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中国が再び「内需拡大」を強調するワケ 金融・財政の緩和に動く兆候

   中国で「内需拡大の持続」が共産党中央政治局会議で初めて言及されたのは2014年のことだったが、最近、この言葉をいっそう強調するようになった。2018年4月23日に開かれた中央政治局会議の公報では「構造調整の加速と内需拡大の持続を堅持する」と強調し、市場の広い注目を集め、「中国の経済政策に何らかの転向が起こるかもしれない」という見方もある。

  • 中国の経済政策に動き?
    中国の経済政策に動き?
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輸出の2割近くを占める米国市場

   2017年の中国経済がリバウンドしたのは、主に輸出の回復が味方したことだが、輸出回復を直接牽引した要素は、米国をはじめとした世界経済の回復である。

   2015年下半期から米国の製造業は回復し、中国の対米輸出にも2016年の第1四半期からの回復をもたらした。2017年の輸出回復の三大製品は、一つ目は、コンピュータ及びそのパーツ。二つ目は、主にスマートフォン。三つ目が、集積回路だ。こうした中国が輸出するハイエンド製品は、今回の中米貿易戦争での米国による攻撃の対象だ。米国は中国にとって最大の輸出市場であり、中国の対米輸出は中国の総輸出の19%を占める。これが、中国の将来の輸出にとって不利な要素であることは疑う余地がない。

   中米貿易戦争に加え、世界経済の回復がピークに達したことで、中国の外需は明らかな圧力を受けるかもしれない。世界銀行及びOECD(国際経済協力機構)の予測データによると、2018年の世界貿易実質成長率と輸出入成長率は下降の傾向が出ている。年全体を展望すると、2018年の中国外需が減少に転じる確率は明らかに高くなっている。

   2017年の中国GDP成長は6.9%で、純輸出が0.6ポイント、プラスに寄与した。これは過去5年間で最高である。一方、内需の牽引による経済成長は2017年が6.3%であり、1997年以来最低である。2017年の純輸出が比較的高い実績値だったことを考慮すると、2018年純輸出のGDP成長に対するプラス寄与は楽観できない。

   これが、おそらく、中国政府がふたたび「内需の拡大」を提起する直接の要因だろう。

「遠い所にある水は目の前にある渇きを癒せない」

   過去、中国経済が下落圧力に直面するたびに政府はさまざまな刺激的な政策を用いて経済を底上げし、経済を安定させるとともに巨大な資金コストとモデルチェンジの費用を支払った。しかし、このような手段はますます継続できなくなり、長期的に見ると内需の継続的な成長のためには、構造的な問題を長い時間をかけて解決する努力が必要である。つまりは、「遠い所にある水は目の前にある渇きを癒せない」のだ。

   そのため、当面の選択肢は、それでも確固不動に「脱生産能力過剰、脱レバレッジ」を貫徹し続けるか否か、である。

   2018年4月23日の政治局会議では、こうした問題に対し、直接的な回答はなかった。いや、できなかった。しかし、市場が予測する中国政府の「転向」は以下の兆候に基づいている。それは、2017年末に開かれた中央経済活動会議と比べ、4月23日の政治局会議では通貨政策、財政政策に関する基本方針に緩和が見られた点だ。

   「積極的な財政政策の方向の不変を堅持し、通貨政策の中立を守ることを維持する」。この二つの言葉は去年と変わっていないが、キーポイントは、この言葉ではなく、その後に続く言葉にある。2017年末の中央経済活動会議では「通貨供給の総バルブを管理し、構造調整加速と内需拡大持続を結合することを維持する」とあったが、2018年4月23日の政治局会議で後に続いたのは「構造調整加速と内需拡大持続を結合し、マクロな経済の安定的な運行を維持する」だ。前回は「バルブ」を管理し、しっかり閉めるとしていたのに、今回は内需を拡大させることに重点が移っており、緩和しているのがはっきりと分かる。

   中国の経済政策に変化起きる可能性は高いが、具体的にどのような政策が発表されるのかは、まだ、時間が必要だ。

(在北京ジャーナリスト 陳言)