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甲子園最速の男・由規、2083日ぶり巨人撃破 野村克也も絶賛

   「気持ちを全面に出していきました」。ヤクルト・由規投手(27)は7回無失点で勝ち星をあげた巨人戦翌日、自身の投球を振り返った。

   ただの1勝ではない。巨人戦勝利は2083日ぶり。けがに苦しみ、1軍登板のない期間が4年もあった。復帰後も長いイニングを投げる試合はほとんどなかった。それだけに今回の登板は、野村克也氏(81)ら評論家にも「完全復活」を印象付けた。

  • 2017年5月18日のスポーツ紙各紙は由規の勝利を大きく報じた
    2017年5月18日のスポーツ紙各紙は由規の勝利を大きく報じた
  • 2017年5月18日のスポーツ紙各紙は由規の勝利を大きく報じた

7回2安打無失点、3塁踏ませず

   由規は2017年5月17日の巨人戦に先発。150キロ台のストレートを連発し、ピンチを迎えても冷静に球を低めに集めた。剛速球だけに頼らず、随所でスライダーやフォークを織り交ぜ、巨人打線を翻弄した。終わってみれば7回108球、3塁すら踏ませず2安打無失点。申し分のない投球内容だった。

   今なお破られていない甲子園最速の155キロをマークし、07年にドラフト1位を受けて鳴り物入りでプロ入りしたが、苦難の時期が長かった。10年には当時の日本人投手最速161キロを計測し、12勝(9敗)をあげたものの、翌11年からは右肩のけがに悩まされた。

   12~15年の4年間は1軍登板ゼロ。手術を経て16年に1軍復帰したが、2勝3敗、防御率4.56でシーズンを終えた。登板間隔はけがも考慮して中10日以上空けられていた。「復活前夜」の1年だったのかもしれない。

   そして17年シーズンの初戦、5月5日のDeNA戦は6安打3失点、4回途中でマウンドを退き敗れたが、本人は冷静だった。「スライダーに頼りがちだった」と分析し、持ち味であるストレートを軸にした17日の圧巻のピッチングにつなげた。巨人戦の勝利は11年9月3日以来、実に2083日ぶりだった。

   由規自身、試合翌日のツイッターで「今季初勝利を挙げることができました!前回の登板で本当に悔いの残る投球をしてしまったので、気持ちを全面に出していきました!そして野手の方に助けてもらい、自分優位にピッチングすることができました!感謝です。またひとつ、ひとつ勝利を積みかさねていきたいと思います!」と大きな手応えを感じたようだ。

石井一久「絶対にあの回は投げきってほしいと思っていた」

   快投に球界関係者も目を丸くした。野村克也氏(81)は18日付のサンケイスポーツで「明らかに巨人打線を圧倒していた」と評価。150キロ台の速球はスピード以上に「腕の振りのよさ」を見た。「故障した右肩をカバーするそぶりはまるでなく、全力で投げ込んでいた」と回復ぶりを感じ、「速い球を投げる能力は天賦の才」と評した。さらに「『打てるものなら、打ってみやがれ』という気持ちを前面に出していた」と精神面でも相手を上回ったとみている。

   由規がプロ入りした07年、野村氏は楽天の監督としてドラフト1位指名したが、くじ引きの結果ヤクルトに譲ることになった。「10年後の今、改めて、その資質の高さを再認識させられた」と諸手をあげて「復活」を喜んだ。

   元チームメートの宮本慎也氏(46)は18日付の日刊スポーツで「現役時代からケガで苦しむ姿を見ていただけに、素直に祝福したい」と称えた。

   ただ、まだ復活の判断はしかねると見る向きもある。元ヤクルトの投手・石井一久氏(43)は18日付スポニチアネックスで、2塁打を許した7回に注目。「ベンチがブルペンと連絡を取るシーンがあったが、絶対にあの回は投げきってほしいと思っていた。技術論ではない。先発投手としての日常を取り戻すためにも、苦しい場面を乗り越えるのは自分でしかない」と見ていた。由規はこの回を投げ切った。投球内容について石井氏は「球威とキレは十分にある。今後は試合の中で、その日のいい球種を自分で探せるようになること」と展望を示した上で、「中6日で投げる状態に戻ってこそ、由規の完全復活だと考えたい」としている。