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首相夫人「付き人」ファクスの破壊力 財務省への「問い合わせ」は「口利き」ではないのか?

   2017年3月23日午後に衆院予算委員会で行われた森友学園の籠池泰典理事長に対する証人喚問で、安倍晋三首相の昭恵夫人付きの官僚から籠池氏宛に送られたファクスの内容が明らかにされた。

   籠池氏は、昭恵氏の携帯電話に借地契約の契約を長くしてもらおうと留守電メッセージを残した後にファクスが送られてきたと主張し、官僚のファクスにも昭恵夫人に報告したことが記されている。籠池氏の説明が正しければ、昭恵氏が「口利き」に関与した可能性が出てくる。ただ、政府は、ファクスは籠池氏側が官僚に送った陳情書に対する返答だと説明しており、大きく食い違っている。

  • 衆院予算委員会でファクスの内容を読み上げる森友学園の籠池泰典理事長(写真は衆院インターネット中継から)
    衆院予算委員会でファクスの内容を読み上げる森友学園の籠池泰典理事長(写真は衆院インターネット中継から)
  • 衆院予算委員会でファクスの内容を読み上げる森友学園の籠池泰典理事長(写真は衆院インターネット中継から)
  • 谷氏が籠池氏に送ったファクス。財務省に問い合わせたことが記されている

「本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」

   午前中に行われた参院予算委員会での証人喚問では、豊中市の国有地の10年間の借地契約の期間を長くしてもらおうと、籠池氏が昭恵夫人の携帯電話の留守番電話のメッセージを残したところ、後日、「内閣総理大臣夫人付き」の谷査恵子氏から「なかなか難しい」との返事があり、同11月17日には、同趣旨のファクスが送られてきたと、籠池氏が説明していた。そして、午後の枝野幸男議員(民進)の質問に対して、そのファクスの内容の詳細を明らかにしたが、枝野氏の質問の1時間半も前に、このファクスの内容はテレビで明らかになっていた。

   情報番組「直撃LIVE グッディ!」(フジテレビ)が14時17分、ファクスを画面に映し出し、

「時間がかかってしまい申し訳ございませんが、財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から回答を得ました。大変恐縮ながら、国側の事情もあり、現状ではご希望に沿うことはできないようでございますが、引き続き、当方としても見守ってまいりたいと思いますので、何かございましたらご教示ください。なお、本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」

と書かれた文面を示した。宛先は籠池理事長で、差出人は「内閣総理大臣夫人付 谷査恵子」となっている。

   谷氏は、衆院予算委員会でのやり取りや、本人が講演を行った際のプロフィールによると、経済産業省の官僚から内閣官房総務官室に出向し、2013年から3年間にわたって昭恵氏の秘書を務めていた。現在は経産省に戻っている。

   ファクスの内容は、昭恵夫人付きの官僚が丁寧に財務省と籠池氏の国有地のやり取りに関与し、今後の対応も約束したこと、また、一連のやり取りを昭恵夫人と連携を取って行っていることをうかがわせる内容だ。

   番組のアナウンサーは、このファクスは「山口さんの方から」のものとして紹介。「山口さん」とは、「総理」(幻冬舎)などの著者があり、安倍政権ときわめて近い関係にあることで知られるジャーナリスト、山口敬之氏のことを指す。

昭恵夫人の証人喚問求める野党

   籠池氏は15時57分、枝野議員の質問に答える形で、「グッディ!」で放送された内容と全く同じ内容を読み上げた。ファクスの続きには(1)10年の定借の是非(2)50年の定借への変更の可能性(3)土壌汚染や埋設物の撤去移管に関する資料の扱い(4)工事費の立て替え払いの予算化について、といったことが書かれていたと説明。

「一般的には、工事終了時に精算払いが基本であるが、学校法人森友学園と国土交通省、航空局との調整にあたり予算措置がつき次第返金する旨の了解であると承知している。平成27年度予算での措置ができなかったため、平成28年度での予算措置を行う方向で調整中」

といった具体的な記述もあったという。ただ、籠池氏はファクスを受け取った日付を衆院では「11月15日」と説明。午前の参院での「11月17日」という説明とはずれている。

   安倍首相は2月17日の衆院予算委員会で、仮に森友学園への国有地売却や小学校の認可に安倍夫妻が関与していたことが明らかになれば、

「総理大臣も国会議員も辞める」

と発言している。

   今回の谷氏のファクスについて、野党などからは、籠池氏の証言が本当なら、こうした安倍首相の答弁に触れるとの見方が出始めている。

   しかし、政府の説明は、籠池氏の説明と真っ向から対立している。菅義偉官房長官は3月23日夕方の会見で、今回のファクスの文面と、籠池氏から谷氏宛に送られてきたという、10月26日付けの消印入りの陳情書の封筒を公開。ファクスは昭恵氏への電話への回答ではなく、谷氏への書面に対する回答だという点を強調した。ファクスの内容についても

「財務省として国有財産に関する問い合わせに対する一般的な内容であり、籠池氏側から直接お問い合わせがあったとしても、添付のとおりお答えする内容であるというふうに報告を受けている」

などとして、あくまで一般論としての回答だったとした。また、谷氏が昭恵夫人に報告したと籠池氏に伝えていることについては、

「『こういう報告を出します』ということで、ある意味では事前に報告するのではないか。しないほうがおかしいのではないか」

などと話し、昭恵夫人に報告するのは当然だとの見方を示した。

   枝野氏は喚問の中で、昭恵氏や谷氏について

「公開の場で、参考人なり証人という形で聞いていただかないとアンフェアだ」

とし、二人から国会で話を聞く必要があると主張した。これには、籠池氏も

「おっしゃるとおり」

と同調し、自らの発言に自信を見せていた。