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「劇場でフェンシング決勝」チケット完売 太田雄貴会長が進める「感動路線」の背景は

   2018年12月9日、ジャニーズ事務所のグループ会社が運営する劇場「東京グローブ座」(東京都新宿区)で「第71回全日本フェンシング選手権大会個人戦 決勝戦」が開催された。

   テレビ番組では「1000円でも売れ残っていた試合のチケットが、わずか40時間で完売した」と紹介されたが、なぜこのような結果に結びついたのか、日本フェンシング協会にその背景を聞いた。

  • ポスターは太田雄貴会長、直々のプロデュースだという
    ポスターは太田雄貴会長、直々のプロデュースだという
  • ポスターは太田雄貴会長、直々のプロデュースだという

「見たことがない舞台と演出」「緊張感を伝える面白い表示」

   かつてバラバラに行われていた各種目の決勝戦を1日に集結。会場に設置された大型LEDビジョンには選手の心拍数などが表示され、優勝した選手の家族にはインタビューが行われるなど「演出」にこだわった。さらに決勝戦の様子はAbemaTVで約5時間にわたって生中継され、ツイッターでは試合を見たと思われるユーザーが、

「視聴者側に緊張感を伝える面白い表示」
「見たことがない舞台と演出」
「会場のLEDが分かりやすいし、かっこいい演出ですね」

などと投稿している。このほか、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会広報局の高谷正哲さんも、「だいぶ雰囲気変わったな」とツイートしている。

   「変革」の立役者は、北京・ロンドン五輪の銀メダリストでもある、日本フェンシング協会の太田雄貴会長(33)だ。12月16日放送の「サンデーLIVE!!」(テレビ朝日系)では、太田会長とメインキャスター・東山紀之さんの対談が放送された。チケットはS席5500円、A席4000円、B席2500円で一般販売していたが、番組ではわずか40時間で完売したという。太田会長は「場所を変えるだけで人はお金を払う」と話し、スタジオでは東京五輪に向けても「会場の画面に流す得点シーンのリプレイ映像で、剣の軌道が見えるようにしたい」と考えていると明かされた。

フェンシング協会「見ごたえあるものを提供できた」

   J-CASTニュースは2018年12月19日、日本フェンシング協会専務理事の宮脇信介さんを取材した。

   すべての種目の決勝戦を1日にまとめることは前大会(第70回)でも行われていたが、これまで同大会の個人戦決勝戦は、予選会と同じく駒沢オリンピック公園総合運動場体育館(駒沢体育館)で行われることが多かった。今回、大会を劇場で行った理由には(1)来場者単価の引き上げ、(2)エンターテインメント性の強いスポーツとしてのクオリティー引きあげ、があるという。照明の幅が広がる、高いところから見下ろせるなど、体育館よりもできることがたくさんあるとのことで、「見ごたえあるものを提供できたのではないか」と宮脇さんは話している。

   しかし場所が変わったことによる悩みもあったようだ。駒沢体育館で行われた前大会は約1500人の来場者があったのに対し、東京グローブ座の座席数は約700席。宮脇さんは「メディアの方もあまり入れませんでしたが...」としながらも、

「第70回は収容人数、第71回はフェンシングの価値を高めることに重きを置きました。ねらいが変わりました」

と話している。今後も劇場で大会をやるかという問いには「会場の確約が難しいです。望むらくはより広い劇場をとれれば、見てる方にとっても価値が高めれるのですが...」と回答、広い劇場の確保は今後の課題のようだ。

就任早々「大会改革」に着手

   フェンシング協会のスローガンは「突け、心を。」。ツイッターでも話題となった大会の演出だが、何か意識したことがあったのだろうか。

「スポーツによくある勝利至上主義ではなく、やる人も見る人も感動させたいです。もちろん、勝利に魅力はありますが」

   宮脇さんはこう話す。劇場やAbemaTVで見た人からは「概ね好評」だといい、「我々の意図である『感動させるフェンシング』は成功ではないでしょうか」という。

   こういった変化は、太田会長の存在が大きいようだ。宮脇さんによれば、17年8月にフェンシング協会会長に就任して、最初に着手したのが「大会改革」だという。

   そのため、第71回全日本選手権大会のポスターや会場設定は会長直々のプロデュース。ポスターはフェンシングの見延和靖選手と東晟良選手を起用、写真家の蜷川実花さんが撮影した。宮脇さんによれば「ビビットなポスターで、年齢の高い層には抵抗がある方もいますが...」とのことだが、選手2人の躍動感あふれるポスターはインパクト大だ。