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スポーツ団体に続く金銭トラブル 共通するのは「長期政権」の弊害か

   日本のスポーツ界で団体幹部による金銭トラブルが相次いでいる。ボクシング界では2018年8月に日本ボクシング連盟の山根明前会長(79)が、助成金の不正流用問題で会長職を辞任。今年2019年1月にはフランス司法当局が、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恆和会長(71)に対して2020年東京五輪招致に絡む贈収賄の疑いをかけ捜査を決定したとの報が。

   そして2月28日には一部週刊誌が、大学球界の名門・青学大野球部の河原井正雄前監督(64)がOB会、父母会に使途不明金を告発されたと報じている。

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いずれも業界の「ドン」として君臨

   競技は異なるものの山根氏、河原井氏の両氏に共通するのは、それぞれの世界で「ドン」と言われた存在であること。山根氏は日本ボクシング連盟の理事を経て2011年2月に会長に就任し、翌2012年10月には「終身会長」に収まっている。会長職を辞任するまでの8年間、連盟のトップに君臨し続け、自他ともに認めるアマチュアボクシング界の「ドン」として大きな影響力を持っていた。

   一方の河原井氏は1987年に青学大の監督に就任し、元ソフトバンクの小久保裕紀氏(47)、ロッテの井口資仁監督(44)ら多数のプロ野球選手を育て、監督としては歴代2位となる4度の大学日本一を経験している。2014年に一度、監督を退任しているが2017年に監督に復帰。一部週刊誌の報道によると、今年1月には自身の「派閥」の後輩を後任に据え、盤石の態勢を敷いていたという。

   河原井氏の使途不明金の金額は不明だが、山根氏に関して日本ボクシング連盟が過去3年間の会計を精査したところ、2400万円もの使途不明の支出が発覚。海外遠征や強化合宿の際に支払われた交通費、日当などの領収書がないケースが多々あったという。また、都内の事務所からは目的不明の領収書が多数発見されたとの報道もあった。

五輪控え「新たなトラブル」懸念する関係者

   上記のものとは異なるケースで、金銭問題が発覚したスポーツ競技団体も。2018年8月に、全日本剣道連盟において昇段審査の際の不正な金銭授受問題が発覚した。同連盟が統括する剣道、居合道、杖道(じょうどう)のうち、居合道部門で長年にわたり段位・称号取得の際に金銭授受が横行していた事実が関係者の告発によって表面化。昇段審査で受験者から審査員に100万円単位の謝礼が渡されることもあったという。

   居合道の昇段審査は、剣道とは異なる審査方法を用いて行われる。1対1の対戦方式で行われる剣道とは異なり、居合道の場合は審査員が演武の内容を評価するもの。このため昇段審査において審査員の主観が入る恐れがあり、以前から客観性に欠けるとの指摘もあった。加えて、審査員の入れ替わりがあまりないことから、これらの要因が不正につながったとの見方もある。

   このようにスポーツ競技団体にまつわる金銭トラブルの陰には、団体トップの長期政権による「独裁」の現実が見えてくる。五輪出場の経験を持つアマチュアスポーツ関係者は「今はだいぶ改善されてきましたが、団体によってはまだ古い体質を引きずっているところもある。団体のトップが長期政権を築いているところほど、お金に関してあまりいい噂は聞きません。東京オリンピックのイメージのためにも今後、新たな金銭トラブルが出なければいいですけど...」と不安をのぞかせる。

   任期途中で急逝した八木祐四郎前会長から2001年10月にJOC会長職を引き継いだ竹田会長。JOC会長として歴代最長となる「長期政権」を築き、2020年東京五輪の誘致を成功に導いた立役者でもあるが、同五輪招致をめぐる贈収賄問題はいまだ燻ぶったまま解明には至っていない。