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倉敷の美観地区、「元気」なのにキャンセルが... 「風評」払拭に動く関係者に思いを聞いた

   西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県で、県内有数の観光地・倉敷市美観地区への風評被害を払拭しようとする動きが広がりをみせている。ツイッターでハッシュタグ「#美観地区は元気だったよ」の拡散を呼びかけているのだ。

   発案したのは、美観地区のゲストハウス&カフェ「有鄰庵(ゆうりんあん)」などを運営する有鄰(倉敷市)の代表・犬養拓氏。J-CASTニュース編集部では、本人にハッシュタグに込める思いを聞いた。

  • 倉敷美観地区は「元気」です
    倉敷美観地区は「元気」です
  • 倉敷美観地区は「元気」です
  • 風評被害の撲滅を訴える(提供:有鄰庵の公式ツイッター)

「倉敷を背負っていかなければならない」

   有鄰庵は、築100年の古民家を活用したゲストハウス&カフェ。江戸時代の町並みが残る美観地区で、日中はカフェ、夜はゲストハウスとして、年間に約6万人の旅行客を迎え入れている。

「倉敷美観地区にこれまで通りたくさんの人に来てほしい、風評被害を起こさないでほしい、という願いから私たちはお客さんにこの紙をお渡しし始めました」

   店の公式ツイッターがそんな文章とともにチラシの画像を投稿したのは、2018年7月11日。チラシでは「倉敷美観地区にお越しいただいた皆さんへ 普段通りの美観地区を伝えてください!」と、以下のような内容の長文を記している。

   まず「倉敷の真備地区は豪雨で大きな被害を受けています」と倉敷市真備地区の被害状況を紹介。「ただ、お越しになっていただけると分かる通り、『倉敷』と言っても広く、美観地区はほとんど被害はありませんでした」と説明。その上で、

「それでも豪雨明けから風評被害は生まれてしまっており、私たちのゲストハウス・宿にもキャンセルが多くなってしまっています」

と「風評被害」の存在を明かすのだ。

   美観地区は、倉敷川沿いに江戸・明治時代の邸宅など歴史ある建造物が立ち並び、国重要文化財「旧大原家住宅」や大原美術館を擁する人気の観光地だ。チラシでは、

「岡山を代表する観光地なので、風評被害は豪雨に加えてさらなる打撃になってしまいます。ただ、私たちはその美観地区で仕事をする者として、倉敷を背負っていかなければならないと思っています」

と説明する。そして、

「皆さんの目で見た普段通りの美観地区を、SNSで、そして帰ってから周りの方々に口頭で、ぜひ広めて下さい」

   こうして美観地区を訪れた観光客に「#美観地区は元気だったよ」の投稿を呼びかけているのだ。

「何の被害もありません」拡散する人たち

「観光地にとって、風評被害は一番怖いものです。店の予約キャンセルは相次いでおり、外では明らかに人の数が減っています。でも、美観地区に来ていただいた方はきっと、西日本豪雨以前と何も変わっていないと感じてもらえるはず。そうした方々のお力を借りられないかと思いました」

   13日のJ-CASTニュースの取材にそう語るのは、有鄰庵の運営会社で代表を務める犬養氏だ。

   有鄰庵では西日本豪雨以後、約40人から予約キャンセルの連絡が入った。繁忙期でない7月全体の客数は通常200人を下回ることからしても、店に与えた「風評被害」の大きさがうかがい知れるというもの。8月上旬に予約を受け付けていた市主催の団体ツアー(約30人)もキャンセルとなった。

「明日(14日)からの3連休で、観光客が増えるかどうか。引き続き様子を見ていきたいです」(犬養氏)

   チラシは、有鄰庵のほか同社運営のショップ「美観堂」やスイーツカフェ「はれもけも」でも配布している。さらには、美観地区の他店にも声をかけており、既に4、5店舗で検討を進めている。英語版の製作も考えている。

   こうした犬養氏の取り組みは、徐々にではあるが確実に広まっているようだ。ツイッターで「#美観地区は元気だったよ」と検索すれば、

「何の被害もありません」「是非遊びに行ってあげてください。いつもどおりでした」「川の色以外はいつもとあまり変わらない感じ」

といった投稿が続々と見つかる。

   また、10、11日に美観地区を訪れた岡山市在住の22歳派遣社員は、ハッシュタグを投稿した理由について

「有鄰庵で、美観地区の現状を発信して欲しいと言ったチラシを頂き、少しでも風評被害を無くす助力になればと思いました」

とJ-CASTニュースの取材に回答。町並みの印象については「観光客が少なくやや閑散としていて、美観地区を流れる川が茶色に濁っていた」としていた。

「観光バスの数」減少

   風評被害を払拭するための取り組みは、他からも出ている。

   倉敷観光コンベンションビューローは10日、公式サイトで

「本日現在、倉敷美観地区のお店・施設等につきまして、通常通り営業を行っております。市内中心部の道路等につきましても通行止め等の措置はございません」

と呼びかけていたのだ。

   コンベンションビューローの事務局長は13日のJ-CASTニュースの取材に「真備地区でこのような大きな被害が発生すれば、倉敷市全体がそうなのではないかと思う人も出てくるでしょう。被害を防ぐため、そう書きました」と説明する。

「明らかに観光客の数は減ったと感じます。観光バスの数も3分の1くらいになりましたし、ホテル関係者に聞いたところでは、宿泊客の数も減少しているそうです」

   そして、「公式サイトを見た人が、少しでも美観地区の応援に来てくれれば」と願っていた。