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虫ケア用品で「猫に異変」ツイートが拡散 メーカー「副作用の範囲内の可能性」と説明も、確認のため調査へ

   ペット用品の開発・販売を手がける「アース・ペット」(本社・東京都港区)が販売する「薬用アース サンスポット猫用」について、使用したあとの猫に「異変」が起きたというツイートやアマゾンレビューが、ネット上で拡散している。

   ノミ・マダニ・蚊から猫を守るための動物用医薬部外品で、皮膚に滴下して使う。J-CASTニュース編集部は、猫の異常を訴えているツイッターユーザーに話を聞き、メーカーに見解を確認した。

  • 「薬用アース サンスポット猫用」(アース・ペットのサイトより)
    「薬用アース サンスポット猫用」(アース・ペットのサイトより)
  • 「薬用アース サンスポット猫用」(アース・ペットのサイトより)
  • アマゾンに寄せられたレビューの一部(アマゾンのサイトより)
  • 「薬用アースサンスポット猫用」(3本入り)パッケージ裏(2018年10月撮影)
  • 中には商品と取扱説明書(裏表1枚)(2018年10月撮影)
  • 取扱説明書の裏面(2018年10月撮影)

「薬を塗った部分がかぶれ...」

   あるツイッターユーザー(仮名:Aさん)が2018年8月27日、「薬用アース サンスポット猫用」を自宅で飼っている猫に使用したところ、5時間以上動き回ったり、呼吸が早まり鼻がぴくぴくしたりするなどの異変が見られたと報告し、注意を呼び掛けた。

   Aさんのこの投稿は10月25日ごろに急激に拡散され、31日18時時点で6万8000件超、リツイートされている。リプライ(返信)欄では、同じく商品を使用したというユーザーから、猫に現れた「異変」が続々と報告されている。

   J-CASTニュースは猫の異変を訴えた複数のユーザーにコンタクトをとった。朝に使用し、昼に異変に気付いたというBさんは、

「耳がずっとぴこぴこ動く、身体をピクピク動かす、落ち着かない、部屋のあちこちに移動する。薬を塗った部分を執拗に舐めようとする。翌日には薬を塗った部分がかぶれ、赤くなっていました」

と話す。その後、獣医に見せたというBさんは、「シャンプーして薬を流したい、薬だから浸透してしまうので落ち着くのに時間がかかるかもしれない」と医師に言われたという。

   また、Cさんは、首元が白く禿げてしまったという黒猫の写真を公開した。商品を使用した次の日には滴下した部分をとても痒がっていたといい、

「日に日に身体が痒いらしく(滴下した箇所が特に痒いようでした)毎日気になって様子を見ていましたら、滴下した部分が少しずつ禿げ始め、1か月過ぎた頃には白く禿げてしまいました」

と話した。

アース・ペット「健康な成猫であっても副作用は起きる可能性がある」

   上記で紹介した例のほかにも、Aさんの投稿には「異変が起きた」というリプライが多く寄せられている。アマゾンレビューでも、「毛が抜けました」「使用後、食欲不振で寝込む」といった書き込みが見られた。

   メーカーはこの事態をどう受け止めているのか。J-CASTニュースは10月31日、アース・ペットを取材した。

   取材にはマーケティング本部や、研究開発本部の担当者ら5人が応じた。「薬用アース サンスポット猫用」は2001年に発売。その後も改良を繰り返しており、現在販売しているのは2014年に開発したものだという。アマゾンでは現在、「薬用アース サンスポット猫用」(6本入り)が「現在お取り扱いできません」と表示されているが、この理由に関しては、「6本入りは18年春の時点で販売効率の問題で完全に販売終了(廃版)となっており、現在は6本入りと中身は同じであるが3本入りと1本入りのみ販売しているため」と説明した。31日時点で、3本入りと1本入りの商品はアマゾンでの取り扱いが確認できた。

   取扱説明書とパッケージには、首筋に2、3滴滴下するパッチテストを行った後、半日程度様子を見て異常がなければ、肩甲骨間の2点の皮膚に半分ずつ滴下するよう記載されている。また、パッケージには書かれていないが、老猫や体調不良の猫などには使用しないよう、6パターンのケースが説明書に書かれている。担当者は、肩甲骨付近への滴下を促しているのは「猫が舐め取りにくい場所だから」と話す。滴下された薬剤は皮脂にのって全身に拡散し、3~5日で全身に行きわたるという。

   さらに説明書には、パッチテストの時点で「皮膚が赤くなる、痒がる、通常と異なる症状」がある場合は、体表に広がった成分を取り去り獣医師に相談するよう記載されている。パッチテストで異常がなくても「よだれがでる、ひどく痒がる、皮膚が赤くなる、ひどく毛が抜ける、嘔吐する、ひどく興奮する、元気がなくなる、通常と異なる症状」が現れる可能性があることが記されている。

   J-CASTニュースが取材したケースや、ネット上の「報告」の中には、上記のパッチテストを行っていなかった、あるいは猫が高齢だった例もある。その一方で、初めて使う時にパッチテストを行い、その際は異常がなかったが、「3回目は異常が現れた」というAさん(猫は3歳)のようなパターンもある。

   担当者はツイッターやアマゾンレビューで挙げられている「異変」に対し、「副作用の範囲内である可能性がある」「猫の性格や特性は様々であり、健康な成猫であっても副作用は起きる可能性がある」と説明。副作用のほかにも、嘔吐は「滴下部分を舐めてしまい、異物と認識して反射的に吐き出すことがある」、毛が抜けたのは「滴下された部分に違和感があり、なめたり、掻いたりした可能性もある」と説明した。

会社独自に商品の検査を行い、「再度安全性を確認」

   ツイッターでは「薬用アース サンスポット猫用」にも使用されている、殺虫作用を持つ薬「フェノトリン」が原因ではないかとの指摘も出ている。和歌山県内にある動物病院の公式サイトでは以下のように紹介されている。

「アメリカでは『フェノトリン』を含むノミ・ダニ予防薬で多数の猫ちゃんが副作用を起こしたため、商品の回収や危険性に関する警告チラシやウェブなどで、猫が中毒にならないように情報の開示を行いました。そして現在では『フェノトリン』を含む猫用商品は販売されておりません」
「日本では『動物医薬品として農林水産省で認可された成分である』との理由で販売されております。この薬は経皮的に吸収される薬ですが、猫は異物が体に付着すると舐める習性があり、滴下された薬剤を経口的に摂取しより強い毒性が出ると思われます」

   この記述について、アース・ペットの担当者は、一部を否定。「経皮的にはほとんど吸収されない」「舐めた場合は反射で吐き出すか、飲み込んだ場合は体内の分解酵素で代謝されて、尿中に排出される。体内に残留する可能性は低い」と説明した。アメリカのペット用品メーカー「The Hartz Mountain Corporation」の事例が明るみに出た当時、すでに「薬用アースサンスポット猫用」を販売していていたアース・ペット(2017年7月までは「アース・バイオケミカル」)は、会社独自に商品の検査を行い、再度安全性を確認したという。実際、Hartz社の商品はフェノトリンの濃度が85%であるのに対しアース・ペット社の商品は35%とのことだ(含有率はアース・ペット社調査に基づく)。

「事実関係を確認するため、ネット調査を近々行う予定」

   とはいえ、ツイッターなどを見る限り、「異変」を訴えるケースが多すぎるのではないか。説明書も「舐めさせないよう注意してください」ではなく、「舐めさせないでください」と強く注意喚起した方が良いのではないだろうか―――。

   担当者は「薬用アース サンスポット猫用」に関して、「研究開発の段階で、安全性を評価し、農林水産省に申請を行い、審査を受け、販売の承認をいただきました」と話す。説明書に記載された副作用には発売後の安全性調査で判明したものも含まれており、注意喚起のため、商品・説明書ともに2001年の発売以降、改良を繰り返していると話す。

   担当者は、ツイッターで異変報告が拡散した今回の事態に関し、原因の1つとして「お客様とのコミュニケーション不足」の可能性もあると話す。「薬用アース サンスポット猫用」の安全性に関する電話での問い合わせの割合は、2014年を100とした場合、15年は113、16年は98、17年は93、18年(10月現在)は91だといい、ツイッターでの拡散は、今回の取材の申し込みを受けたときとほぼ同じ時期に知ったと話す。今後の対応については、

「まずは事実関係を確認するため、ネット調査を近々行う予定で、そのうえで決定する」

と話した。