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東国原の「そっくり俳句は偶然」弁明 あり得る話?俳句関係者に聞くと...

   元宮崎県知事でタレントの東国原英夫氏が、人気番組「プレバト!!」(TBS・MBS系)で披露した俳句について、過去に宮崎県の地元紙に掲載された句に酷似しているとの指摘を受け、盗作意図は否定しつつも、「私の至らなさ・責任」だとして謝罪した。

   両句を比べると、「五・七・五」のうち、「中七」と「下五」は全く同じ。「上五」も冒頭2文字は同じという、そっくりぶり。東国原氏は「結果的に類似句になってしまった」というが、謝罪後もツイッターでは「盗作」指摘が出ている。東国原氏の弁明は、俳句関係者にはどう映ったのか。俳句専門誌の編集関係者に話を聞いた。

  • 「プレバト!!」の番組サイト(MBSサイトより)
    「プレバト!!」の番組サイト(MBSサイトより)
  • 「プレバト!!」の番組サイト(MBSサイトより)

「結果的に類似句になってしまった」

   問題となった東国原氏の俳句は、2018年6月7日放送の「プレバト!!」で披露された、

「梅雨明けや 指名手配の 顔に×」

   一方、17年6月26日付の宮崎日日新聞(宮崎県の地元紙)の「宮日文芸」欄に掲載された作品は、

「梅雨寒や 指名手配の 顔に×」

   「上五」後半の「明けや」と「寒や」とが違うだけで、あとは一言一句同じだ。東国原氏は宮崎県出身で、県知事も務めた経験がある。

   今回、宮日の句を詠んだ人が「父の友人」だという人物がツイッターで、この類似を指摘。東国原氏は7月5日のツイッターで「先程、このツイートを確認しました」として、

「全く承知していなかったとは言え(原文ママ)、結果的に類似句になってしまったのは私の至らなさ・責任だと思います。大変申し訳有りませんでした」

と、盗作意図は否定しつつ、謝罪した。これまでも類句防止策として、

「自分の句と類句・類想句が無いか出来得る限り調べます」

という努力をしていたが、

「毎日全国で数千・数万の俳句が生まれ、過去100年以上の歴史の中で詠まれた俳句は天文学的数字です。網羅的チェックは不可能です」

と理解を求めた。今回の自身の句の取り下げについて、番組スタッフと相談・協議するとしている。

「これを偶然とするのは苦しすぎるって」

   こうした東国原氏の弁明に対し、ツイッターでは今も不信感が寄せられている。7月6日のツイッターでも、

「これを偶然とするのは苦しすぎるって」
「完全に盗作でわろた(編注:笑った)」
「苦しいねーここまで似てたら(略)」

といった指摘が見受けられた。

   では、俳句関係者にはこの弁明はどう映ったのか。俳句専門誌の編集関係者にJ-CASTニュース編集部が6日、見解を聞いた。すると、

「ここまでそっくりだと、盗作の意図、悪意は感じられませんね。盗作するつもりなら、もう少し『いじる』でしょう。句の順番を入れ替えてみたり、とか」

と指摘した。また、東国原氏も「プレバト!!」の番組も有名で、意図的に盗作するには、発覚する可能性の大きさや、発覚したあとの「リスクが大きい」ことも、盗作だとは考えにくい理由になると分析した。

   実際、「俳句には類句を発表してしまう事例はよくあるのか」、「類句の有無のチェックは難しいのか」と質問すると、

「類句はよくあること。チェックも完全には無理で、見逃すことがあってもやむを得ない」

とのことだった。時には「賞」をとった作品が、のちに類句と分かり取り下げられることもある。

   発覚後の対処法も様々で、発表取り下げだけでなく、取り下げはしないが、後に出す句集には収めない、という対応で済ますこともあるそうだ。

   ただ、過去に見たり読んだりしたフレーズが頭に残り、のちにそのことを忘れてしまい、ある時、自分の発想として、そのフレーズが頭に浮かぶことはあり得るという。

類句チェック漏れは「よくあること」

   同じく6日、ある俳句団体の関係者(女性)にも話を聞くと、類句がチェック漏れで発表されてしまうことは「よくあること」とのことだった。

   生み出される俳句作品の多さが分かる一例が、7月5日に発表された「第二十九回伊藤園おーいお茶新俳句大賞」の応募状況だ。今回の応募句数は195万4223句。29回にわたる累計の応募句数は3370万句を超えている。

   果たして、東国原氏が示唆したように、該当作品は取り消されるのか。6日昼過ぎ現在、「プレバト!!」の番組公式サイトでは、この件には触れていない。