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岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
疑惑噴出を報じるメディアへの視線

   先週、ニューヨークに住むアメリカ人の友人から、ちょっとおどけた3行メールが届いた。

My mantra these days:
I want a new election
I want a new election

最近の私のマントラ(呪文)。
「新たな選挙をしてほしい」
「新たな選挙をしてほしい」
  • ホワイトハウスが「ロシアンゲート」に揺れている
    ホワイトハウスが「ロシアンゲート」に揺れている
  • ホワイトハウスが「ロシアンゲート」に揺れている

FOXニュースが呼びかけた「戦い」

   次々、浮上する疑惑の渦中にあるトランプ大統領の支持率は今、38%。就任以来、最低だ(ギャロップ世論調査、2017年5月18日現在)。共和党員の支持離れも目立つ。

   FBI(連邦捜査局)の長官だったジェイムズ・コーミー氏の解任。解任前に同氏に対してトランプ氏が、ロシアとの癒着疑惑に絡みフリン前大統領補佐官への操作を打ち切るよう圧力をかけたとされる疑惑。ロシアのラブロフ外相に機密情報を漏らした疑い――。

   米国の主要メディアは、その9割がリベラルともいわれるなか、数少ない保守派のFoxニュースは、ケーブルニュースで視聴率第1位を誇っている。しかし、トランプ氏の一連の疑惑で、プライムタイムの視聴率をMSNBCとCNNに奪われる異例の結果となった。

   Foxニュースは、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストの疑惑報道を否定するトーンが強い。コメンテイターのショーン・ハニティ氏は、「もはや、何もしないという選択肢はない。あなたの1票が攻撃されている。今こそ立ち上がり、トランプ氏を破滅させようとする米政府内部者やメディアと戦う時だ」とトランプ支持者に呼び掛けた。

「リベラル・メディアの陰謀」

   民主党だけでなく共和党内部からも激しい批判を受け、危機的状況を迎えつつあるかに見えるトランプ政権。これまで彼を支持してきた人たちは今、何を考えているのだろうか。

   アイオワ州アイオワシティに住むキャシー(59)は、メディアの報道に憤慨する。

「リベラルなメディアの陰謀にすぎないわ。ロシア疑惑にしても何の根拠も証拠もなく、騒ぎ立てているだけ。トランプが当選した瞬間から、彼を引きずり下ろすことしか頭にないのよ。税制改革、ヘルスケア、経済の立て直しと課題は山積なのに、リベラルが邪魔ばかりするから何も進まない。反トランプ派がいつまでも批判し続けるのは変わらないのだから、トランプはメディアの取材は拒否し、やるべき仕事に専念すべきよ」

   サウスカロライナ州グリーンビル在住のマイケル(28)は、

「トランプが叩かれれば叩かれるほど、ますます彼を応援したくなるよ。日本での報道だって、アメリカのリベラルなメディアと同じだろ。信頼できないのは、トランプかメディアか。よく考えたほうがいい」

とメディアに対する不信感をあらわにする。

   ニューヨーク市ブルックリン区に住むイスラム教徒の女性(40)は、トランプ氏がロシア外相に機密情報を開示したとされることについて、「情報提供元との信頼関係は別として、機密情報を開示する権限は大統領にあるはず。それにしても、そうした行為が内部からメディアにリークされることが問題では?」と首をかしげる。

   世論調査によれば、今でも共和党員の8割近くがトランプ大統領を支持している。

   トランプ陣営とロシアの癒着の可能性についても、「明らかな証拠を出せ。その時に考える」と、支持者のトランプ熱は冷める気配がない。

(随時掲載)


++ 岡田光世プロフィール
岡田光世(おかだ みつよ) 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社 のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓 を描いている。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1 弾から累計35万部を超え、2016年12月にシリーズ第7弾となる「ニューヨークの魔法 の約束」を出版した。著書はほかに「アメリカの 家族」「ニューヨーク日本人教育 事情」(ともに岩波新書)などがある。