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ギフト券「100億円分」プレゼント! 泉佐野市ふるさと納税に、菅官房長官「良識のある対応を」

   2000円の実質負担で、特産物などが手に入る「ふるさと納税」。なかには還元率が高いものや、使い勝手のいいポイント類を用意する自治体もあり、さながら情報戦になっていたが、総務省の要請により、2019年に入って「高還元返礼品」の多くは姿を消した。

   そんななか、政府方針に逆行するように、Amazon(アマゾン)で使えるギフト券を総額100億円分還元するという自治体が現れた。ふるさと納税に、いま何が起きているのか。

  • 菅官房長官(2017年撮影)
    菅官房長官(2017年撮影)
  • 菅官房長官(2017年撮影)
  • 特設ページでは、八島弘之副市長のイラストが「お辞儀」(「さのちょく」より)

6月以降は規制が厳しくなる

   ふるさと納税をめぐっては、総務省が「返礼率」と「返礼品」の両方で、自治体に揺さぶりをかけている。2019年度の税制改正大綱(18年12月閣議決定)では、6月1日以降の寄附金は「返礼品の返礼割合を3割以下とすること」「返礼品を地場産品とすること」が基準として定められた。

   これを守らなければ、総務相が控除対象の指定から、その自治体を外せるようになる方針だ。あわせて政府は、根拠となる地方税法改正案を通常国会に提出する予定。つまり、大盤振る舞いが許されるのも、あと4か月弱となる。

   それを逆手に取って、「閉店キャンペーン」と銘打っているのが、大阪府泉佐野市だ。2月1日から市運営の納税サイト「さのちょく」で、Amazonギフト券を「100億円還元」している。返礼品の配送時期により、10~20%のギフト券がプレゼントされるもので、返礼品に「皆さまへ感謝の思い」としてのギフト券が上乗せされる形をとることで、実質的な還元率が高められている。

泉佐野市は、総務省から「名指し」で批判されてきた

   泉佐野市は財政難への対策として、ふるさと納税を活用。ここ数年は受け入れ額上位の常連になっているが、総務省から名指しで批判され続けてきた。総務省はここ半年ほど、返礼割合が3割を超える自治体、いわば「ブラックリスト」を定期的に発表している。その代表例が泉佐野だった。

   総務省の調査によると、18年9月1日時点で、3割超の返礼品を送っているのは246自治体。それが12月28日には52自治体まで減少した(この調査では「実質3割超」との表現)。そのうち「閉店キャンペーン」のように、自治体が経費負担したポイントにより、実質的に3割を超えたのは30自治体だった。

   その後、税制改正大綱が決まり、多くの自治体は18年末をもって、高還元率の返礼品の取扱いをやめている。たとえば静岡県小山町は、返礼率4割でAmazonギフト券を送付していたが、後に返礼品から除外した。なお石田真敏総務相は19年1月11日の会見で、小山町の例は、法改正までの「制度的な隙間」をついたとして、「決して良識ある行動とは思えません」と非難している。

一方、納税サイトはつながりにくく...

   今回の泉佐野市キャンペーンは、そんな総務省と正反対の姿勢を取っている。ネット上では「お得だ」と歓迎する人は多いが、やはり政府は看過できないようだ。菅義偉官房長官は2月6日午後の会見で、キャンペーンについてどう思うかとの質問に対して、

「ふるさと納税は、ふるさとへの絆や、頑張っている地域を応援したいという気持ちで、納税者がその(納税)先を選べる制度だと思っています」
「それぞれの(地方公共)団体において、制度の趣旨を踏まえた、良識のある対応を行っていただきたい」

などと話した。

   各地が返礼率を下げるなかとあって、各社に報じられた6日には、「さのちょく」のサーバーにつながりづらい状況が長時間続いた。期間は100億円を使い切るまでか、3月31日までの予定だが、この捨て身のキャンペーンが、他の自治体に波及するか注目だ。