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シリアはサリンを使ったのか 駐日大使「テロリストに質問すべき」

    シリアのアサド政権がサリンとみられる化学兵器を使用したとされる問題で、シリアのワリフ・ハラビ駐日臨時代理大使が2017年4月11日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見した。「我々は決して誰に対しても化学兵器は使用しない」とアサド政権の関与を否定した。

   化学兵器は「シリア国内のテロリスト」が使用したとも主張。シリア政府が化学兵器禁止条約(CWC)に違反したとして、米国が空軍基地に巡航ミサイルを打ち込んだことを「侵略行為」だとして非難した。化学兵器が使用された場所で具体的に何が起こったかは把握していない様子で、「テロリストに質問すべきだ」と繰り返す一幕もあった。

  • 記者会見するシリアのワリフ・ハラビ駐日臨時代理大使
    記者会見するシリアのワリフ・ハラビ駐日臨時代理大使
  • 記者会見するシリアのワリフ・ハラビ駐日臨時代理大使

「米国は具体的な証拠があるのか」

   シリアでは4月4日(現地時間)、北西部イドリブ県の反政府勢力支配地区に対して行われた空爆で多数の死傷者が出た。米国は、アサド政権がサリンとみられる化学兵器を使用した疑いがあるとみており、化学兵器禁止条約に違反した対抗措置として、4月6日(同)、50発以上の巡航ミサイルをシリア国内の空軍基地に撃ち込んだ。

   ハラビ大使は、米国の軍事行動を「違法な行動で侵略行為」だと非難した上で、

「(軍事行動は、アサド政権による)化学兵器の利用を口実に行われた。だが、もしシリア政府が本当に化学兵器を使用したとすれば、米国には、そういった情報について具体的な証拠があるのだろうか。化学兵器はどこから来たのか、調査は行ったのか」

などとして、確たる根拠がないままに軍事行動に踏み切ったと米国を批判した。

   ハラビ大使の主張によると、シリアは2013年の化学兵器禁止条約(CWC)加盟以降、すべての化学兵器を除去した。2015年には、化学兵器禁止機関(OPCW)と国連が合同で行う査察を受け入れる合意に調印したが、査察の要求など何の音沙汰もないまま、一方的にシリアが化学兵器を使用したと米国が決めつけたとしている。シリア政府は

「テロリストが化学兵器を所持し、数回にわたってシリア国内多くの地域で実際に使用したという情報がある」

といった情報を調査団に伝えたが、調査が行われたどうかも不明なままだと説明している。

「化学兵器はトルコから持ち込まれた」「我々は犠牲者だ」

   ハラビ大使は、化学兵器は隣国のトルコから持ち込まれ、その使用は

「テロリストグループと、欧州にいる支持者による、シリアに対する意図的な行動」

だと主張。「(化学兵器が使われた地域で)何が起こったのか」と詰め寄る記者には

「米国や欧州、テロリストに質問すべき」

と繰り返す一幕もあった。さらに、

「我々は犠牲者だ。我々には、国民を殺害しているシリア国内のテロリストを追放する完全な権利がある。シリア国民を守るためのいかなる軍事行動を起こす権利は、米国にも欧州にもない」
「我々は、決して誰に対しても化学兵器は使用しない。テロリストグループに対しても使わない」

などとして、「犠牲者」だとの立場を強調した。

 

   一方で、米国のミサイル攻撃に理解を示している日本政府については

「日本は国際法を尊重するのであれば、国際法に違反するいかなる国も支持すべきではない。もし他国の主権を尊重するのであれば、日本は他国の主権を侵害するようないかなる行動も理解すべきではない」

などと、米国に同調したことを非難した。