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なぜ、深夜の遊園地に「クロちゃん」見物客が殺到したのか その心理を分析する

   2018年12月26日22時から放送された「水曜日のダウンタウンSP」(TBS系)のコーナー「モンスターハウス」の企画、「真・モンスターハウス」が翌27日未明に中止となった。

   深夜の「としまえん」(東京都練馬区)に、人々が殺到したことによるものだが、なぜ視聴者が大挙したのだろうか。J-CASTニュースは、心理の専門家に話を聞いてみた。

  • クロちゃん(2018年撮影)
    クロちゃん(2018年撮影)
  • クロちゃん(2018年撮影)

午前2時36分にイベント中止がツイートされる

   12月26日の番組では、「モンスターハウス」の最終回を放送。主役を務める「安田大サーカス」クロちゃん(42)が意中の女性出演者に告白すべく、クロちゃんに思いを寄せる女性出演者を振るなどのシーンが放送された後、番組は生放送に切り替わり、「としまえん」からの中継が始まった。中継の最中には、クロちゃんの番組中でのこれまでの行いをテーマに「許せる」「許せない」の2択で、データ放送のdボタンによる投票を実施。結果、95%の視聴者が「許せない」を選択し、罰ゲームとして「公開収監」を執行することとなった。

   番組終了後の27日午前0時過ぎから、同園で檻の中のクロちゃんの公開を開始。しかし、クロちゃんを一目見ようとする視聴者が大量に押し寄せたため、午前2時36分に同番組はツイッターでイベントの中止をアナウンスした。檻の周辺は大量の視聴者でごった返したほか、周辺道路が大渋滞を起こすなどしたため警察が出動する騒ぎとなったほか、27日正午のNHKニュースでは「大勢の若者など集まり中止に」との見出しで報じられた。

   人気番組の生放送で呼びかけられたイベントへの参加だけに多数の人が集まるのは当然だが、イベントの開始が午前0時過ぎと鉄道などの公共交通機関の営業終了間際の時間帯であるにもかかわらず、大量の人が押し寄せる結果となった。野次馬根性は当然として、ここまで多数の視聴者が殺到する結果となったのはなぜだろうか。

視聴者が「当事者意識」を持ったのが原因か

   J-CASTニュースは18年12月27日、経営コンサルタントで心理学博士の鈴木丈織氏に話を聞いてみた。

「通常、視聴者はテレビ番組との距離感をきちんと意識した上でテレビを見ています。しかし、今回は『普段は収録放送の人気番組が生放送されていて、しかも、イベントへの参加を呼び掛けている』という状況が発生したため、『行かなければならない』という当事者意識が視聴者の心に発生したと思われます。また、放送日の26日はクリスマスの翌日ですから、クリスマスを無為に過ごしてしまった人が当事者意識を高揚させ、充実感を得るべく行ってしまった可能性は否定できません」

   また、クロちゃんが「炎上キャラ」であることも、視聴者を殺到させた原因だという。

「『クズキャラ』である以上、視聴者が日頃抱いている不満をぶつける対象としてはこの上なく適任と言えるため、クロちゃんを見に行くことが『ストレス解消』になった可能性は高いです。しかも、クロちゃんを許すか否かの投票結果が95:5で『許さない』という極端な結果ですから、安心して叩き目的で見に行くことが出来ます。『檻に閉じ込めて晒し者にする』という演出は『ガス抜き』の要素が十分にあります」

   一方で、鈴木氏はクロちゃんの巧みさも指摘する。

「芸能人や公人を晒し者にするのは、正に、祭りの『生贄(いけにえ)』そのものです。今回、クロちゃんは自ら『生贄』となるべく視聴者を煽っていた感すらあります」

   晒し者見たさに集まった視聴者だが、『生贄』となったクロちゃんに乗せられていた可能性もあるようだ。

(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)