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富士通が「復活ののろし」 好決算で株価急伸

   富士通の株価が堅調だ。連休入り前の2017年4月28日の取引終了後に公表された17年3月期連結決算と、18年3月期の業績予想の内容が株式市場で素直に好感されて急伸。連休の谷間となった5月1日、2日に年初来高値を更新したのに続き、連休明け8日も続伸し、792.4円の高値引けとなった。15年4月に868円をつけて以来、約2年ぶりの水準だ。日本の電機産業は長年苦戦を強いられたが、ここへきてやはり年初来高値を更新しているソニーとともに復活ののろしを上げた格好だ。

   発表された決算内容は、2017年3月期の売上高が前期比4.8%減の4兆5096億円と微減だったが、営業利益は6.8%増の1288億円、純利益は2.0%増の884億円と好調。減収の主因は、外国為替市場が年間を通してみると円高傾向にあったことによるもので、為替の影響を除くとほぼ前期並みの水準だった。円高は利益にもマイナス効果を与えたが、パソコンなどを対象に国内外で進めた生産拠点の再編などコスト削減で吸収したうえ、増益に持ち込んだ。

  • (画像はイメージ)
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2018年3月期の業績見通しも注目集める

   決算発表を受けて野村証券は、「ビジネスモデル変革の進展を評価する」として投資判断を「中立」から「買い」に引き上げた。目標株価についても、680円から880円に一気に上げた。野村はその理由として、2017年3月期にビジネスモデル変革費用447億円を計上したことなどで経営効率化が進み、5%の営業利益率達成が視野に入ったことや、課題だった海外の収益性改善にメドがついたことを挙げた。また、富士通が主力としつつある自治体や大手企業などのIT投資について、堅調な推移が見込まれることも追い風とみている。

   株式市場では、2018年3月期の業績見通しも注目された。売上高は前期比0.2%減の4兆1000億円にとどまる一方で、営業利益は57.5%増の1850億円、純利益は63.9%増の1450億円を見込む。わずかに減収となるのは、ニフティの個人向け事業売却などの影響だ。ただ、スマートフォン(スマホ)向けの大規模集積回路(LSI)や電子部品が伸びる半面、欧州の人員削減などの効果も表れ、利益は大幅に増える見通しで、実現すれば純利益は3年ぶりに過去最高を更新する。不採算事業の売却や人員削減といったリストラを経て再成長軌道に乗るシナリオを株式市場は歓迎。5月8日の終値は4月28日比で14%も上昇した。

事業再構築の手綱緩めず

   富士通は事業再構築の手綱を緩めていない。現在の出資比率が51%のカーナビゲーション大手「富士通テン」について、2017年10月に保有株41%分をトヨタ自動車グループの自動車部品大手デンソーに168億円で売却すると4月28日に発表した。スマホの普及によってカーナビ専用機市場は成長を見込みにくい。一方、「ネットにつながる車」や「自動運転」などクルマまわりの将来有望な技術の開発にあたり、富士通テンを取り込むことは有効とのトヨタ側の判断があった。

   通信機器が主力で「電電公社の次男坊(長男はNEC)」と揶揄された時代は遠い過去で、政府・自治体や企業向けのITインフラサービスを軸に再成長を目指す体制が整いつつある。復活によって頼りにされる面も出ている。最近では、東芝の半導体事業の買い手に日本企業が手を挙げない中、産業革新機構と米ファンドのグループの一員として参加を求められている。

   ただ、ITインフラは文字通り関連技術が日進月歩の世界。有望ベンチャーの買収を含め、常に進化していないと取り残されるリスクがあり、その辺りへの対応にも市場は注目している。