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社長が答えた「しまむら」激安のヒミツ 山里亮太が直撃!(2)

J-CASTニュース名誉編集長 山里亮太
J-CASTニュース名誉編集長 山里亮太

   「しまむら」といえば、「安い」です。もう、めちゃくちゃ安いと思います。

   『ヒルナンデス!』(日本テレビ系列、月~金11時55分~13時55分)の「3色ショッピング」(金曜日放送。予算、時間、色の3つの制約をクリアしながら競う買い物ゲーム)のロケでは、いろんなお店に行くんですが、たとえばユニクロさんで全部をコーディネートすると1万8000円ほどかかるんです。

   それが、しまむらさんだとフルにそろえて6000円。全身6000円ですよ? あわよくばちょっと余っちゃったりする。

   ずっとこの「安さ」はなんだろうと思っていました。同時に、勝手に心配もしていたんです。「ちゃんと利益出ているのか????」って。

   今回は、そんなところに切り込みます。聞くのは、「しまむら」北島常好社長です。

「安かろう、悪かろう」を払しょくしたい!

しまむら 北島常好社長
しまむら 北島常好社長

山里: いつも思うんですけど、しまむらさんって、とにかく安いですよね。めちゃくちゃリーズナブル。こんな値段で売って大丈夫なんだろうかって心配していました。どうなんですか、そこのところは......。

北島社長: ご心配いただいてありがとうございます(笑)。「しまむら」と聞いて、一番に思い浮かぶ言葉が「安い」ですからね。
でも、わが社は経費と利益のバランスをみて、ローコストでできるような仕組みをつくっているので、他所と同じ値段で仕入れたとしても利幅を狭くして、安く売ることができるんです。ローコストオペレーションの成果なんです。

山里: でもね、人って、安さと引き換えに質を疑っちゃうところがあるじゃないですか。

北島: ここはもうハッキリ書いてほしいんですけど(笑)。「しまむら」は、決して「安かろう、悪かろう」ではなくて、ちゃんと一定の品質は担保されているんです。

山里: そうなんですか!

北島: もちろんです。たとえば、自社のPB(プライベートブランド)商品であれば、社内の品質管理の部隊がすべての商品をチェックしますし、そのチェックがない商品は売り場に出ません。
一緒にやっているサプライヤー(メーカー)にもそれぞれ品質管理の担当がいて、「しまむら品質基準」のもと、それに則って全品チェックしています。

山里: クオリティは保ちながら、価格をギリギリまで下げるって、なかなか難しくないですか。

北島: (深くうなずき)そうなんです。

山里: つまり価格を下げるため、なにかしらの「努力」をしているってことですよね? 具体的にどのような手を打っているんですか。

北島: たとえば、店舗のつくりでいうと、基本的に店舗の大きさを1000平米くらいのサイズに揃えています。そうすることで店舗レイアウトも、商品を置く場所も、お客様の導線も、1店舗1店舗、どのお店に行ってもだいたい同じようになっています。
また、商品の配送は全国約10か所の配送センターから、各店舗に夜間配送します。そうすることで、朝、社員が出勤して、どのお店も一斉にスタートできます。だから、仕事のやり方や作業手順など、社員たちの覚えることも最小限で済みます。
ほかには、新聞の折り込みチラシ。これだって1店舗ごとに刷ると高くつきますが、1400店舗共通で作っていけば、安く済みますよね。

山里: 商品にはどういう工夫を?

北島: 1店舗にブラウスを1枚入れるだけでも、1400枚が必要です。さらにサイズだったり、色だったり、発注するときには1万枚くらいのロットになります。多少でもヒット商品をつくろうとなると、100万枚単位でつくらなければならない。そうなるとコストは一気にズドーンと下がります
こうしたローコストオペレーションを徹底することで、販売コストを抑えています。食品スーパーとかホームセンターとかディスカウントストアとかと比べると、ちょっと見劣りするところがありますが、衣料小売りの中では圧倒的にローコストになっていると自負しています。
ただ、その半面、多くの方が「安いけど、それなり」って言うんで(笑)、今はこの部分をなんとか払しょくしようと取り組んでいます。

山里: そうすると、商品の質を上げる取り組みもあるんですね。

北島: ええ、裏側ではいろいろと工夫しているんですよ(笑)。品質を上げるため、こういうラインを作ろうとか、規格はここでやりましょうとか、糸はどこの国で作りましょうとか......。自分でも海外などに足を運んで、「どこどこの糸をここに持ってきて生地にして」とか、そういった交渉をやってきました。
やっぱり海外でも、国や工場によっても技術力が違うので、この技術は中国内でも5、6か所しかできないとか。いろいろな条件があるので、それらを当てはめていくんです。

安くできるのは価格へのたどり着き方が違うから

しまむらキャラクター 「しまうさ」とその仲間たち
しまむらキャラクター 「しまうさ」とその仲間たち

山里: とはいえ、安く売るってメーカーさんにとっては、そんなにうれしい話じゃないですよね。交渉が難航したりはしないんですか。

北島: うちは、アパレルメーカーからの商品は全品買い取りです。最近はどの小売店でも買い取るようになってきましたが、昔の衣料品業界はそうではなかったんですよね。
売り上げた分だけ買い取って、あとは知らないっていうお店がたくさんありました。最近はそんなことすると、逆に商品を作ってくれなかったりしますが、うちは、昔から全品買い取りです。
これをすると何がいいかというと、メーカー側は最初に計画して、そのとおりに作って納品してもらう。しかも大量だから、メーカーが間違いなく儲かり、安心して継続して取引してもらえる。安定的に取引できれば、そこでまた価格を下げることができる。そうやって安くできるんです。

山里: なるほど!

北島: どんなビジネスでもそうでしょうが、基本的には約束は守りましょう、というのが大事ですよね。
衣料品も同じで、品質や納期の責任はメーカーさんで持ってください。我々はお引き受けした商品の数量と販売には責任を持ちます。これは約束です、と。お互いが約束を守れれば、きちんと商売が続いていきます。
我々は商品を、ODM(original design manufacturing = 取引先のブランド名で販売される製品を開発・設計・生産すること)で出すので、自前ではつくりません。つまり、どの小売店も同じようなところで商品を作っているわけです。メーカー、つまり生産者は他所と一緒なので似たようなコストになるんです。
ただ、うちはロットが大きいので安くできる。そうすると、違いは「生業(なりわい)」だけなんですよね。

山里: 生業、ですか?

北島: ええ。生業です。我々はふだん使いを中心とする総合衣料小売りですが、たとえばスーツ。スーツは紳士服量販店がありますよね。

山里: えっ! スーツって、しまむらさんに置いてあるんですか?

北島: 置いていますよ。しまむらでは大型店などの一部に、ビジネスコーナーを設けている店舗があるんです。ビジネスマンの方はスーツがふだん着のようなものですし、お客様のニーズがないわけではないので。
でもスーツって、すごく難しいんですよ。もちろん、自前でつくるのは無理ですから、専門のアパレルメーカーさんにODMでお願いすることになりますよね。そうなると、紳士服店と同じようなメーカーさんにお願いしなければならない。
つまり、同じ品質のスーツが、しまむらでは安く、紳士服店では高く売られている。我々は生業として、総合衣料品店としてスーツを売っていますから、損してまでは売りませんが、一定の利益が出る価格で売っている。それでも、紳士服店よりも安くできます。
紳士服店はスーツで商売していますから、必要以上には安く売れません。価格がブランドイメージにも係わりますからね。我々と紳士服店とでは、あまりに生業が違います。だから、うちもそこのところはよくよく考えていかないと。

山里: なるほど! そこなんですね。価格へのたどり着き方が他所と違っていて、さらにみんなの想像を超えていることに取り組まれているから、安くできる。
僕らは価格って質を落としてできているって思ってますもん。「リーズナブル」って、どこかでブランド力の信頼性、信ぴょう性を欠いていて、ブランド力にブレーキをかけがちになっているって。でも、違うんですね。

北島: だから、これはいろんなところで、みなさんにお話ししていかなきゃって思うんです。価格の差は、業態などの商売の成り立ちの違いで起るものなんです、と。「安さ」っていうのは、そういうことなんです。

(つづく)

プロフィール

北島 常好(きたじま・つねよし)
しまむら 代表取締役社長
1983年、流通経済大経卒、同年しまむら入社。2009年に取締役、12年台湾「思夢樂」股份有限公司董事長、13年に常務取締役(開発部・店舗建設部統括)、15年取締役専務執行役員を経て、18年2月から現職。
埼玉県出身、59歳。

しまむら
衣料品・日用品などの総合小売りチェーン。中核事業の「ファッションセンター しまむら」をはじめ、ベビー・子供用品「バースデイ」やCASUAL&SHOES「アイベル」、雑貨&ファッション「シャンブル」、靴の「ディバロ」、2018年5月には初の「しまむら 寝具・インテリア館「 Zzz...と(ずっと) 」を神戸にオープンした。
グループ全体で、国内2089店舗。台湾45店舗(いずれも、2018年2月20現在)。中国11店舗(17年12月31日現在)を展開する。