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稀勢また休場「ケガだけじゃない」 「治るならもう...」の懸念

   「苦渋の選択」――。大相撲の横綱・稀勢の里(31)=田子ノ浦部屋=が2018年5月13日に初日を迎える夏場所を休場することが11日に決まり、弟子の決断について田子ノ浦親方はそんな言葉で表現した。原因は左大胸筋のけがだという。

   稀勢の里は度重なるけがに悩まされており、直近の1年だけで場所中の途中休場も4度経験している。仮に夏場所も途中休場になれば、進退を問われるとの声も出ていた。

  • 稀勢の里(画像は、日本相撲協会公式サイトのスクリーンショット)
    稀勢の里(画像は、日本相撲協会公式サイトのスクリーンショット)
  • 稀勢の里(画像は、日本相撲協会公式サイトのスクリーンショット)

7場所連続の休場

   稀勢の里の休場は18年5月11日、田子ノ浦親方が東京都内の部屋で報道陣に明かした。17年の春場所で痛めた左大胸筋のけがで、全治1か月。親方は「本人もすごく苦渋の選択というか、横綱として場所に出るなら、しっかりとした形で出なければいけないということで、こういう判断をしました」と話した。

   これで7場所連続の休場となり、年6場所制となった1958年以降では貴乃花と並び最長だ。初日からの休場は、18年春場所に続き3度目となる。

   5月のゴールデンウィーク(GW)以降、稀勢の里の相撲の内容に厳しい意見が相次いでいた。報道によると、北の富士勝昭氏は3日の稽古総見後「あれでは無理だろう」とバッサリ。「休場慣れするとダメだな。イチかバチかしかない。腹をくくる時がくる」と話した。

   稀勢の里は8日の二所ノ関一門の連合稽古でも格下の琴奨菊と相撲を取ったが、6勝10敗と負け越した。それを見て芝田山親方は「何をしたいのか分からない。原点にもう一回戻らないとダメ。今の状況ではどうしようもない」と苦言を呈した。

   こうした稀勢の里のけがの具合について、東京相撲記者クラブ会友の大見信昭氏は11日放送の「とくダネ!」(フジテレビ系)で「(けがの状態が)良くないというよりも、戻らないんじゃないか」と指摘。その上で、

「もう(けがから)1年と2か月ですから、治るけがなら治っているはず。それがずっと尾を引いているのは、治らないとみたほうがいい。その上でどういう相撲を取るか」

と持論を述べた。

「出場することは工事中の橋を渡るようなもの」

   初土俵から横綱昇進直後の17年春場所まで、休場経験はわずか1日のみ。けがの少ないことで知られた稀勢の里だが、17年春場所で左上腕を損傷して以来、相次ぐけがに悩まされている。

17年夏場所(5月)...左大胸筋損傷、左足関節靭帯損傷、左上腕損傷
17年名古屋場所(7月)...左足首損傷
17年九州場所(11月)...腰部挫傷、左足前距腓靭帯損傷
18年初場所(1月)...左前胸部打撲

   初日から出場した場所でも、上記のようなけがで途中休場。直近に出場した18年初場所で途中休場した後、「次は覚悟を決めてと思っている」と次場所で進退をかけることを明言した。

   こうして休場を繰り返す稀勢の里にとって、夏場所の出場はかなりリスクを伴う――。そう語ったのは、NHKの相撲実況でおなじみ刈屋富士雄・解説委員だ。

   11日放送の「おはよう日本」(NHK総合)に出演した際、「(夏場所に)出場することは工事中の橋を渡るようなもの」と解説。その上で、

「この1年、4回、工事中の橋を渡ろうとして途中で落ちているんです。途中休場しているんです。今回が最後の橋とみられていますので、もし今回途中で落ちるようなことになれば、進退が問われると思います」

と話した。仮に夏場所も途中休場した場合には、進退を問われることになりかねないという。

   刈屋氏はさらに「横綱審議委員の方や解説者の方、親方衆から今場所は休んで稽古を積んでからの方がいいのでないかとの声が相次いでいます」と、周囲の意見も紹介。実際、横綱審議委員会の北村正任委員長は先場所後「できるという気持ちになった時に出てきてほしい」と寛容なコメントを残していた。

親方「もう一度皆さんの前で強い横綱として...」

   稀勢の里のけがについて、刈屋氏は「力士にとってけがからの復帰というのは、単に痛みがとれて、力が入ればいいという問題ではないんです。(腕力を)全身の筋肉と連動させていますので、今そのバランスが崩れている状態です」と説明。

「痛みがとれて、力が入るようになったこの時期から、その感覚を取り戻す大切な期間なんです」

と、休場後の回復が重要であるとの見方を示した。

   田子ノ浦親方も11日、「もう一度皆さんの前で強い横綱としてやっていけるように本人だけでなく自分も頑張りたい」と報道陣にコメントした。

「次の場所に向けてやらないといけないことがたくさんある。けがもありますけど、本人も一番はやっぱりけがだけではないというのは分かっていると思います」

と神妙な面持ちで語る。

   一方、横綱の休場に否定的な意見も。大見氏は11日の「とくダネ!」で「休んでプラス材料は何もない」と持論を述べ、7月の名古屋場所について

「非常に暑い場所で、コンディションの作り方が難しい。(稀勢の里は)ますます厳しい状況に追い込まれると思う」

と語っていた。