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「患者さんの鼻くそ」と「ナースの頑固道」が受賞 第8回「忘れられない看護エピソード」

   日本看護協会などが「看護の日」「看護週間」の目玉として毎年募集している「忘れられない看護エピソード」8回目の受賞作品が決まり、2018年5月6日、東京・表参道の同協会で表彰式が行われた。

   脚本家の内館牧子さんらが応募3439作品を審査し、看護職・一般の2部門から最優秀賞、内館牧子賞など10作品、計20編を入選とした。

  • 最優秀賞はいずれも赤ちゃんがらみの話題だった (画像はイメージ)
    最優秀賞はいずれも赤ちゃんがらみの話題だった (画像はイメージ)
  • 最優秀賞はいずれも赤ちゃんがらみの話題だった (画像はイメージ)

鼻くそでも患者さんから預かったものは宝物

   最優秀賞 (賞金20万円) の看護職部門は大阪府・松本幸子さん (39) の「患者さんの鼻くそ」、一般部門は埼玉県・小松崎有美さん (33) の「ナースの頑固道」。

   助産師18年目の松本さんが 2年目に、赤ちゃんのへその緒を紛失した事件の体験談だ。夜勤者が病棟内を探したが見つからない。さらには午後、夜勤だったベテラン看護師が疲れきって現れた。回収業者に連絡し、ゴミ集積所を回ってきた。その時の看護師長の「例え鼻くそでも患者さんから預かったものは宝物のように大切に。母児の 2つの命を扱う助産師の責任はもっと重い」との言葉が、松本さんの生きる覚悟を決めた。

   水さえ飲めないほどひどい摂食障害の小松崎さんは妊娠 7か月で精神科に入院した。毎日の食事が重要だったが、小松崎さんはご飯を机の引出しに隠してごまかそうとした。見抜いた担当看護師は聴診器を当てながら、「ママ、お代わり、って言ってるよ」「私は頑固師。絶対に死んでほしくない」と話した。

   頑固師は巡回のつど、お腹の赤ちゃんの声を代弁して励ました。予定日近くに不安がぶり返し、小松崎さんは頑固師を呼んで思わず「お母さん」と泣いた。頑固師は聴診器を今度は胸に当て「つらかったね、もう大丈夫」と、小松崎さんの心の声を聞いてくれ、無事に出産できた。映像化される入選作品 1編にはこの「ナースの頑固道」が選ばれた。

「土俵で心臓マッサージ」も話題に

   内館牧子賞 (賞金10万円) 看護職部門は、沖縄県・津波あけみさん (53) の「初めての看取り」、一般部門は東京都・東のぶこさん (70) の「おたふく」だった。

   表彰式では内館牧子さんの講評が印象的だった。元横綱審議会委員の内館さんは、挨拶中に倒れた市長を見て「女人禁制」の土俵に駆け上がり心臓マッサージをした看護師、電車内で産気づいた妊婦を冷静な判断で出産介助した看護師を取り上げ、学生の頃から鍛えられ生命の哲学が看護師の背骨になっていると讃えた。どの応募作品にもそうした要素があり、今年はとくに実習生や看護助手の活躍が目立ち、日本の若者も捨てたものではないとの感想を述べた。

   受賞作品、映像作品は日本看護協会のホームページで見ることができる。