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駅の撮り鉄への「注意喚起文」がどうも怪しい... 鉄道会社「当社のものではない」

   「自撮り棒、一脚、三脚、脚立等を使用しての撮影は終日禁止とします」などと書かれた張り紙が北大阪急行電鉄(北急、本社・大阪府豊中市)の駅構内に掲示されていたが、北急に確認したところ「当社が張ったものではない」と取材に話した。張り紙には北急の「ロゴマーク」もあり、何者かが勝手に北急の名をかたって掲示していたと見られる。

   張り紙はツイッター上で話題を集めていた。目撃された日は北急のクリスマスイベントが開催されており、1年に一度しか拝めない看板をつけた列車が運行。鉄道ファンのうち、いわゆる「撮り鉄」も注目する日だった。

  • ツイッターに投稿された桃山台駅の張り紙。だが北急が出したものではなかった(投稿者の許諾を得て掲載しています)
    ツイッターに投稿された桃山台駅の張り紙。だが北急が出したものではなかった(投稿者の許諾を得て掲載しています)
  • ツイッターに投稿された桃山台駅の張り紙。だが北急が出したものではなかった(投稿者の許諾を得て掲載しています)

「駅係員による三脚等の使用許可は一切ございません」

   北急・桃山台駅の張り紙画像は2018年12月18日、あるツイッターアカウントで投稿された。上部に大きく北急のロゴマークがあり、「鉄道愛好家の皆様へ」と題している。「駅員の注意・警告を無視してホーム上での危険な撮影、他のお客様の迷惑となるホーム上の場所取りや係員への罵声、を行う愛好家の皆様が大変多くいらっしゃいます」「当駅としても安全運行の妨げとなる判断せざるを得ません」(原文ママ)などとして、

「当駅では列車の撮影をする際の、自撮り棒、一脚、三脚、脚立等を使用しての撮影は終日禁止とします」

と赤地に黄色の文字で強調して書かれている。また、

「(三脚などの)使用を発見した場合や、手持ち撮影を行っている場合でも駅係員が危険と判断した時は、撮影までの待機時間・撮影位置にかかわらず直ちに撮影を中止していただきます」

と禁止を破った場合の措置も記載。「駅係員による三脚等の使用許可は一切ございません」と例外を認めていない姿勢も示している。

   最下部には18年12月付で「北大阪急行 桃山台駅」と社名・駅名が明記されている。ツイッター投稿後、「そんな奴らは鉄道愛好家でも写真愛好家でもない」「桃山台駅撮影禁止...!」など、張り紙の内容に反応する声が相次ぎ寄せられた。

   撮影されたのは「12月15日」としている。この日、北急では1日限りの「クリスマスフェスタ」が千里中央駅で開催され、先頭車両の正面部分に円形の特別な看板を取り付けた列車が使用された。終了後の15時ごろ、同駅から車庫のある桃山台駅に向かって運行され、年に一度しか拝めないこの列車を撮影しようと、鉄道ファンが桃山台駅に詰めかけた。

   だが、張り紙には奇妙な点がある。画像をアップしたユーザーの投稿によると、張り紙を撮った時、ある一般客から「(画像を)ツイッターに上げないで」と言われたうえ、列車の通過後に「その人が(張り紙を)剥がしとった」という。他のユーザーからも、「撮影禁止を告知する貼り紙はなかった」という声がある。

「社員でもない人が勝手に貼った自作自演説がありますね」

   不審な点はもうひとつ。文章とデザインがほぼ同じ張り紙が、以前から東武鉄道の南栗橋駅に掲示されているのだ。桃山台駅と異なるのは、最下部に「東武鉄道 南栗橋駅」と書かれていることと、文中の「北急行線」が「東武線」になっていることくらい。この東武鉄道の張り紙は18年10月付のもので、少なくとも11月19日に駅利用者が撮影しツイッターに投稿している。

   こうした点から、桃山台駅の張り紙について

「社員でもない人が勝手に貼った自作自演説がありますね」
「桃山台の張り紙どうみても家庭用インクジェット印刷で草。一企業がインクジェットプリンターなんて使うとは思えんのだが」
「妙に凝ってて自作にしてはクォリティー高すぎ...」

など、撮り鉄が詰めかけるクリスマスフェスタにあわせて、注意喚起しようとした一般人が、東武鉄道の張り紙を模倣して勝手に張り紙を製作・掲示し、イベント終了後すぐに剥がしたのではないか――という説が浮上した。

   J-CASTニュースが19日、北急の総務部に事実確認を求めたところ、

「当社が掲示した張り紙ではございません」

と回答した。やはり、北急の名前を騙る誰かが勝手に製作し、張っていたようだ。

   なお東武鉄道の張り紙についてJ-CASTニュースが同社広報部に聞くと、「南栗橋駅を含む管区が現場の判断で掲示しております」と同社で貼り出しているものだと確認できた。「愛好家の方々がたくさんお越しになる駅なので、安全上問題がないように」との理由だった。