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デザイン本「NG例」に漂う「ワードアート」感 著者に真意聞いた

   書籍『やってはいけないデザイン』(翔泳社)の、ある項目がツイッターで話題を集めている。

   例示されたNG図画が、文書作成ソフト「Word(ワード)」搭載のデザイン機能「ワードアート」で作成されたものに見える。この点をツイッターユーザーが「ワードアートを殴っていて好感持てる」と投稿し、共感が持たれている。どういった背景でこの項目を書いたのか、著者に取材した。

  • 平本久美子さんの著書『やってはいけないデザイン』(翔泳社)
    平本久美子さんの著書『やってはいけないデザイン』(翔泳社)
  • 平本久美子さんの著書『やってはいけないデザイン』(翔泳社)
  • 最序盤に掲載されているこのページに注目が集まった

「一般的な文書作成ソフトに搭載されている、文字変形機能」

   著者はウェブデザイナー・平本久美子氏。資料・広報誌・ポスターなどの作成で陥りやすいNG事例を紹介しつつ、改善へのアプローチを手ほどきしている。出版は2016年12月で、2017年5月に第3刷まで増刷された。

   改めて注目されたのは、ツイッターユーザーの「小松菜屋HAta」(@hatakoma)さんが10月30日、「序盤からフルスイングでワードアートを殴っていて好感持てる」として同書の一部を投稿したのがきっかけだ。最序盤に登場する「文字をぐにゃぐにゃにする」のページを撮った写真をアップしている。

   そこでは、例として「夏限定メニュー」という文言をデザインした「NG」の図画が掲載されている。編集部で試したところ、ワードアートを使ってほぼ同じ図画が作成できた。

   解説文では「一般的な文書作成ソフトに搭載されている、文字変形機能」とした上で、「ワンタッチで形が変わるおもしろい機能ですが、『その高い認知度から安上がりな印象を与えてしまい、あまりいいイメージは残せません』」(『』内は、実際の書籍では黄色マーカーで強調されている)とバッサリ。

   改善方法として、「タイトルを目立たせたいときは、文字を曲げるのではなく、文字の背景や周辺を装飾でにぎやかにしたり、文字に強弱を付けることで目立たせてみましょう」とし、そのデザイン例も載せている。

著者の平本さん「とてももったいないなーと感じていました」

   同じ思いのユーザーが多かったのか、上記ツイートには「これは笑う」「うん、定番のダサさ」「わかるわー」と共感の声が殺到。11月2日夕までに2万7000以上の「いいね」が付いた。また、小松菜屋HAtaさんは同書について「ワードアートは掴みとして、すごく有用なダメ出し情報と代替案たくさん掲載されてて、デザイナーだけじゃなくてエンジニアやプランナーにも是非」ともツイートしていた。

   J-CASTニュースが2日、著者の平本さんに取材したところ、上記の項目を執筆した意図について「これまで多くのノンデザイナーさんが作られたチラシなどを拝見し、文字をぐにゃぐにゃにするなどの過度な装飾は頻繁に見かける表現でした」と振り返った。こうした経験から、

「見る側にもそのお手軽さが知られているため、『簡単に作った』というイメージが付いて回ってしまうのが、とてももったいないなーと感じていました」

という。

   改善後の作例は、「巻末でご紹介している無料素材の背景画像に文字を重ねたものですので、一般的な文書ソフトで作成可能だと思います」と比較的容易につくれるそうだ。

   一方、NG事例がワードアートで作成されたものとの印象が持たれている点についても聞いてみたが、「あくまで書籍の記載にあるとおり、一般的な文書作成ソフトの話です」とのこと。ツイッターでの反響の大きさには「多くの方に本を知っていただけるきっかけになり、とてもありがたく思っています」としていた。

   それでも改めて、ワードアートはどういうシーンで効果的に活用できるか、見解を聞いたところ、こう回答があった。

「これまで使われてきたように、タイトル周りなどに活用できると思います。ただ、デフォルトのスタイルは効果が強めにかかっている場合が多いため、そのまま使うことはオススメしません。例えば文字列をアーチ状にするスタイルであればカーブを緩めにしたり、ドロップシャドウであれば影を薄くするなど、効果のかかり具合を調整することで、より肩の力の抜けたデザインにすることができます」