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妊娠はうつるってホント?

   妊娠にまつわる多くの都市伝説の中でも、多くの女性を魅了しているのは「妊娠はうつる」というもの。しかも、「妊娠菌」という幸せを運ぶ菌があり、妊婦から子宝を望む女性に次々と感染していくという。

   女性サイトは「私の妊娠菌、受け取って!」「ありがたくいただきます!」というやりとりでにぎわっている。医学的根拠は証明されていないが、本当ならうれしい――。

  • この福々しさ、信じる者は救われる、かも(イラスト・サカタルージ)
    この福々しさ、信じる者は救われる、かも(イラスト・サカタルージ)
  • この福々しさ、信じる者は救われる、かも(イラスト・サカタルージ)

「私の妊娠菌受け取って」「ありがたくいただきます」

   女性の発言サイト「大手小町」では何度も「妊娠菌」を取り上げている。2015年3月18日にはこんな女性の喜びの声が載った(要約抜粋)。

「こちらで何度か妊娠菌いただきました。神社も一体いくつ巡ったのか。結婚17年。初めての妊娠で5月に出産予定です。だから妊娠菌、HAPPY菌たくさん巡っていきますように!」

   これに対して多くの女性が答えた。

「おめでとうございます! 妊娠菌ありがたくいただきます。すごく嬉しいです。結婚が遅かった私はもう40歳。早く赤ちゃんに出会いたいです」

   育児ママの個人ブログ「赤すぐ みんなの体験記」(2015年12月15日)の「妊娠菌って本当にあるかも」には、赤ちゃんを授かった時の不思議体験がつづられている(要約抜粋)。

「結婚して数年、妊娠を希望していた私はある日、旦那と買い物をしていると、駅前に豪華な産婦人科がオープンの見学会を開いているのに出会いました。見学会には大きなお腹の妊婦さんが多く来ていました。旦那と『妊婦さんから妊娠菌をもらえるといいね』と笑いながら話して帰りました」
    「それから1週間たった日。寒気がとまらず寝込んでしまいました。5日間体調が戻りません。旦那は『妊娠じゃないの?』と言い、妊娠検査薬を買ってきました。すると、びっくり、陽性のマークが出たのです。すぐに見学に行った産婦人科に予約を入れました。まさか、本当に妊娠菌をもらったとは!」

ネットの「子宝の神様 木村さん」が超人気

   ネット上ではここ数年「子宝の神様 木村さん」の画像が、妊娠菌とともに拡散している。ウェブサイト「子宝の神様 木村さん」によると、2000年頃、「木村さん」なる人物が中国の民芸店にあった、日本の七福神の1つ「布袋さん」に似た泥人形に一目ぼれし、日本に持ち帰ったのが始まり。友人に泥人形を贈ると、すぐにオメデタ。その友人が不妊症で悩む人に人形を見せると即妊娠。こうして半年以内に8人中7人が妊娠したとか。この泥人形が「子宝の神様 木村さん」で、人形のイラストや写真がネット上でアップされ、その画像をスマートフォンの待ち受けにすると妊娠するという都市伝説が広まっている。

   育児ママのブログ「にぃ嫁さんち 新米ママ奮戦記」の女性もその恩恵にあずかった1人だそうだ。「子宝の神 木村さんの妊娠菌が半端なかった件」(2014年5月29付)の中で、「木村さん」のイラストをアップしながらこう紹介している(要約抜粋)。

「私も御利益があればいいなあ~と、軽い気持ちでスマホのロック画面の守り神として使用したところ、その月に即☆妊娠! 木村さんの妊娠菌、凄まじすぎる! この画像に妊娠菌をたっぷり繁殖させておきましたので、よかったらクリックして落としてくださいネ」

   これに対して、女性たちの反応が相次いだ。

「私も木村さんをいただいてもいいでしょうか。妊娠菌をもらえたらとってもうれしいです。今月無事授かれますように」
    「そんなに効き目あるとは、試してみる価値アリですね。赤ちゃんウェルカーム」

なんと女性の1割が「妊娠菌」を信じている

   ところで、「妊娠菌」を迷信と侮るなかれ。女性の1割以上が妊娠の不思議な連鎖を信じているようだ。働く女性向けサイト「マイナビウーマン」(2015年10月17日付)が「友人が立て続けに妊娠したり、妊娠がうつったりしたと思ったことはないですか? いわゆる『妊娠菌』の存在を感じたことはないですか?」と22~34歳の女性189人にアンケート調査した。すると、11%が「はい」と答え、89%が「いいえ」と答えた。「はい」と答えた人は次のような経験を語った。

「SNSで妊娠出産の報告が連日続く時があるので」(33歳)
    「実際、妊娠報告すると、『実は私も...』と何人も言われた」(32歳)

   一方、「いいえ」と答えた人にもこんな声があった。

「菌があるなら自分もうつりたい」(30歳・販売職)

   そして、同サイトでは「妊娠菌をうつしてもらうジンクス」として広まっている方法を4つ紹介している。

(1)妊婦さんのお腹に触る。
(2)妊婦さんにおにぎりを握ってもらう。
(3)妊婦さんに陣痛中に赤い富士山の絵を描いてもらう。
(4)妊婦さんが育てていた子宝草をわけてもらう。

「科学的な実証はありません」

   それにしても、本当に妊娠菌がいるなら不妊治療は必要がないはずだ。妊娠菌の存在はともかく、「妊娠はうつるみたい」と信じたがる女性は多い。J-CASTヘルスケアが2人目を妊娠中の30代女性に取材すると、こう語った。

「妊娠菌のことは初めて聞きましたが、私の回りでも大学時代の友人が一斉に妊娠し、ママ友だらけになったりします。10年近く妊娠できなかった人が妊娠した友だちに会いに来たら、妊娠できた例もあります。何か女性には『妊娠スイッチ』があって、妊婦さんに近づくとスイッチが入るのでしょうね」

   女性向け占いサイト「2016年を占う~アンジュ~」の「子宝編」では、こんな温かい考え方を提案している(要約抜粋)。

「妊娠した人のそばにいると『妊娠菌』がうつるといいます。妊娠している人のそばにいると妊娠しやすくなるという科学的な実証はありませんが、幸せオーラ全開の妊婦のそばにいると、自分も幸せな気持ちになり、妊娠しやすい気分や環境が伝染するのかもしれません。妊娠菌のジンクスは、妊婦さんから妊娠希望の女性へと受け渡される、いわばバトンタッチ。結婚式のウエディングブーケのようなものと思い、積極的に妊婦さんに近づくようにしてみてはいかがでしょうか」