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高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
節操なきドタバタ衆院選 民進再結集はスタンバイ状態

   今回の総選挙は、自公あわせて313議席(追加公認含む)と圧勝だった。一方、野党は衆議院では民進党が事実上なくなり、右の希望の党、左の立憲民主党、真ん中の無所属に分裂し、希望50議席、立憲55議席。維新の会11議席、共産12議席だった。

   自公は公示前の318議席から5議席減だったが、衆院定数が475議席から465議席へと10議席減なので、実質的には解散前とほぼ同じ勢力だ。ということは、自公以外の野党もほぼ同じ勢力となる。

  • 衆院選は自公圧勝という結果だった(画像はイメージ)
    衆院選は自公圧勝という結果だった(画像はイメージ)
  • 衆院選は自公圧勝という結果だった(画像はイメージ)

人間模様が現れた選挙

   野党の中身をみると、希望、維新や共産は議席を減らしたが、立憲が増やした形になっている。

   もっとも、これまで民進には右も左もいたが、分裂したおかげで、右よりの希望、左よりの立憲とスッキリ分かれた形になったように見えた。

   ところが、総選挙中から予想されていたことだが、「民進党再結集」の動きが出ている。

   右よりとみられた希望であるが、小池百合子代表が都知事に専念するということになって、共同代表に玉木雄一郎・衆院議員を推す声が高まっている。ここで注目すべきは、玉木氏は希望の結党メンバーでないということだ。さらに前原誠司・民進代表も離党後、希望に合流するとみられている。さらに、無所属で当選した岡田克也氏が「無所属の会」を形成し、その代表になるという。

   希望をひっぱってきた小池氏が都知事に専念するということは、希望がほぼ民進出身者に牛耳られることになる。今のところ、立憲は民進再結集の動きには乗らないとしているが、玉木氏らは民進党で同じ仲間であったので、いつでも民進党再集結スタンバイとみておいたほうがいい。岡田氏も、右の希望と左の立憲の橋渡しをしたいと言っているので、いずれそうなるかもしれない。もしそうなったら、今回の総選挙は、民進党偽装解散とも言われかねない。

   それにしても、今回の選挙ほど、政治家の人間模様が現れた選挙はなかった。民進党時代に安保法制反対の急先鋒だった人が、希望の勢いが良い時には180度意見を翻して希望から出馬した。しかし、選挙後小選挙区で落ちたことを小池代表のせいにして、希望の比例で救われて当選したのに小池代表の解任を口にするなど、常人では考えられない行動をとった人も少なくない。

「首相の解散権制約」求めるのは筋悪

   立憲も偉そうに言えない。いったん希望への合流を決めた後に、希望から排除されると分かってからあわてて新党を作ったからだ。それに比べると、無所属で総選挙を戦った人の方がマシである。

   こうみていると、民進党再結集となっても、その中の人をみると、今回の総選挙の節操のなさを国民は見たわけで、いくら立派なことを言っても、そう簡単には信じてもらえないだろう。

   一応、信を得た形の立憲も、枝野代表が、憲法改正について、「9条改正の論議に応じる」とした一方で、「首相の解散権制約」を俎上にのせることを求める発言をした。

   これはかなり筋悪だ。たしかに、外国では解散権に制約を設けている国も少なくないが、日本で総理の権限を奪ったら結果として喜ぶのは官僚である。解散がスケジュール化されれば、官僚は総理コントロールがより簡単になる。2014年のように消費増税を吹っ飛ばす解散もなくなる。総理の権限を落とせば官僚は各省大臣を籠絡するのは簡単なので、官僚内閣制は揺るぎないものになる。

   安倍政権を許すまじということで、憎しのあまりに総理の解散権制約を言い出したら危険だ。憎かったら総選挙で勝つしかない。選挙で勝てないから総理の権限をしばりたいというのは邪道でしかない。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「ついにあなたの賃金上昇が始まる!」(悟空出版)など。