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トランプ大統領のちゃぶ台返し 安倍首相の「お手柄」も吹っ飛ぶ

   国際社会で米国の孤立感が強まっている。カナダ・シャルルボワで2018年6月8、9日に開かれた先進7か国(G7)首脳会議(サミット)では、強硬な通商政策を次々に繰り出すトランプ米大統領と他国が激しく対立した。北朝鮮の拉致問題を抱え、トランプ氏に物を言えない安倍晋三首相も微妙な立場に立たされている。

   「まさに膝詰めで直接、本音をぶつけ合い、合意に至ることができた」。安倍首相はサミット後の記者会見で、G7が首脳宣言を採択したことに胸を張った。

G7首脳宣言の承認を撤回

   サミットの議論は多くが通商問題に費やされ、「ヒートアップした激論」(関係者)が繰り広げられたという。トランプ政権が中国だけでなく、日本やカナダ、欧州連合(EU)というG7メンバーにまで鉄鋼・アルミニウム製品の高関税を課すことについて、カナダやドイツなどは猛抗議し、トランプ氏に撤回を迫った。ところが、トランプ氏は「それなら、すべての国が関税をゼロにすればいいじゃないか」と開き直ったという。

   首脳らはギリギリまで調整を続け、「自由で公正な貿易」の重要性など大枠で一致できた部分を首脳宣言に盛り込むことでサミットの面目を保った。日本の関係者は「安倍首相がトランプ氏と他国の間を取り持ち、首脳宣言の採択に一役買った」と安倍首相の貢献が大きかったことを強調した。

   だが、これは表面を取り繕ったというだけ。そんな薄っぺらな「協調」は、すぐに崩れ去った。議長国カナダのトルドー首相が閉幕後の記者会見で米国を批判したことに怒ったトランプ氏が、首脳宣言の承認を撤回したからだ。膝詰めの議論の成果を誇った安倍首相の「仲裁力」にも疑問符が付く結果となった。

日本の交渉戦略が問われる日

   トランプ氏の標的にされている中国はもちろんのこと、EUやカナダ、メキシコなども米国の追加関税への報復措置を打ち出し、国際社会で「米国包囲網」ができつつある。一方、日本は「世界貿易機関(WTO)への提訴を検討している」(麻生太郎財務相)ものの、具体的な対抗策は示しておらず、腰の引け方が際立っている。

   安倍政権は北朝鮮の拉致被害者の救出をトランプ氏に頼っているほか、サミットに合わせて開いた日米首脳会談では7月に日米の新たな通商協議を始めることを約束させられた。トルドー氏のようにトランプ氏を怒らせたくないのが本音で、トランプ政権の強引な通商政策にも沈黙を保っているのが実情だ。

   ただ、秋に米国の中間選挙を控え、トランプ氏も日本に自動車や農業の市場開放を本気で迫ってくるのは必至。安倍首相がいつまでもあいまいな態度を続けていられる可能性は低く、日本の交渉戦略が問われる日も近そうだ。