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減速中国市場で日本車健闘 元気な「部品」が支える構図

   中国では2018年の新車販売台数が28年ぶりの前年比マイナスとなり、19年1~3月期の動きも引き続き低調だ。当局は消費刺激策を打ち出しているものの、需要回復にはまだ時間が必要とみられる。その中で注目を集めているのが日本車各社の健闘だ。19年4月25日まで1週間余り上海で開かれた上海自動車ショー(上海国際自動車展覧会)を取材したのを機に、その背景を考えた。

  • 上海自動車ショーで日立AMSの展示を見る人たち
    上海自動車ショーで日立AMSの展示を見る人たち
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今年になっても続く好調

   数字を抑えておこう。18年の中国全体の新車販売台数は約2808万台で、前年比2.8%減った。19年最初の3カ月間も前年同期比で1割以上の減り方が続く。欧米各社の販売落ち込みも鮮明な一方、日本勢は逆に、昨年からずっと好調が続く。上海でのトヨタの発表によれば、トヨタ車の中国での18年販売台数は147万5千台で前年比14%増えた。今年1~3月期も前年同期比7%増と増勢を保った。日産の広報責任者によれば、同社の18年販売台数は約156万4千台で、前年比2.9%増。広東省広州市で操業する三菱自動車の売り上げは約14万台で、15%増えた。同社担当者は「今年も過去最高の売り上げが望めそうだ」と明るい表情だった。

   昨年来の中国自動車市場全体の冷え込みの背景として、アメリカとの貿易摩擦も相まった経済の先行き不安、17年に起こった減税打ち切り前の駆け込み需要の反動といった要因が指摘される。では、なぜ日本車は中国で元気なのだろう。

   この視点から上海の自動車ショー会場を取材した私は、日立製作所系の部品会社「日立オートモティブシステムズ(日立AMS)」の展示会場で、ヒントをつかんだ気がした。「部品会社」が元気だから、車メーカーも元気なのではないか――。

「巧」のこだわりが集約されている......

   会場では、自動運転と電動化の最新技術と製品の展示に、これまでよりも力が入れられていた。最も目立つところにある、燃費を向上させる「高効率エンジンシステム」の紹介を見ると、部品会社といってももはや単なる「部品」だけでなく、トランスミッション制御など様々な制御システム、吸排気、燃料、点火などなど様々なシステムを統合させ、それらを一括して完成車メーカーに供給している存在であることがよく分かる。中国人記者からすれば、その技術には日本の「巧」のこだわりが集約されているように思えた。実際中国の部品メーカー幹部が何人も、日立AMSの担当者に対して、興味深そうに質問攻めにしていた。

   同社が進める自動運転システムに関する展示も関心を集めていた。同社中国法人の営業技術部門マネジャー、謝軍氏は私に、「私たちのシステムの最大の売り物はブレーキ制御ユニットです」と語った。その品質がどれだけドライバーの疲労を減らすか、車の事故を減らすかも、熱っぽく説明してくれた。自動運転時代が本格的に到来すれば、こうした先行投資、先行研究が大きな果実を生み、同社の製品が供給される「日本車」の商品価値もさらに高めていくのだろう。

   同社は昨年、ホンダと共同出資して、普及価格帯の電気自動車(EV)向け駆動モーターを製造する体制を整えた。資本金の51%を同社が出資して主導権を握り、ホンダ以外のメーカーからの受注も狙う。背景には、中国で今年から、EVなど新エネルギー車の生産を自動車メーカーに義務づける制度が導入されたこともある。需要の一層の拡大が見込まれる一方で、中国の車メーカーは、心臓部の駆動モーターなどの開発、調達が、自前ではできない現実がある。商機なのだ。

   日立AMSの17年の全世界の売上高は1兆円を超えた。それだけの規模の「部品会社」は例外的で、この規模があって初めて、大規模生産や大胆な研究開発や投資が可能なのかもしれない。ただ、中国側が及ばない技術やサービスを誇る日本企業は確かに存在し、その優劣は中国市場で的確に評価されるようになっている。それは、規模の大小にかかわらず、また自動車分野に限った話ではないと私は考えている。

(在北京ジャーナリスト 陳言)