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ポンと連れて来られ、「ここでやってよ」と放り出される... 数字だけでは進まぬ外国人雇用の「現場」

   2019年4月1日から外国人労働者の受け入れが拡大されるのを前に、法務省が日本で暮らす外国人(在留外国人=3か月超の在留資格を有する人や、在日韓国人などの特別永住権を有する人)の数を発表。18年末時点で、273万1093人となり、4年連続で過去最多を更新した。

   なかでも、在留資格が「技能実習」の外国人は前年末と比べて9.7%、5万4127人増の32万8360人となり、初めて30万人を突破した。数字のうえでは、外国人労働者は深刻な人手不足に見舞われる国内企業の「救世主」になりそうだが、本当に政府の思惑どおりに運ぶのだろうか――。

  • 建設現場で働く外国人労働者は増えるのか?(写真はイメージ)
    建設現場で働く外国人労働者は増えるのか?(写真はイメージ)
  • 建設現場で働く外国人労働者は増えるのか?(写真はイメージ)

町の喫茶店で外国人シェフを雇う?

   2018年12月、在留資格に「特定技能」(人手不足が著しい建設業や宿泊業、外食業、介護、飲食料品製造などの14業種)を設けるなど、新たな外国人の受け入れを促進する「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立。19年4月1日から施行される。

   法務省のホームページには、すでに特定技能に係る「特定技能運用要領・様式等」を公開。申請手続きを案内している。外国人労働者の受け入れ規模は、特定技能にあたる14業種で、2019年度に3万2800~4万7550人とされ、19年度から24年度までの5年間に最大34万5150人を見込んでいる。

   日本でインド料理店と旅行代理店を経営するインド人のバッド・ロマッシュさんは、「外国労働者を積極的に受け入れることは喜ばしいこと」としたうえで、「ただ、(数値目標の達成は)そんなに簡単なものではないでしょう」とみている。

   ハードルの一つは、仕事に「制限」があること。たとえば、ある食料品の製造・販売会社に、外国人が勤めることになった。しばらく販売員として働いていたが、工場勤務に異動させたい。ところが、食品製造は特定技能での受け入れに当たるため、やらせる仕事が制限される。つまり雇った外国人労働者を機動的、効率的に働かすことができない可能性があるわけだ。

「町の喫茶店では、日本人であればアルバイトが軽食を作ったりできますが、この場合、料理を作らせるとなると外国人のシェフを雇う必要が出てくるかもしれません。でも、そうなると雇う側はおそらく外国人は手間がかかる、面倒だということになります。雇われる外国人も、実態にあわない仕事をやらされるのはイヤですから」と、バッドさん。「日本人がやったほうがいい作業は日本人がやるべきで、外国人ができることを外国人がやる。それがいいと思います」と話す。

「仕事のことはきちんと教えても、生活のことは知らない」

   こんなトラブルもある。外国人材を仲介する、ある人材派遣業者によると「東京都内での研修後、地方の工場に派遣する外国人労働者のうち、何人かは1週間ももたない」と、明かす。

「東京があまりに便利なため、地方での住まいと工場の往復だけの暮らしがイヤになってしまうんですね。なかにはいなくなってしまう外国人労働者もいる。もちろん、放っておけないので、連れ戻しに出かけなければなりません。そのコストはバカになりません」(人材派遣業者)

 

   前出のバッドさんは、「働くということは、そこで暮らすことです。生活習慣はもちろん、文化や習慣の違いは日本人と外国人とでは雲泥の差があります。ここが一番の問題。外国人労働者の場合、数人で一緒に暮らしていることが多いのですが、ポンと連れて来られて『はい、ここでやってよ』って放り出されちゃう。仕事のことはきちんと教えても、生活のことは知らないっていう感じです」という。

   法務省が2019年3月22日に発表した「平成30年末現在の在留外国人数」で、都道府県別の在留外国人数をみると、最多は東京都の56万7789人で、前年末と比べて5.6%、3万287人の増加。全国の20.8%を占める。

   次いで、愛知県の26万0952人(前年末比7.4%増)、大阪府の23万9113人(4.7%増)、 神奈川県の21万8946人(7.1%増)、埼玉県の18万762人(8.1%増)と続く。

   バッドさんは、東京・西葛西に住んでいる。ここ西葛西は「インド街」が形成されるほど、インド人が多く住む町。このほか、自動車工場が集積する群馬県太田市のブラジル街や、埼玉県川口市の中国街などが有名だが、こうした「コミュニティ」が必要と指摘する。

「セーフティーネットという意味でのコミュニティが必要で、ここを行政や企業が主体的に進めてもらえれば、定住する外国人労働者も出てくると思います」

ベトナムからの労働者が急増

   法務省の「平成30年末現在の在留外国人数」によると、在留外国人数は2018年末時点で273万1093人。17年末より6.6%、16万9245人増えた。男女別でみると、女性が140万3200人、男性が132万7893人でそれぞれ増加した。

   在留資格別でみると、「永住者」が77万1568人で、前年と比べて3.0%、2万2377人の増加と最多。次いで,「留学」が33万7000人で8.2%、2万5495人増。「技能実習」が32万8360人で、19.7%、5万4127人も増えた。「技術・人文知識・国際業務」に当たる外国人も19.3%増の22万5724人と、大きく増えた。「特別永住者」は2.5%減の32万1416人。

   また、国籍・地域別でみると、1位は中国の76万4720人で、前年末から4.6%増えた。在留外国人全体の28%を占めている。次いで、韓国の44万9634人 (全体の16.5%) で、前年末比0.2%減。3位のベトナムは、前年末から26.1%増の33万835人 (同12.1%)と急増した。

   増加が著しい国・地域は、ベトナムのほか、ネパールが11.1%増の8万8951人、インドネシアが12.7%増の5万6346人だった。

   2018年末時点で、ベトナムからの技能実習生は16万4499人で、前年から33.1%と急増。技術・人文知識・国際業務の当たる人も57.6%増え、3万4752人となった。ネパールからの技能実習生は257人と少ないが前年比で43.6%増。インドネシアのそれは22.9%増の2万6914人と、大きく伸びた。