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首都を見つめ60年 東京タワー「還暦」でどう生まれ変わる 日本電波塔の澤田健さんに聞く【どうなる2018年<3>】

   2018年、東京のシンボル・東京タワーが1958年の開業から60周年、還暦を迎える。60年間変わらずに東京の中心にそびえる東京タワーは、大都市・東京の移り変わりをどう見つめてきたのだろう。

   2017年12月、東京タワーを管理・運営する日本電波塔株式会社マーケティング課の澤田健さんに話を聞いた。

  • 青空に東京タワーの「インターナショナルオレンジ」の色が映える(J-CASTニュース撮影)
    青空に東京タワーの「インターナショナルオレンジ」の色が映える(J-CASTニュース撮影)
  • 青空に東京タワーの「インターナショナルオレンジ」の色が映える(J-CASTニュース撮影)
  • あたたかなオレンジ色の光で東京の夜を照らす(J-CASTニュース撮影)
  • 大展望台からの東京の街並みと沈む夕日(J-CASTニュース撮影)

18年春、特別展望台がリニューアルオープン

――2018年、開業60周年を迎えるとのこと。おめでとうございます。

澤田「12月23日に60周年、還暦を迎えます。還暦には『もう一度生まれ変わる』という意味がありますが、まさに東京タワーも生まれ変わります。東京タワーには150mの大展望台と、250mの特別展望台があります。現在、特別展望台はリニューアル工事中で、1年以上営業を休止していましたが、2018年3月初頭にリニューアルオープン予定です」

   還暦にふさわしく、2018年は東京タワーの「新しい姿」を見ることが出来そうだ。ただし、2017年9月から始まった大展望台のリニューアル工事は、1面ずつ順番に北、東、南、西と各方面約5ヶ月かけて実施しており、3面しか見えない状態での営業が2年ほど続く。全て終わるのは2020年の予定だという。ちなみに2018年1月までは北側の工事を実施中で、皇居・スカイツリー方面の景色を見ることができない。

――東京の街並みを立体的に感じられる大展望台、俯瞰できる特別展望台。どちらもそれぞれの魅力がありますが...。

澤田「個人的には、立体感のある景色が見られる大展望台のほうが、東京を体感できる気がして好きですね。ギリギリ人の表情が見えるか見えないかくらい、言うなれば現実(地上)と非現実(特別展望台)の間にいるような高さです。あとは東京タワーに来たら、真下から塔脚のアーチ部分をぜひ見て欲しいです。あの脚線美を電卓もパソコンもない時代に計算尺だけで作ったなんて。改めて当時の職人さんに敬意を表します」

――60年を記念した企画のご予定は。

澤田「具体的な企画などは年明けから本格スタートするのですが、同じ60歳の企業さん――例えば、日清食品さんのチキンラーメン、エポック社さんの野球盤が生まれたのも60年前です。そういった同じ還暦を迎えるトップブランドをお持ちの皆さんとコラボさせて頂くのも面白いかなと思っています。
あとは、お客様から写真を募集したいなと思っています。東京タワーのアーカイブにも限界がありまして。60年の歴史がありますので、皆さんのお家に東京タワーに行った時の写真や東京タワーと一緒に撮った写真、展望台から撮った景色とか、そういう色々な年代の写真の募集企画を考えています。ここ10年や、建設当初の写真は意外と揃っているのですが、前回の東京五輪の1964年頃から20年くらいの間はそんなに多くなくて。その当時の写真が見つかると嬉しいですね」

「外国人観光客に人気のスポットランキング」2年連続1位

――この60年、様々な変化があったと思いますが。

澤田「最近よく勘違いされるのが、電波塔の役目が終わってしまっている、と思われていることですね。2012年にスカイツリーができて地デジのメイン基地局は移りましたが、仮にスカイツリーから放送ができなくなる事態が発生したとしても、東京タワーから送信できるバックアップ体制を組んでいます。もちろんFM放送やマルチメディア放送等も、送信しています。電波塔という大きなインフラが2つ存在するのは、大都市東京の強みと言えるのではないでしょうか」

   電波塔として現役で働いてはいるものの、現在は観光施設としての収入のほうが、比重が大きいという。年間約230~240万人が来塔するなか、訪日旅行客(インバウンド)の増加もあり、外国人客が約3割を占める。ナビタイムジャパンが12月13日発表した「外国人観光客に人気のスポットランキング」によると、東京タワーは2年連続の1位となっている。

――海外の人たちからの高い人気がうかがえます。

澤田「東京タワーが登場するアニメやドラマの影響もあるでしょうね。おそらく2020年に向けてさらに増えていくでしょうし、海外からのお客様をしっかりとお迎えできるおもてなし体制を作って、期待に応えられるようにしていきたいです。ただ、外国の方はFIT(Foreign Independent Tour。個人旅行のこと)が増えていて、複数回日本へお越しの方は、必ずしも東京に来なくなっていて。これからは『All TOKYO』で力を合わせて、東京の楽しさ・魅力をPRしていく事も大事だと思います」

――東京タワーが見守ってきた東京の移り変わり、といった点ではどうですか。

澤田「東京タワーは変わらずに60年、芝公園から東京を見つめてきました。一方で、周辺は見違えるように変わって。極端な話、60年前は東京タワー以外に高い建物なんてないんですよね。1968年に霞が関ビルが建って、1970年に浜松町に世界貿易センタービルが建って...本当にそれぐらいだったのが、今は頻繁に高層ビルが建設されていますから。
そうした環境の中で、いつも変わらずにこの場所にあるという安心感があるようです。4本脚がしっかりと地に着いている形とか、温かみのあるライトアップなども理由かもしれません。お客さまからも、『見ると安心する』『ホッとする』と仰っていただいて。東京タワーを見つめてくれている人たちが、本当に沢山いらっしゃるんだなと実感します。東京の景色はどんどん変わっていくけれど、東京タワーを観ていただいている皆さんの気持ちは変わらないのかなと思います」

――皆さんそれぞれ、たくさんの思い出が詰まっていると思います。

澤田「皆さんの思い出と共に歩んできた建造物ってそう多くないと思うんですよね。この60年、良い思い出も悪い思い出も含めて、皆さんのたくさんの思い出が詰まっていて。色々な世代の方や国の方に、60年間愛していただいて。そうした想いを大事にしていきたいです」

   多くの人の思い出が詰まった場所という意味で、2017年にはこんな出来事もあった。東京タワーは、SMAP「がんばりましょう」の歌詞に登場する、ファンにとって「聖地」的な存在。香取慎吾さんがMCを務めたバラエティ番組「SmaSTATION!!」(テレビ朝日系)最終回の9月23日、番組カラーの青と黄色にライトアップしたところ、翌日からファンからの感謝のメッセージや「お礼参り」が相次いだ。歌詞にも登場する「努力と根性」の土産物は一時売り切れになった。

――ライトアップはご好意で行われたそうですね。

澤田「16年間毎週生放送で、東京タワーを背負って始めてくれた番組関係者の皆様に対する気持ちです。香取さんも東京タワーを好きだと言ってくれて。本当にありがたかったです」

1964年東京五輪を機に、東京を毎晩照らす

――2020年の東京五輪は1964年に次いで2回目ですね。

澤田「1964年の1回目の東京五輪では、日比谷通りを聖火ランナーが走っていて。それと東京タワーが一緒に写っている写真があるんです。すごくいい写真で。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、マラソン競技で日比谷通りの増上寺付近が折り返し地点になるという話もありますよね。増上寺の境内から見る東京タワーの姿は、外国人の方にも人気なので、日本らしい美しい風景として世界に広がっていくと嬉しいですね。
前回の東京オリンピックの時は、東京もまだ観光地が少なかったですし、世界のオリンピック選手たちがオフの時に結構見学に来てくれたみたいです。2020年も同様に、選手はもちろん、世界中のお客様をお迎えしたいですね。
ちなみに当時の東京タワーは、淵の部分だけを点々と光らせるイルミネーションを、日曜・祝日前夜限定で点灯していたのですが、前回のオリンピック期間中に、初めてイルミネーションの連夜点灯を実施したんです。それが好評だったので、翌年のクリスマスイヴから連夜点灯がスタートしました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの時も、皆様の心に残る特別なライトアップを点灯できると良いですね」

――還暦を迎えるにあたっての抱負をお願いします。

澤田「2018年の開業60周年、2020年の東京オリンピック・パラリンピックは確かにひとつのポイントではありますが、その後も50年、100年と、東京のランドマークとして愛され続けることが大切だと思います。今回の展望台リニューアル工事は、その為の工事でもあるのです。還暦の年。新しく生まれ変わる東京タワーに、ぜひ遊びにいらしてください」