡が住みやすい、だと? 「治安が悪い説」データで検証

   職住接近や物価の安さから福岡市への「移住」志向が高まる中、ネックとして多くあがる声が「治安が悪いイメージがある」といったものだ。

   相次ぐ発砲事件などを受け、福岡県警がウェブサイトで手りゅう弾に注意するように呼びかけている上、県警が2014年から特定危険指定暴力団・工藤会(北九州市)の「壊滅作戦」を展開していることが大々的に報じられ、「福岡(県)=修羅の国」というイメージが定着していることが背景にあり、福岡市への印象へも影響しているようだ。では、実際のところはどうなのだろうか。

  • 福岡市の治安は悪いのか(写真はイメージ)
    福岡市の治安は悪いのか(写真はイメージ)
  • 福岡市の治安は悪いのか(写真はイメージ)

福岡県警がウェブサイトで「手りゅう弾に注意!」

   J-CASTニュースが2016年10月30日に「福岡市、年に1万人の人口増 若者『移住』相次ぐ理由」と題して配信した記事は、フェイスブック上で4000回以上シェアされるなど大きな反響を呼んだ。しかし、コメント欄やツイッターには

「ただし福岡は治安が悪いイメージがある」
    「本拠にしている指定暴力団を5つも抱える修羅の国福岡に好き好んで移住したがるのがわからない」

といった治安面の不安を指摘する声も多い。そもそも「福岡=修羅の国」というイメージが定着したきっかけのひとつだと指摘されているのが、2011年に福岡県警が「手りゅう弾に注意!」と題してウェブサイト内に設けたページだ。このページでは、手りゅう弾の形状を写真で示した上で、不審物を見つけた場合には「『踏まない・触らない・蹴飛ばさない』の原則を守り、直ちに避難し、警察に通報」するように、具体的に呼びかけている。

   このページでは福岡県内の手りゅう弾をめぐる犯罪を取り上げている。では、「福岡市」という単位ではどうか。

20ある政令指定都市で「ワースト4」

   20ある政令指定都市の中で、人口1000人あたりの刑法犯認知件数(2013年)を比較すると、最も多いのが堺市の24.38件。福岡市は、大阪市の23.55件、名古屋市の17.32件に次いで4番目に多い15.50件だ。前出の工藤会が本拠地を置く北九州市は、福岡市よりも少ない12.78件で9番目。最も少ないのが川崎市の7.78件だ。

   地域別にみると、博多駅や中洲がある博多区が1000人あたり21.4件、天神がある中央区が23.4件と高い。この2区の中でも、天神周辺が64.3件、博多駅周辺48.5件と突出している。 福岡市の刑法犯認知件数2万3399件のうち、約8割にあたる1万8206件が窃盗犯。そのうち半分が自転車またはオートバイの窃盗だ。

市民も「犯罪の少なさ」に不満

   こういった状況に、市民も不満を持っている。福岡市が市民を対象に16年6月に行った「市政に関する意識調査」では、市内の都市環境について

「新鮮でおいしい食べ物の豊富さ」
   「買い物の便利さ」

など、18項目にわたって満足か不満かを答えてもらう項目がある。その中で最も満足度が低かったのが「犯罪の少なさ」。「満足している」5.4%、「どちらかといえば満足」31.8%だったのに対して、「どちらかといえば不満」は28.5%、「不満がある」が18.7%にのぼった。

   福岡市の「防犯まちづくり推進プラン」によると、啓発活動を進めるほか、防犯カメラや防犯灯の設置に助成金を出すなど計43項目にわたって対策を進め、19年までに刑法犯認知件数を13年比で23%少ない1万8000件にまで減らしたい考えだ。