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ビックカメラが「ペイペイ」から受けた影響

   ビックカメラの株価が2019年10月8日に一時前日終値比6.1%(68円)高まで上昇する一幕があった。前日取引終了後に発表となった、19年8月期連結決算の業績予想の下方修正が材料となった。下方修正なら通常、株価は下がるところだが、「悪材料出尽くし」との見方から買い進む投資家が多かったとみられる。ただ、消費税率引き上げに伴う需要の先食い、反動減など見極めが必要な要素もあるためか、その週はその後、今一つ上昇軌道に乗り切れなかった。3連休明けの15日には上昇した。

   正式な決算は10月10日に発表されているが、それより3日早い10月7日の下方修正の内容は次のようなものだった。連結純利益は従来予想より38億円少ない140億円になる見込みで、前期実績比で18.2%減。4.0%増の従来予想から一転してふた桁減益となる。営業利益、経常利益も増益予想から減益予想に転じ、売上高予想は従来より10億円減の8940億円(前期比では5.9%増)とした。

  • 「ビックカメラ.COM」サイトより
    「ビックカメラ.COM」サイトより
  • 「ビックカメラ.COM」サイトより

訪日外国人への販売も減速

   減益の要因としてビックカメラは新規出店の前倒しや電子商取引(EC)の拡大に伴う物流費用の増加によって販管費が想定を上回ったこと、さらに連結子会社である日本BS放送の業績伸び悩みを挙げた。2018年末のスマホQRコード決済「ペイペイ」の「100億円あげちゃうキャンペーン」によって店にとっては低採算商品の代表であるパソコンがバカ売れし売上高に占めるパソコンの構成比が上昇したことで全体の粗利率が悪化したことも影響した。訪日外国人への販売も減速した。

   ただ、日本経済新聞がずばり「15%営業減益」と10月5日朝刊で特報し、「ペイペイ」キャンペーンによる一時的な要因だと指摘していた。10月7日の下方修正発表はこれを追認するような内容でもあり、いわば2段階で「一転減益」への地ならしを済ませた形になった。投資家からすると10月7日の下方修正発表は既視感があったとも言える。一時的な減益要因が次の期になくなって増益が期待できるのならば、買い進もうという判断があっても不思議ではない。これが10月8日の株価急伸を招いたと見られている。

ECによる成長も期待

   また、10月10日に2019年8月期連結決算(ほぼ下方修正した通りに着地した)と同時に発表された2020年8月期業績予想は次のような内容だった。売上高は前期比5.3%増の9410億円、営業利益は9.8%増の252億円、経常利益は4.0%増の269億円、純利益は9.6%増の154億円と増収増益だ。消費税率引き上げにより、9月の駆け込み需要と10月以降の反動減の両方を抱える中、2020年夏の東京五輪の観戦に向け、画面が高精細な4Kなど高価格のテレビが伸び、これに併せてレコーダーの需要も高まる。利益率の高いプライベートブランドの洗濯機などが伸び、「ペイペイ」キャンペーンの一時的な要因で高まった低採算のパソコンの構成比率が元に戻るのも増益要因となる。

   ECによる成長も期待される。2019年8月期に単体売上高のEC比率が11.9%となり、訪日外国人比率(10.2%)を上回ったところだが、2020年8月期はECがさらに高成長をとげる可能性がある。

   ただ、駆け込み需要の反動減は前回消費増税時より小さいと見る向きが多いが、実際に確認しないと分からない面は大きい。訪日外国人の需要低迷が長引く可能性もあり、もう少し見極めたいという投資家も多いとみられる。