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「城壁!」「要塞!」 ヒンシュク買ったTBS土井アナのW杯「絶叫実況」

   ロシア・ワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦を放送したTBS・土井敏之アナウンサーの実況に、賛否両論が寄せられている。

   試合中「実況うるさい」「自分に酔ってる」などの声がインターネット上で相次いだ。不評の理由は、間断なく絶叫するスタイルに加え、「ルジニキの城壁」「要塞」といったサッカー実況では聞き慣れない独特の比喩表現にあるらしい。

  • TBSで放送されたW杯決勝トーナメント1回戦の実況が論議に(写真はTBS社屋)
    TBSで放送されたW杯決勝トーナメント1回戦の実況が論議に(写真はTBS社屋)
  • TBSで放送されたW杯決勝トーナメント1回戦の実況が論議に(写真はTBS社屋)

「そこ声張るとこじゃなくね実況?」

   土井アナの実況が賛否を集めたのは、2018年7月1日深夜にルジニキ・スタジアムで行われた決勝トーナメント1回戦・スペイン対ロシア戦。優勝候補のスペインが無数のパスを回しながらゴールに迫るものの、ロシアが組織的な守備でスペインの狙うスペースをつぶし、虎視眈々とカウンターを狙う、といった構図で試合が進んだ。

   土井アナが「うるさい」と言われてしまったのは、ボールを持つ選手名を逐一読み上げたり、「侵入!」「倒れる!」「チャンスだ!」「もう1回!」など、たびたび絶叫したりしていたのが大きいようだ。スペインはパス本数が多く、名前を連呼するシーンがより多くなった。ツイッターやネット掲示板では、

「黙って実況してほしい」
「実況は突然叫んでうるさい」
「そこ声張るとこじゃなくね実況?」
「名前連呼してればいいとおもってる実況なんなの」

などといった声が相次いだ。

   いっそうスイッチが入ったのは、1-1で迎えた後半途中。満場の観客席から、タイミングを合わせて一斉に手を叩く音が聞こえてきた。W杯初出場のアイスランドサポーターが行ったバイキング・クラップに触発されたのだろうと、

「ロシアですが、バイキング・クラップですか...まさかのルジニキ・スタジアムでバイキング・クラップ! 自然発生的に起きたんでしょうか?!」

と、土井アナが興奮。「ロシアン・クラップ」と名付け、守る時間が長いロシアに照らして、

「アイスランドと同じように、『守る間は我慢して守っていいんだぞ』と勇気づける意図ですかね。『大丈夫、君たちは今、劣勢じゃないんだ、守っているんだ、守れている』ということをサポーターが後押ししているようなクラップです。スペイン、岩盤のような守備を崩せるか?!」

と述べた。

「少しずつ城壁に亀裂が入っています!」

   直後、解説の元日本代表・戸田和幸氏が「今スペインは1トップのジエゴ・コスタのまわりに誰もいないですね」と攻めきれない一因を説明したが、土井アナは「あー本当だ!」とタメ口のような受け答えになった。

   「岩盤」に端を発し、「砦」「固い岩」「城壁」など、崩れないロシアの守備に対する比喩が多発。スペインの選手がペナルティエリアに侵入する場面が増えると、より「城壁」の使用頻度が増す。後半ラスト10分間だけでも、

「どんなに固い城壁でも、少しずつ少しずつ中に入っていけば、いつか崩れる!」
「少しずつ城壁に亀裂が入っています!」
「モスクワのルジニキに作られたこの城壁は、まだまだ固さを残しています。ただ少しずつ侵入し、城壁の隙間から崩しているスペイン!」

といった具合に何度も登場している。

   1-1のまま延長戦に突入すると、攻めあぐねながらもゴールに迫り続けるスペインの状況を、「まさに故事でいう『雨垂れ石を穿つ』、水滴でも何度もそこに当たっていけば石も砕けていく」と故事成語で表現。両チーム点が入らず、延長後半には「ルジニキの城壁をまだ崩すことができません!」と止まらない。雨が降り出した同11分には「風雲急を告げる、というこの雨です」と表現。だがスコアは変わらずPK戦に突入した。

   PK戦は、スペインのキックがGKに2本防がれ、ロシアの勝利が決定。土井アナも「スペイン、ルジニキ・スタジアムで散ったぁーーー! ルジニキに築かれた要塞、城壁、崩れなかったロシア!」「ルジニキの要塞は鉄壁でした!」と、すっかり「城壁」を連呼していた。

   また、「守り勝ったロシアの最後のヒーローがGKというのはある意味必然かもしれません!」と興奮。ただ、戸田氏は「ただ、彼らは守れるだけでなく、最後までボールを奪いに行く、相手ゴールをめざすというプレーを見せ続けました。その攻撃があったからスペインは攻撃の人数をかけきれなかったところがあったと思います。固い守備とゴールへの意欲を見せ続けたからこそ勝利できたと思います」と冷静に総括し、試合を終えた。

「再確認したのは、サッカー中継における『実況の重要性』」

   サッカーファンの間では、その実況スタイルは以前から知られていたものの、今回はW杯のひのき舞台。終始エキサイトしていた土井アナの存在感は良くも悪くも大きかったようだ。サッカーの実況ではあまり聞かない独自の表現と相まって、ツイッターやネット掲示板には、

「土井は城壁とか要塞とか言い過ぎ、ウザイ。自分の実況に酔いすぎ」
「これから土井選手にサッカーの実況させる時は、『城壁』と言った回数分、土井選手にイエローカード出してほしい」
「実況さぁ上手いこと言おうとして意味不明なこといってんじゃねーよ」
「自分が目立つ必要無いことを自覚して欲しい」

といった声が相次いだ。ただし、

「個人的に今日の実況の人はすごい好きです」
「TBSの実況テンション高くて好き」

と支持する声も一部にある。

   サッカージャーナリストの小澤一郎氏は試合終了直後、ツイッターで、

「11人どころか超有能な23人が揃ったスペインが全く機能しないことで監督の重要性を痛感した試合で再確認したのは、サッカー中継における『実況の重要性』ですね。解説がどれだけ有能でも実況がその能力を引き出せない、話を拾えないどころか、遮って実況が自分のしたい話をし始めると成立しないですね」

と投稿している。

   スペインはW杯初戦の2日前にロペテギ監督解任、イエロ新監督就任という大混乱があった。戸田氏は試合中、「適材適所ならブスケツは後ろです。テクニックがあって攻撃的な選手を前に置く方がスペインらしさは出ますが、イエロ監督の狙いはそこじゃないようですね」と監督交代の影響を示唆するようなコメントをしていたが、土井アナは特に取り上げることはなかった。