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太陽光生かし切れない実態 「出力制御」常態化なら未来は「暗い」?

   九州電力が、域内の太陽光発電事業者に一時的に稼働を止めてもらう「出力制御」を実施している。太陽光の出力制御は、離島を除くと国内では初めて。再生可能エネルギーの柱として、国を挙げて推進してきた太陽光だが、十分に生かし切れない実態が浮かんだ。

   電力は需要と供給のバランスが崩れると、周波数が乱れ、大規模停電が起きる可能性がある。北海道地震の際に起きた大規模停電は、火力発電所が停止し、供給力が不足したことによって起きた。今回の九電は反対のケース。供給過剰による大規模停電を防ぐため、出力制御に踏み切った、というわけだ。

  • 太陽光発電に未来はあるか
    太陽光発電に未来はあるか
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原発再稼働で「電気余り」

   初の出力制御が行われた10月13日は、最も余剰電力を多く生み出す時間帯の供給量を1293万キロワットと予測。これに対する需要は828万キロワットで、水をくみ上げて電力を消費する揚水発電所や蓄電に226万キロワットを回し、関門連係線を使って域外に196万キロワットを流しても、なお43万キロワット余ると試算した。これは、九電の再生エネ接続量の7%に当たる。契約を結んでいる2万4000件のうち、9759件に出力停止を要請した。気象状況を見て当日、実施を最終判断し、実際には再生エネ接続料の5.3%に当たる32万キロワットを停止した。

   背景には急速に増加する太陽光発電の増加と、原発の再稼働がある。日照条件が良い九州では、再生エネを普及させるという「国策」に後押しされて太陽光発電の設置が急速に進み、接続量は9月末時点で812万キロワットと、10年前の約25倍に膨らんでいる。さらに9月下旬には、これまで順次再稼働してきた佐賀県玄海町の玄海原子力発電所3、4号機と、鹿児島県薩摩川内市の川内原子力発電所1、2号機の4基(計414万キロワット)がそろって動き、九電は有り余る供給力を手に入れた。

   これまでは、火力発電所で細かな出力調整を行い、需給バランスを保ってきた。電力を本州に融通する手も使った。それでも、今回は足りなかった。

どこまで再生エネに「本気」になれるか

   冷暖房の需要が減って過ごしやすくなる春と秋の、工場などの事業所が休みになる土、日曜日に、天候が良ければ出力制御が常態化する可能性もある。実際、13日だけでは終わらず、14日以降10月の土、日曜日は出力制御を実施、または実施が検討。供給力が過剰だった場合、出力制御という手段を使うことは予め決まっているルールだから、事業者にとって「寝耳に水」というわけではない。だが、あまりに頻発するようだと、事業計画が大幅に狂ってしまう。

   国は太陽光などの再生エネを「主力電源化」する方針を掲げている。しかし現状のままだと、せっかく導入しても、うまく活用できない事態になる。九電だけでなく、他の大手電力も実施の可能性がある。

   このまま主力電源化を目指すなら、他電力に逃がす広域連係の拡充、安価な蓄電池の開発などが求められ、九電という一電力会社で解決できる問題ではないだろう。国の本気度が問われている。