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東日本銀行、不正のオンパレード 横浜銀との統合で自ら大きく見せようと?

   「信用第一」の銀行にあるまじき不正のオンパレードといっても過言ではない。金融庁が2018年7月13日に、法令遵守態勢や業務運営態勢に問題があったとして業務改善命令を出したコンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)傘下の東日本銀行(東京都中央区)だ。

   算定根拠が不明な手数料徴収や不適切な融資がまかり通り、監査機能も働かなかった。信頼回復の道のりは遠い。

  • 83店のうち69店で不正で見つかった(画像はイメージ)
    83店のうち69店で不正で見つかった(画像はイメージ)
  • 83店のうち69店で不正で見つかった(画像はイメージ)

83店のうち69店で不正

   いったいどれほどのことをやっていたのか。

   東日本銀によると、全83店のうち69店で、算定根拠が不明確な融資実行手数料を受け取っていた。必要以上に融資したうえで、余った分を定期預金させる「歩積み両建て」と呼ばれる融資も行っていた。

   地方自治体が利子補給し、低利の資金を中小零細企業に提供するために設けている「制度融資」の実行先から手数料を受け取っていた例も多数見つかった。中には、地方自治体との協定書などで手数料徴収が禁止されているケースもあった。金融庁は「制度融資の目的や趣旨を逸脱するなど、極めて不適切な取り扱いが行われている」と断じた。

   特定の副支店長(懲戒解雇済み)が営業成績を上げるため、融資先企業に対し、支店の営業エリア内に実態のない営業所を登記させ、融資を実行していたケースもあった。結果的に7億円以上の損失を銀行に与えていた。別の複数支店では、支店長が同様の不適正融資を実行していた。似たような不正は過去にもあったが、再発防止策が十分ではなかった。

   監査部門は関係書類の外形的な点検や表面的な監査しか行っておらず、不適切な融資などを発見できなかった。投資信託販売教務でも、多数の職員が、実態と異なる虚偽報告などを行っていた。

横浜銀が圧倒的優位のなかで

   金融庁は「役職員の法令遵守や顧客保護、顧客本位の業務運営に関する意識が乏しい企業文化」と指摘。「経営陣が新規取引獲得に偏重した営業姿勢の下、業務の適切性を確保するための内部管理態勢の整備を十分に行ってこなかったことが根本原因」と結論づけた。さらに8月13日までに経営責任を明確化し、業務改善計画を提出するよう求めた。

   改善命令を受け、酒井隆常務が記者会見。「お客様、地域の皆さま、株主、関係する皆さまに多大なるご迷惑をかけ、心よりおわびする」と陳謝した。6月に頭取から代表権のない会長に退いた石井道遠氏らの経営責任が問われることになりそうだ。

   不正を招いた背景には、地銀最大手、横浜銀行との経営統合があるとの見方がある。統合を決めたときに頭取だった横浜銀・寺沢辰麿氏と、東日本銀の石井氏は、ともに旧大蔵省出身で国税庁長官経験者。だが規模、収益力、ブランド力など、何をとっても横浜銀が圧倒的に優位に立つ。東日本銀は統合に際し、少しでも自らを大きく見せようと、不適正融資に手を染めたとみられる。

   東日本銀は、「心のかよう『フェイス・トゥ・フェイス』の対応により顧客とのリレーションを大切にし、信頼されるパートナーとして地域社会に貢献する」のが企業理念だ。理念に沿った行動をとれるかが試されている。