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本当に「ゴールポスト」動かないのか 文大統領が「日本の指導者の勇気ある姿勢」要求

   一度決着したはずの事柄を蒸し返して「ゴールポストを動かす」との評判がつきまとう韓国外交が、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の政権でもその傾向を本格化させている。文氏は2017年8月15日に行われた、日本の朝鮮半島統治からの解放72年に当たる「光復節」の記念式典で、「強制動員の痛みが続いている」と徴用工の問題に言及。「被害規模のすべては明らかになっていない」として、場合によっては北朝鮮と共同で調査を進める意向を示した。

   その上で、慰安婦問題を含む歴史問題について、「日本の指導者の勇気ある姿勢が必要」と主張。慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に解決」するとした15年12月の日韓合意には言及しなかった。安倍晋三首相は「ゴールポストが動くことは絶対にあり得ない」と述べたとされるが、本当に「ゴールポスト」は動かないのか。

  • 8月15日の式典で演説する韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領。慰安婦問題をめぐる日韓合意には言及しなかった(写真は大統領府の動画から)
    8月15日の式典で演説する韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領。慰安婦問題をめぐる日韓合意には言及しなかった(写真は大統領府の動画から)
  • 8月15日の式典で演説する韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領。慰安婦問題をめぐる日韓合意には言及しなかった(写真は大統領府の動画から)

「シャトル外交」拡大も訴える

   文氏は約30分にわたる演説の中で、北朝鮮の核とミサイルの問題を念頭に、日韓の「シャトル外交を含むさまざまな交流を拡大」することの重要性を訴える一方で、「歴史問題を適切に決着すれば両国間の信頼が深まる」とも述べ、日本側に対応を求めた。

   徴用工問題については、戦後70年が経過しても

「日本植民地時代の強制動員の痛みが続いている。」

と言及。

「被害規模の全ては明らかになっていない」

などとして官民が協力して解決していく必要性を強調した。さらに、

「今後、南北関係が改善すれば、南北が共同で強制動員被害の実態調査を行うことも検討している」

とも述べた。

   これに加えて、慰安婦問題と徴用工問題を含む「日韓間の歴史問題」を解決するためには、

「人類の普遍的価値と国民的合意に基づく被害者の名誉回復と補償、真実究明と再発防止の約束という国際社会の原則がある。韓国政府は、この原則を必ず守る。日本の指導者の勇気ある姿勢が必要だ」

などと主張。「勇気ある姿勢」が具体的に何を指すかは明らかではないが、何らかの対応を求めたともとれる発言だ。

初会見で「再交渉」言及するか

   徴用工の個人請求権の問題については、日本政府は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」との立場だが、韓国の最高裁は2012年に「個人の請求権は消滅していない」とする判断を示した。

   これを機に、元徴用工や元女子挺身隊が日本企業を相手取って相次いで訴訟を起こしており、続々と日本企業が敗訴している。

   文氏は大統領選期間中、慰安婦合意の「再交渉」を公約していたが、今回の演説で再交渉を主張することはなかった。

   文氏は8月17日、就任後初の記者会見に臨む。今後、日本側に具体的な対応を求める形で両問題を「蒸し返す」かどうかが焦点のひとつになりそうだ。

   日本側は従来の立場を変えない構えだ。日韓議員連盟幹事長を務める自民党の河村建夫元官房長官は8月15日午後、安倍首相と会談。河村氏が記者団に明らかにしたところによると、安倍氏は

「ゴールポストが動くことは絶対にあり得ない」

と述べ、再交渉には否定的な考えを強調したという。