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北朝鮮当局が「観光PR」にテコ入れ? 「新サイト」で航空ショーもアピール

   北朝鮮の観光当局がこのほど、ウェブサイトを刷新した。日本語を含む5か国語版があり、写真や動画も多く盛り込まれている。「テーマ別観光」のコーナーでは「飛行機愛好家」「登山」「鉄道」「テコンドー」など、西側諸国とはかなり違ったスタイルの観光をアピールしている。

   「独自の体験」を武器に観光客を誘致し、外貨稼ぎにつなげたい考えのようだが、2017年6月には北朝鮮で拘束されていた米国人大学生が解放・帰国後に死亡したばかり。米国政府が「渡航禁止令」を出すとも報じられている。

  • 北朝鮮当局が開設したウェブサイト。動画も多く載っている
    北朝鮮当局が開設したウェブサイト。動画も多く載っている
  • 北朝鮮当局が開設したウェブサイト。動画も多く載っている

平壌は「人類発祥地の一つ」

   ウェブサイトは、政府機関の「国家観光総局」が「朝鮮観光」と題して、遅くとも17年5月には刷新していたようだ。7月中旬ごろから、その存在が広く知られるようになった。前身のサイトは2016年夏ごろに立ち上げられたが、ほどなく、ほとんど閲覧されない状態になっており、今回、URLも変えている。

   総じて北朝鮮独自の立場が色濃く反映された内容だ。「前書き」では、

「金正恩委員長の賢明な指導の下に、今日朝鮮民主主義人民共和国の観光業は新たな発展の道を踏み出している」

と、やはり金正恩氏の名前が登場。平壌の説明では、

「人類発祥地の一つであり、5000年の歴史を有する古い文化の都市である」

などと独自の解釈もある。ウェブサイトの内容が実態を反映しているかも注意が必要そうだ。「平壌市内の交通」のコーナーでは、

「平壌市内で路面電車は重要な交通手段となっている」
「平壌地下鉄はチュチェ62(1973)年に開通し、平壌の誇りとなっている。すべての駅は駅名にふさわしい思想性、芸術性に富んだ壁画と彫刻作品、多様な建築装飾で有名である」

などと紹介されているが、実際にはガイドが同行しないと外出できない点には言及されていない。

「わが国の協同農場と果樹園で田植え、草取り、りんご収穫」

   平壌や板門店をめぐる「定番コース」以外に、「テーマ別観光」では、

「飛行機愛好家」「登山」「スポーツ」「鉄道」 「テコンドー」 「労働生活体験」「大衆交通手段」「サーフィン」「建築」「山岳マラソン」「平壌市上空アビエーション」「自転車」

といった、珍しいものが並ぶ。「労働生活体験」では、

「観光客はわが国の協同農場と果樹園で田植え、草取り、りんご収穫などさまざまな労働生活を体験し、朝鮮の農業政策と農業文化の特徴を理解し、朝鮮人民の勤勉かつロマンチックな働きぶりが体験できる」

という。

   9月には東部の都市、元山(ウォンサン)で、16年に続いて航空ショー「元山国際親善航空祭典」を開催するともアピール。総じて「航空」「鉄道」を前面に押し出しているようだ。

米国務省は「逮捕と長期拘束の深刻なリスク」指摘

   ただ、北朝鮮観光にはリスクも指摘されている。米国国務省は17年5月、「北朝鮮の法執行体系では、米国民には逮捕と長期拘束の深刻なリスクがある」として、「渡航しないように強く警告する」との安全情報を出した。2016年1月に平壌で拘束された米国人大学生のオットー・ワームビアさんは17年6月に解放されたものの昏睡状態で、帰国後に死亡している。こういった経緯もあって、米政府はさらに強い姿勢に出るようだ。英BBCは7月21日、北朝鮮旅行を扱う旅行会社の話として、7月27日に米政府が「渡航禁止令」を発表し、30日以内に施行されると報じた。現時点で少なくとも3人の米国人が北朝鮮内に拘束されている。

   日本政府は、核実験やミサイル発射に対する制裁措置の一環として、北朝鮮への「渡航自粛」を求めている。