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潮田氏が「黙って引き下がるとは思えない」の声も... LIXILの乱、これで「決着」したのか

   経営陣の内紛が続いた住宅設備大手LIXIL(リクシル)グループ。社長兼最高経営責任者(CEO)の座に就いたのは、「追放」された「プロ経営者」、瀬戸欣哉氏だった。

   2019年6月25日開かれた株主総会で取締役の多数を制した瀬戸氏。2018年10月に社長兼CEOを「解任」されてから8カ月での復活だ。

  • LIXILは再び「一つ」になれるか(Rs1421さん撮影、Wikimedia Commonsより)
    LIXILは再び「一つ」になれるか(Rs1421さん撮影、Wikimedia Commonsより)
  • LIXILは再び「一つ」になれるか(Rs1421さん撮影、Wikimedia Commonsより)

「きょうからワンリクシル」強調

   瀬戸氏は総会後の会見や報道各社のインタビューで、「きょうからワンリクシルだ。ノーサイドで進めていきたい」と述べる一方、会社提案と株主提案で選任された計14人の取締役の削減を目指す考えを示すなど、プロ経営者として早くも独自カラーを打ち出す構えを示す。株主提案で再任された瀬戸氏が、会社提案の取締役とどこまで融和を図れるか。

   リクシルは旧トステム、旧INAXなどが経営統合して誕生した。このうち、旧トステム創業家出身の潮田洋一郎氏(株主総会で会長兼CEOを退任)が2018年10月に瀬戸氏を事実上解任したのに端を発した内紛が勃発。株主総会に向けて潮田氏の意向を反映した会社側が取締役候補8人を提案。これに対し、瀬戸氏と、旧INAX創業家出身の伊奈啓一郎取締役らが株主提案として8人の候補を立て、多数派争奪戦を展開した。

   総会では、会社提案8候補のうち、議決権助言会社が反対を呼びかけた2人が否決され、6人が可決。瀬戸氏を含む株主提案の8人(会社提案との重複2人を含む)は全員が可決され、取締役は計14人になった。総会後の取締役会で瀬戸氏が社長兼CEOに就任した。

早くも「火種」の可能性も?

   瀬戸氏は報道各社のインタビューで「取締役は5人から9人程度が適当だと思う」と述べ、将来的に削減していく考えを示した。取締役会の決定のスピードを上げるには、14人は多すぎるという考えのようだ。しかし、株主提案、会社提案の取締役のうち、どちらを何人減らすかによっては、経営陣内の新たな火種になる可能性がある。

   瀬戸氏は株主総会後の記者意見で「(会社のためなら)取締役会で率直にけんかしてもよいと思っている」とも述べた。報道各社から「会社提案の取締役と融和を図れるのか」との質問に答えたものだが、取締役の削減方針と合わせ、今後の取締役会で波紋を呼ぶ可能性はある。

   ただ、株主総会で瀬戸氏の取締役選任に賛成票を投じた株主は全体の53%に過ぎない。満場一致の信任を得られたわけではないのだ。この現実を踏まえ、会社提案の候補から取締役会議長に就任した松崎正年コニカミノルタ取締役は記者会見で「株主総会の結果、瀬戸さんはCEOとして支持されたが、会社提案の取締役が6人も選任されたということは、社外の目で瀬戸さんの経営を監督してくれという株主の意思と解釈した」と、瀬戸氏をけん制する発言をしている。

   記者会見で瀬戸氏は「松崎氏らと一緒にやっていけると思う」と述べたが、瀬戸氏は潮田氏らが主導して指名委員会が選んだ松崎氏ら会社提案の取締役候補に疑義を呈してきたこともあり、取締役会で融和を図れるかは不透明だ。

手腕が問われるのはむしろこれから

   住友商事出身の瀬戸氏は、工具のインターネット通販会社「MonotaRO(モノタロウ)」で社長、会長を務めた経営手腕が買われ、潮田氏が2016年6月、社長兼CEOに就けた。しかし、海外戦略などをめぐり潮田氏との対立が表面化し、2年余りで事実上解任された。この時、潮田氏が会長兼CEOに就任したが、海外機関投資家に不透明と指摘され、退任表明に追い込まれた経緯がある。

   伊奈氏が瀬戸氏側に付いたことから、旧トステム、旧INAXの対立をはやす向きもある。潮田氏は今もなお、リクシル株の3%を持つ大株主だけに、「このまま黙って引き下がるとは思えない」(全国紙経済部デスク)というのが大方の見方。社内の対立をいかに収めていくか、瀬戸氏の手腕が問われている。