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あんな不正発覚も「短期的影響少ない」 神戸製鋼めぐる意外な情勢

   アルミ・銅製品などの検査データに不正が見つかった神戸製鋼所が2018年3月期の通期業績予想を「未定」にすると発表し、波紋を広げている。今後、自動車・航空機メーカーなどの取引先から補償を求められる可能性が高く、神戸製鋼との契約を打ち切るなど顧客離れも想定される。さらに米司法省など海外から賠償などを請求される事態に発展すれば、経営への打撃は避けられそうにない。

   神戸製鋼は主力の鉄鋼事業の収益悪化などから、2016年3月期と17年3月期の2期連続で最終赤字となっていた。今期は市況の改善などから350億円の最終黒字と、3期ぶりに黒字反転を見込んでいたが、一転して視界不良に陥った。一連の不正問題が神戸製鋼に与える影響はまだ見通せないが、長期にわたる顧客離れや補償費用の発生がボディーブローのように同社の経営に影響する可能性は否定できない。

  • 神戸製鋼の見通しは明るくなるのか(画像はイメージ)
    神戸製鋼の見通しは明るくなるのか(画像はイメージ)
  • 神戸製鋼の見通しは明るくなるのか(画像はイメージ)

取引先からの費用請求の動き

「2年後、3年後、信頼を失ったことで受注量がどれくらい減るか。2017年度下期の見通しを出すのが精一杯だった。来年、再来年を見積もることは難しい。徐々に影響は出て行くだろう」

   神戸製鋼の梅原尚人副社長は17年10月30日の記者会見で、中長期にわたる影響を認めざるを得なかった。今回、不適合品の在庫処分や顧客離れなど減益要因として織り込んだ影響額は100億円に過ぎない。だが、既に取引先では川崎重工業の金花芳則社長が10月27日の決算発表会見で神戸製鋼の不正について「企業としてあってはならない行為だ」と批判。「(航空機の部品交換など)われわれにかかった費用は当然(神戸製鋼に)請求したい」と述べた。

   JR東海も新幹線の車両に使われているアルミ部品を定期点検に合わせて交換する方針で、神戸製鋼の取引先で費用請求の動きが広がるのは間違いない。梅原副社長も「既に数社から、そういう話はいただいている。具体的な金額や範囲について協議を進めている」と認めた。

   もっとも、自動車メーカーと神戸製鋼の契約は「特注品」が多く、今回の不正があっても簡単にライバルの鉄鋼やアルミメーカーに乗り換えられない事情もある。ある大手アルミメーカーは「仮に神戸製鋼から乗り換える取引先があっても、当社は既にフル生産で、すぐには対応できない」という。

中長期の影響は見通せない

   このため、今回の不正でブランドイメージが毀損しても、短期的な影響は少ないとの見方もある。当面の資金繰りについても、神戸製鋼は2017年度下期が返済予定の社債300億円のうち、200億円は10月末に予定通り返済済み。残る100億円は1月に返済の予定で、「当面の資金調達に懸念はない」という。大手3行から新たに500億円の融資を受けるとのマスコミ報道も相次いだが、「銀行団と元々計画していたもので、新たに決まったものではない。社債の償還も織り込んでいる」と説明する。

   しかし、前述のように中長期の影響は見通せない。川崎重工やJR東海など取引先の部品交換に伴う費用請求だけでなく、関係者が警戒するのが、米司法省など海外から賠償請求などを受ける可能性だ。神戸製鋼には米司法省から、文書提出に応じなければ罰則が付く「召喚状」が届いていることも明らかになった。米国ではデータ不正を働いた企業は詐欺罪に問われ、高額の罰金や賠償金の支払いを求められることが多い。

   梅原副社長は「具体的にどういう情報提供をするかは精査中で、司法省と当社の弁護士で中身を確認中だ」と述べたが、先行きは不透明なまま。米司法省の捜査が神鋼問題の最大の不確定要素であることは間違いない。