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公開価格「1500円」まであと少しだが... ソフトバンク株価、揺れる投資家心理

   ソフトバンクグループの国内通信子会社、ソフトバンクの株価が自社株買いの発表をきっかけに上昇基調にある。

   2018年末の上場時の初値を超え、これまで一度も上回っていない公開価格に接近した。業績も堅調だが、含み損を抱える個人投資家の売り圧力もあり、公開価格を突破できるかは見通せない。

  • ソフトバンク株価の行方は(イメージ)
    ソフトバンク株価の行方は(イメージ)
  • ソフトバンク株価の行方は(イメージ)

ストックオプションに備えた自社株買い

   上場後初の自社株買いを発表したのは7月24日。4600万株、740億円を上限に市場から買い付ける。取得期間は8月6日から来年3月末まで。4600万株は発行済み株式総数の0.96%に相当し、それなりに規模は大きい。ただ、今回の自社株買いでソフトバンクは株を買い付けた後にその株を消却せず保管し、ストックオプション(新株予約権)の権利行使に伴い交付する株式にあてる。

   ソフトバンクは2020年4月から権利行使できるストックオプション(最大1億1700万株相当)を役員や従業員に与えており、これに備えるものだ。つまり、権利行使された時に株式の価値が希薄化してしまうのを防ぐために自社株買いで買い付けた株を付与するというわけである。ストックオプションを扱う会社ではよく使われる手法だが、自社株買い後に消却されるケースのようには1株当たりの価値が増えない。

   ただ、市場に流通する株が減ることで需給が引き締まり、株価が上昇するとの見方が市場に広がり、実際に株価は上昇した。7月25日には一時、前日終値比1.6%(23円)高の1466円50銭まで上がり、2018年12月19日の上場時の初値(1463円)を上回り、その日に記録した上場来高値(1464円)を約7カ月ぶりに更新した。その後も高値更新が続き、8月7日には一時1480円台を突破した。

証券会社も見方分かれる

   それでも公開(売り出し)価格の1500円にはなおギリギリ届かず、「上場後一度も公開価格を上回ったことがない」という状況は続いている。これについては上場後初の6月の株主総会で株主から不満の表明が相次ぎ、宮内謙社長が陳謝する事態となった。新規公開で売り出されたソフトバンク株は総額2兆6000億円と過去最大級で、9割弱が個人に販売されたとされている。その人たちがいきなり抱えた含み損が解消されないのだから、不満も募ろうというものだ。

   もっとも、ソフトバンクの業績は堅調だ。2019年3月期連結決算(国際会計基準)は売上高が前期比4.6%増の3兆7463億円、純利益は7.5%増の4307億円と増収増益。ソフトバンクは配当性向が高いことが投資家に人気なのだが、2019年3月期は41.7%。つまり純利益4307億円の4割超の配当金総額1795億円を株主が分け合った。2020年3月期についてもヤフーの子会社化によるシナジー効果が期待されるほか、本業の携帯通信事業も「競合他社の携帯新料金が与える影響は少なく、携帯通信サービス収入増が見込まれる唯一の会社」(野村証券)と評価されている。

   ただ、株価については国内外の証券会社の見方が分かれており、5月下旬以降をみても目標株価を引き上げる会社、引き下げる会社とまちまち。また、上場後一度も公開価格を超えられないなか、公開価格に近づけば損切りの売り圧力が出ているようだ。米中貿易摩擦などで株式市場全体として冴えない動きの中で、ソフトバンク株が公開価格を超えられるかどうかについても投資家心理は強気と弱気入り乱れ、まだら模様になっている。