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「優等生」のウラの顔 スルガ銀「驚愕パワハラ」の全貌

   スルガ銀行の不適切融資のとんでもない実態が明らかになった。この問題を調べていた第三者委員会(委員長=中村直人弁護士)は2018年9月7日、300ページを超える詳細な調査報告書を発表。多くの行員が審査書類などの偽装に関与したことを認定しただけでなく、パワハラの横行、コンプライアンスの欠如、経営陣の無策などを明らかにしている。業界きっての高収益で「地銀の優等生」とまで呼ばれたスルガ銀行には、深い闇が広がっていた。

   第三者委は今回、全行員(3595人)を対象にアンケート調査を実施。「ノルマ(融資実行残高目標)を厳しいと感じたことはあるか」との問いに、1423人(39.6%)が「はい」と答えた。投資用不動産などの営業に携わった行員(343人)に限ると、「はい」は299人(87.2%)に上る。

  • スルガ銀行の公式サイト
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「首をつかまれ壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴った」

   具体的な行員の声もいくつか紹介している。「毎月、月末近くになってノルマが出来ていないと応接室に呼び出されて『バカヤロー』と、机を蹴ったり、テーブルをたたいたり、1時間、2時間と永遠に続く。給料返せなどと、怒鳴られる」「ノルマが出来ないと夜の10時過ぎても帰れない。残業代など支払われるはずがない」「もともとの目標自体が非現実的な数字になっているにもかかわらず週刻みのラップ目標に達していないと、毎日のように追いかけられ会議では罵倒される」「7%超の無担保ローンを月に10億実行しろ」――などなど。

   「営業成績が伸びないことを上司から叱責されたことはあるか」との問いには、全行員の23.3%、不動産営業に限ると実に72.3%が「はい」と回答した。「『なぜできないんだ、案件を取れるまで帰ってくるな』といわれる。首をつかまれ壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴った」「数字が出来ないなら、ビルから飛び降りろと言われた」「チーム全体を前に立たせ、できない理由を言わされた。時間は2時間以上にのぼり支店の社員の前で給与額を言われ、それに見合っていない旨の指摘を受け、週末に自身の進退(退職)を考え報告を求められた」「死んでも頑張りますに対し、それなら死んでみろと叱責された」――。これが「地銀の優等生」の内実だ。

上から下まで蔓延した不正体質

   「パワハラ上司」に「厳しいノルマ」を課せられ、手を出したのが審査書類などの偽装だった。例えば投資家の収入関係資料を偽装して返済原資を多くみせていたほか、非現実的で高額な家賃を設定して、賃料収入を多く見せかける偽装も行われていた。偽装が疑われる件数は2014年以降795件あった。

案件をチェックする審査部門も機能していなかった。審査担当者は偽装などの問題点について早い段階から把握・認識していたが、営業部門から強圧的に「ごり押し」され、結局、押し通されていた。不動産ローン全般の審査承認率は、2008年度上期~10年度上期は80~90%で推移していたが、14年度下期以降は99%超と、ほぼスルー状態になっていた。

創業家の岡野光喜会長(9月7日付で辞任)ら経営陣は、取締役としての義務を果たさず、ガバナンスに問題があった。上から下まで蔓延した不正体質。信頼回復への道のりは厳しそうだ。