J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

日産・経営陣の姿勢に厳しい視線 「不正発表」会見にトップ2人の姿なし

   日産自動車の新たな不正が発覚した。完成した新車の排ガスや燃費に関する検査で測定値を書き換えるなどしていたというもので、2018年7月9日に発表した。13年以降、ノートなど19車種1171台分のデータを改ざん、その不正は国内全6工場のうち5工場に及んだ。

   日産では2017年9月、無資格者による完成検査が発覚している。ノートは、18年上半期(1~6月)の軽自動車を除く国内新車販売で、日産車として48年ぶりに首位に立つという快挙が7月5日に発表されたばかりで、せっかく高まったブランドイメージは一転、低下するのは必至の状況だ。

  • 48年ぶり首位の快挙もブランドイメージは一転、低下するのは必至の状況
    48年ぶり首位の快挙もブランドイメージは一転、低下するのは必至の状況
  • 48年ぶり首位の快挙もブランドイメージは一転、低下するのは必至の状況

2017年には無資格検査問題

   「1171台に不正」というのは少ないようだが、最終検査のうち、生産台数の1%程度で実施する「抜き取り検査」のこと。調査した車の53.5%にのぼり、不正の「常態化」がうかがえる。

   具体的な不正は、2013年4月~18年6月の間、栃木(栃木県上三川町)、追浜(神奈川県横須賀市)、日産車体湘南(同平塚市)、日産車体九州(福岡県苅田町)、オートワークス京都(京都府宇治市)の5工場で、走行速度や温度など定められた条件と異なる環境下で実施した試験を有効な測定として扱ったほか、二酸化炭素などの測定値を改ざんするなどしていた。

   データ改ざんがあったのはノート、スカイライン、マーチなど19車種。不正に関与していたのは5工場で計10人。少しぐらい書き換えても問題ないと現場が判断したと推定されるとし、上司は把握していなかったようだと説明している。外部の法律事務所に調査を依頼し、動機など不正に至った詳細を解明し、1か月後をめどに改めて結果を公表する方針だ。

   日産では2017年の無資格検査問題では、100万台以上のリコール(回収・無償修理)に発展したが、今回は再検証の結果、品質には問題がないとして、リコールは行わない方針だ。

   今回の新たな不正の深刻さは、無資格検査の発覚後も見過ごされ、ついこの6月まで続いていたこと。同種の不正がSUBARU(スバル)で見つかったことなどを受けて調査して判明したというが、スバルの燃費データ改ざんの疑いは2017年12月には、すでに浮上していた。この時点で日産は無資格検査問題に関する調査報告書と再発防止策を国土交通省に提出済みだったから、無資格検査問題にけじめをつけて、一件落着と判断してしまい、半年後まで自浄能力が働かなかったことになる。

「二度と起こらない仕組みをつくることが経営陣の責任だ」

   データ改ざんといえば、スバルは3月時点で吉永泰之社長(当時)が6月下旬の株主総会を経て代表取締役会長になり、最高経営責任者(CEO)にもとどまるとしていたが、6月初めに今回の日産と同じ完成車の燃費・排ガスの新たな不正が発覚したことから、代表権とCEOを返上し、一定のけじめはつけた。

   これに比べ日産は、7月9日の発表の会見に西川広人社長もカルロス・ゴーン会長も姿を見せず、出席した山内康裕・チーフコンペティティブオフィサー(CCO)は「西川社長の指示のもとで、私が責任者として対策を実施してきた。私が説明するべきだと考えた」と釈明。記者から「経営陣の責任の取り方は?」「報酬を返上するのか?」などと詰め寄られたが、「原因を徹底的に究明して、こういったことが二度と起こらない仕組みをつくることが経営陣の責任だ。(報酬の返上については)再発防止策をたてる中で検討していきたい」と述べるにとどまった。

   6月26日の株主総会で、ゴーン会長は無資格検査問題で公の場に出なかったことについて「日産のトップは西川氏で、トップの責任を尊重しないといけない」と話していたが、その西川社長さえ会見に出ない理由として、山内CCOの説明は苦しいものだった。

読売社説「企業統治の欠如にあきれるばかり」

   この間、次々に発覚した様々なメーカーの不正では、三菱マテリアルの竹内章氏が6月22日付で社長から会長に退いたが、11日の発表の際は会見なしで、人事実施日の株主総会当日も小野直樹新社長のみが会見し、竹内氏は姿を見せないなど、説明責任という点で批判を浴びている。三菱マテは素材メーカーだが、消費財メーカーである日産の対応には、世間の関心も高く、大手紙でも、17日時点で日経、朝日、読売、産経が社説で取り上げている。

   「経営陣は有効な対策を打てない。企業統治の欠如にあきれるばかりである」(読売7月13日)というのが率直な世の中の受け止めで、「原因解明と再発防止策の徹底が欠かせない」(日経7月12日)のは当然。読売は「国土交通省は検査制度の見直しを進めている。......不正が後を絶たない以上、制度の厳格化はやむを得まい」と、国の対応も求めている。

   そして、経営責任について各紙は、日経が「不正を発表した9日の会見に、西川広人社長が不在だったのも疑問である。『経営トップが自ら説明するほどの重大案件ではない』と考えているのだろうか」と、皮肉交じりに苦言を呈すれば、朝日(11日)も「企業体質を改めて会社全体を正しい方向に向けるには、何より経営トップが厳しく身を律する必要があるのではないか」と指摘。産経(11日)は「SUBARUは責任を取って最高経営責任者(CEO)が交代した。日産が本当に信頼の回復を図るというのなら、経営責任も併せて明確にすべきだろう」と、トップの辞任を含むけじめを求めていると読める厳しい書きぶりだ。