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佐川氏不起訴めぐり新聞論調割れる 産経が突出

   学校法人「森友学園」を巡る一連の問題で、大阪地検特捜部は2018年5月31日、財務省の佐川宣寿・前理財局長ら全39人を不起訴処分にすることを発表した。国有地の不透明な取引や、それにともなう決裁文書の改ざんや廃棄も、刑事責任を問うには立証のハードルが高かったとみられる。

   一晩明けた6月1日の朝刊各紙の社説では、「これで終わりではない」などとする社が複数ある一方で、産経新聞が求めたのは「幕を引くための納得のいく対応」。早期幕引きを求めたとも取れる内容で、各社の立ち位置の違いが鮮明になっている。

  • 財務省の佐川宣寿・前理財局長の不起訴処分をめぐる各社の論調が割れている
    財務省の佐川宣寿・前理財局長の不起訴処分をめぐる各社の論調が割れている
  • 財務省の佐川宣寿・前理財局長の不起訴処分をめぐる各社の論調が割れている

不起訴判断は「納得いかない人多いのでは」「国民の感覚とずれていないか」

   「これで終わりではない」派は、朝日・毎日だ。不起訴処分を

「罪なしとする検察の判断に、納得がいかない人は多いのではないか」(朝日)
「結論は国民の感覚とずれてはいないか」(毎日)

などと疑問視したのに続いて、自民党の二階俊博幹事長が不起訴処分を受けて、

「これですっきりして、(財務省職員は)仕事に励んでいただきたい」

と発言したことについて、毎日は「問題が決着したかのような発言だと指摘。刑事責任以外の面で対応を継続するように求めた。

「だが、国民や国会を欺いた重大な事案である。これで終わりではない。徹底的な内部調査や、改ざんを防ぐための法的措置の検討など、引き続き問題に向き合っていく必要がある」

   朝日は社説のタイトルに「これで決着とはならぬ」と掲げ、

「今回の不起訴処分とあわせて、政府は幕引きを急ぐ考えだろうが、森友問題の核心は未解明のままだ」
「問われているのは政治のあり方そのものであり、うやむやにして犠牲になるのは、この国の民主主義だ。その認識と自覚をもって、最終盤の国会審議に臨んでほしい」

などと主張した。

読売「やはり、立件のハードルは高かった」

   読売は、「契約内容や金額など、根幹部分での改ざんはなかった」ことを理由に、「やはり、立件のハードルは高かったと言える」と、検察の判断に理解を示した。一方で、改ざんは「公文書に対する信頼を失墜させる許し難い行為」とも。「不起訴の結論に異を唱える国民は多いだろう」と、国民感情にも配慮した。その上で、財務省の調査結果と処分を通じて説明責任を果たすべきだとした。

「麻生財務相は、改ざんに関する省内調査結果と関係者の処分を近く取りまとめると表明した。全容を余すところなく説明することが、再発防止への第一歩だ」

産経「いつまでも、この問題に関わってはいられない」

   産経は、不起訴処分の妥当性については論評せず、「不起訴処分は、何ら免罪符とはならない」と財務省を非難。佐川氏については

「訴追の恐れが解消された以上、全ての疑問に答えるべきである」

と、改めて説明を求めた。その上で、安倍晋三首相が「信頼回復に全力を挙げて取り組む」と述べていることを引き合いに、「それには真相の解明と開示、相応の処分が必要」だと指摘した。他紙とは違うのがここから先で、

「北朝鮮の非核化や拉致問題の解決など、外交の重要課題が山積している。いつまでも、この問題に関わってはいられない。だからこそ幕を引くための納得のいく対応が求められている」

と、「幕を引く」という言葉を使ってまで早期決着を求めている。

   なお、日経新聞は6月1日の社説では佐川氏の問題を取り上げていない。