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れいわ舩後・木村氏は「フロンティア」 自民・武井氏が「重度訪問介護」費用負担を評価する理由

   重度障害のある参院議員2人の介護費用を、参議院が当面負担することを受け、一部から「国会議員だけ特別扱いするのか」「重度障害者だけの特殊ルール」などと非難する声が上がっている。

   こうした中、与党・自民党の武井俊輔衆院議員(44)は、参院の費用負担について「評価されて然るべき」などとツイッター上で主張している。J-CASTニュースでは、武井氏に話を聞いた。

  • 「お2人の議員活動の後ろには間違いなく道ができる」と話す武井議員(2019年8月2日編集部撮影)
    「お2人の議員活動の後ろには間違いなく道ができる」と話す武井議員(2019年8月2日編集部撮影)
  • 「お2人の議員活動の後ろには間違いなく道ができる」と話す武井議員(2019年8月2日編集部撮影)

「政治家は行政官ではない」

   「れいわ新選組」に所属する筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦(ふなご・やすひこ)(61)、重度障害のある木村英子氏(54)両議員は、障害者総合支援法に基づく「重度訪問介護」を利用しているが、厚労省はこの制度の適用範囲を「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除く」としている。そのため、議員活動中に多額の自己負担が発生する可能性があったが、参議院運営委員会の理事会で、必要な介護費用を負担することが決まった。

   決定を受け、日本維新の会の代表・松井一郎大阪市長は2019年7月30日、ツイッターを更新し、「その他の就労中の障がい者の皆さんと比べて、公的支援優遇となります」と主張。大阪府の吉村洋文知事も31日、ツイッターで「重度障害者だけの特殊ルールを作るわ、全部税金じゃないか」などと批判した。

   一方、武井衆院議員は31日、ツイッターで、参院の費用負担について、与党議員でありながら前向きな意見を述べて、注目を集めた。武井氏は、松井氏の主張について「懸念、反対の意見が多く出ています」としつつも、「今回の参議院の判断は評価されて然るべきだと思っています」とし、

「当面負担、とあります。すなわち永久的にそうするということではなく、会派政党の負担のあり方なども含め、実際に議会活動が始まる中で不断の検討があるということです」
「まだ議員活動も始まらないうちから『高額所得者になったのだから返上しろ!』などというのはバッシングに等しく、これでは重い障害の方が政治に一歩踏み出すことは難しくなってしまいます」
「今回の2議員の当選は、日本の憲政史上画期的なことだと思います。もう少し寛容な心で見守ることができないのか、と心から思います」

などと投稿した。

   また、吉村知事が「参議院議員の重度障害者だけの特殊ルール」として反対したことについては、

「あくまでも当面の間の措置であり、まだ2議員の議員活動は始まっておらず、これから活動の中で様々な見直しはされていくことになるでしょう。維新の会の主張は、確かに論理的には一理ありそれらの意見に賛成の声も多くあるでしょう。しかし我々は政治家は行政官ではないのです。感性を豊かにして考えなければならないと私は思います」

などと主張した。

武井議員「党派を超えて院としても国としても非常に重要」

   一連のツイートの背景には、どんな思いがあったのだろう。J-CASTニュースは8月2日、都内で武井議員に改めて話を聞いた。

「お2人が議員になったことは憲政史上、大変すばらしい。党派を超えて院としても国としても非常に重要です。重度訪問介護の件などさまざまな課題はありますが、できるだけ環境の変わらない形で活動していただき、その中で課題を1つ1つ改めていけばいい」

   武井議員は、ALSを患う友人を数カ月前亡くしたという。

「どれだけ心が強いのかなと思いました。自分がALSと診断を受けたら、どういうふうに思うんだろうなと。舩後さんのような方が選挙に出て当選して、議員活動を始める。それだけでも本当にすばらしい」

   一方で、参院の費用負担を非難した「維新」の2氏には、次のように提言した。

「彼らが『保守政治家』であれば、こういう方の新しい一歩を温かく見守ることはお金の浪費とも思わないでしょう。ネットは社会を分断してしまうので、政治家は煽るようなことをしちゃいけない。これを言えば、どういうふうに人が感じるかまで思いを致して、発言しなきゃいけない。自分たちのなかでは当たり前なことでも、違う立場の人、障害やハンディキャップがある人、外国にいる人が見たらどう思うのか、どう影響を与えるのかを考えなきゃいけない。その人の歩みに思いを致せない政治は、少なくともわたしの思う懐深い『保守』ではないです」

   「保守政治」の在り方について、武井氏は次のように述べた。

「保守政治は温かく見守る、でっかい客船みたいなものです。人間は完璧ではない。誰だって負の感情や、鬱積したものもあるが、われわれ与党の政治家が劣情を煽るようなことは厳に慎まなきゃいかんのですよ。自分も不完全な人間だし、いつ、どういうハンディを負うかもわからないじゃないですか。社会は不条理なことだらけで、そういう中でもあらゆる人が日本に生きてよかったなと思えるようであってほしい」

   「通勤中」に重度訪問介護による公的介助を受けられないことを問題視する意見もある。

「議員活動は特殊ですから、前向きに『通勤の定義』について議論していくことは非常に大事です。最終的に議論が決まれば、それに従うことも極めて常識的だと思いますから。障害者の権利条約との関係なども加味したうえで、じっくり議論をしていくことはいい。ただ、(障害者総合支援)法が想像だにしていなかったことが起こった自体、お2人が議員になったことは価値があるんです」

   舩後・木村氏は参院だが、武井氏の所属する衆院の「バリアフリー化」については、どう考えているのか。

「シミュレーションはやっておく必要がある。ALS、脳性麻痺以外の障害の方が来られるかもしれない。参議院の取り組みをよく研究して、もしそういう方が衆議院で議員活動を始めることがあれば、その知見もしっかり生かして対応していくことでいいんじゃないかと」

   政治家のあるべき姿についても聞いてみた。

「あんなにハンディを負った人が国会議員になった。どれだけ覚悟を持った、すごいことなのかと。少なくとも政治家であれば、それだけで無条件にすばらしいと思うでしょう。新しい道を開く人に、敬意を表さない社会に発展なんかない。彼らはフロンティアなんですよ。そういうことをもっと大事にしてあげる社会に政治家はしなきゃいけない」

(J-CASTニュース編集部 田中美知生)